高知県本山町白髪山のヒノキが優占する天然林において,樹種構成と立地の関係を調べ,温帯性針葉樹が定着するマイクロサイトを明らかにした。緩傾斜地に設置した9つの調査コドラートで,樹高1.5 m以上の全ての樹木の胸高直径および樹高1.5 m未満のすべての針葉樹の樹高を測定し,針葉樹が定着している基質(根株,倒木,岩,マウンド,地表)を記録した。調査地をDCAにより序列化したところ,ヒノキとツガが優占する群とケヤキ,トチノキ,カツラなどの落葉広葉樹が混生する群に大きく分かれ,前者は岩塊地に,後者は土壌が厚い場所に出現する傾向が見られた。ヒノキ稚樹(樹高 < 1.5 m)は倒木や古い根株に偏って分布していたが,それより大きい個体は根株にのみ集中して生えていた。ヒノキの成木は30%が地面より高い位置で定着しており,そのうち半分がタコ足状になっていた。ツガの稚樹は岩や根株の上に定着し,成木はヒノキと同様に古い根株に生えていた。ゴヨウマツは本数が少ないが,成木も稚樹も古い根株に偏って定着していた。モミは地表に偏って稚樹が生えていたが,中間サイズの木がなく更新が制限されていた。岩塊が露出した場所やスズタケが密生している場所では,古い根株や倒木の上がヒノキ,ツガ,ゴヨウマツの定着マイクロサイトとして機能していると考えられる。
シカなどの大型動物は,生態系の地上部および地下部に様々な影響を与え得る。シカの生態系影響に関する研究は,主にシカの行動圏が制限されていない開放的な生態系において行われているが,閉鎖的な生態系において行われた例は非常に少ない。本研究では,閉鎖的な生態系でエゾシカが高密度化した洞爺湖中島において,シカが土壌および植物に与える影響を解明することを目的として研究を行った。島内に設置された6ヶ所の防鹿柵を使用し,土壌については物理性と化学性,植物については化学性を調べた。その結果,シカの侵入を排除した防鹿柵内に比べて柵外では,顕著に土壌硬度が高く,土壌表層のリター堆積量が少なかった。また,土壌の窒素諸特性については,植生タイプによって傾向が大きく異なり,特にシカの利用性の高い草原では柵内に比べ柵外で硝酸態窒素濃度が顕著に高かった。植物についても,草原の柵外に生育するフッキソウにおいて窒素濃度が顕著に高かった。これらのことから,閉鎖的な洞爺湖中島においてシカの高密度化によって、土壌の物理性や土壌および植物の化学性に様々な変化が生じており,そうした変化はシカの利用性や植生のタイプにより異なることが示唆された。中島では,シカの移動可能範囲が限られているため,高密度なシカの影響が島内全域的に顕在化し,それらの影響が長期間に渡って維持されている可能性があると考えられた。
曲率と傾斜による立体図法(CS立体図)を用いた地形判読
公開日: 2017/04/03 | 56 巻 2 号 p. 75-79
戸田 堅一郎
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高吸水性高分子樹脂を添加した土壌の物理・化学・生物特性
公開日: 2020/07/14 | 62 巻 1 号 p. 51-59
高橋 正通, 柴崎 一樹, 仲摩 栄一郎, 石塚 森吉, 太田 誠一
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明治期から平成までの造林技術の変遷とその時代背景 : 特に戦後の拡大造林技術の展開とその功罪
公開日: 2017/04/03 | 48 巻 1 号 p. 57-62
谷本 丈夫
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森林の一次生産の測定法
公開日: 2018/01/11 | 12 巻 1 号 p. 17-22
蜂屋 欣二
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有機性汚泥の施用と問題点
公開日: 2017/10/20 | 30 巻 2 号 p. 17-21
藤田 桂治
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