作業科学研究
Online ISSN : 2434-4176
Print ISSN : 1882-4234
16 巻, 1 号
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日本作業科学研究会第24回学術大会佐藤剛記念講演
  • 西方 浩一
    2022 年 16 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル フリー
    病気や障害を経験した人々にとって参加や適応がどのようなことかは,作業療法や作業科学において長い間,探求されてきました.参加は,2001年に世界保健機構(WHO)が国際生活機能分類を発表して以来,作業療法を含む保健医療福祉分野において健康や幸福の概念と結びつけ広く用いられるようになりました.作業療法の創設に関わった Meyer(1922)は,多くの病気は適応の問題であると指摘し,作業が生活の問題への適応に多大に貢献することを提示しました.私は16歳,高校 1 年生の時に体操の事故により頸髄損傷を受傷し障害をもちました.受傷後,約半年間の入院を経て,高校への復学も果たしましたが,受傷前とは大きくかけ離れた経験をしました.本稿では,私自身の経験をオートエスノグラフィーの手法を用いて振り返り,作業と参加,適応についての考察を提示しました.
日本作業科学研究会第24回学術大会基調講演
  • Karen E. ATLER
    2022 年 16 巻 1 号 p. 12-29
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル フリー
    日本作業科学研究会第24回学術大会の基調講演において,作業経験を知ることがいかに作業の複雑性 を知ることになるのかを探っていった.作業の複雑性を知ることは,well-being への入り口となりうる.本 論文では,作業を知ること,あるいは作業に関する主観的な視点を探求することが,どのように 1)作業と well-being の関係について作業科学者の理解を支援する,2)作業がどのように well-being に貢献したり影響を与えたりするか,他者が理解できるように作業科学者を支援することを可能にするか論じていく.はじめに私自身の研究,経験,その他の学術的研究から,作業経験と well-being,そしてそれらの交わりについて定義し,説明する.次に,作業経験の定量的評価である作業経験プロフィール(Occupational Experience Profile: OEP)を紹介する.そして,1)人々が直近で何をし,何を経験したかを評価し,2)作業経験と well-being の関係についてのユーザーの認識を促進するために,その価値を説明する.最後に,作業経験の定量的評価の拡大により,作業科学者が個人や集団の作業と well-being の関係を明らかにし続けることができるようになることを,いくつかの例を挙げて説明する.
日本作業科学研究会第24回学術大会特別講演
  • 医師の視点から精神科病院の作業療法を考える
    藤巻 康一郎
    2022 年 16 巻 1 号 p. 30-40
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル フリー
    重度の精神疾患は認知機能障害を伴う可能性が高く,特に統合失調症においては全般的な認知機能の 低下が多く認められる.認知機能低下は就労場面や日常生活での困難に繋がり,ストレスの原因となること から,間接的に病状の悪化を招くとされている.また,認知機能障害は機能的な転帰とも関連している.そ のため,統合失調症に対する認知機能のリカバリーは有用なものとされるが,症状の改善に留まらず,自己価値の再獲得にも一定の効果をもたらす可能性がある.近年は,NEAR や VCAT-J などの認知機能リハビリテーションが施行されているが,我々のグループはそれらを参考にした「まなびば」というプログラムを作成した.プログラムは,週 2 回のパソコンセッションと週 1 回の言語セッションから成っており,計12週を1クールとしている.パソコンセッションでは,認知機能の改善を目的としたゲーム(J-cores)が行われ,注意機能・作業記憶・処理速度・言語性記憶・流暢性・遂行機能の 6 領域に関連する課題が提示される.また,言語セッションでは,日常への般化を目的としてメタ認知に働きかけながら,主に注意・集中・記憶についてのディスカッションが行われる.なお,参加者にはプログラムの開始前と終了後に,BACS-J を始めとした認知機能評価に加え,AMPS など作業遂行の質・作業遂行能力評価が実施され,加えて自己効力感評価も行われた. この度,数値的な変化だけでなく,参加者の質的な変化にも注目し,プログラムの有用性について多面的に考察した内容を報告する.
総説
  • 山根 奈那子, 吉川 ひろみ
    2022 年 16 巻 1 号 p. 41-54
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル フリー
    作業バランスを評価する尺度に関する15文献をレビューした結果,16種類の尺度が開発されていた. 測定方法は自記式質問紙が多く,主観的に当事者が作業バランスを自己分析する方法が中心であった.作業バランスを評価する尺度に含まれる定義において,類似した記述内容を共通する要素として抽出し,【作業の量】,【作業のバリエーション】,【自身の価値観との一致】,【作業遂行の結果】の4つのカテゴリに分類した. この 4 側面から作業バランスを調整することで,作業と健康との関連を明らかにする研究を展開できることが示唆された.今後の課題として作業バランスの概念の明確化と可視化が挙げられた.
研究論文
  • Ippei KAWASAKI, Kuniaki NAGAI, Yoshihisa MASUMITSU, Kanae SAGAWA, Sato ...
    2022 年 16 巻 1 号 p. 55-65
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2023/02/01
    ジャーナル フリー
    Abstract: Background: Due to the COVID-19, many people are forced to restraint from their activities. People who are restricted in their activities can be said to be in a state of occupational deprivation, but it is thought that they might be taking action to keep themselves healthy even in such a blocked situation. The purpose of this study is to determine the differences in coping behaviors between elderly and young in dealing with occupational deprivation, and to show the potential for new health promotion, especially for elderly based on the results. Methods: To explore the state of occupational deprivation among the elderly and the young and their coping behaviors, a questionnaire survey of 89 elderly and 264 young generation was conducted. In the questionnaire, basic attributes of the respondents, self-rated health, things they had stopped doing or reduced the number of times they did, and things they had started doing or increased the number of times due to the COVID-19 were asked. We analyzed the feature of coping behavior under occupational deprivation by the elderly and the young. Results: The coping behaviors were categorized into the following four groups: "loss or decrease of existing occupations," "enhancement of existing occupations," "continuation and maintenance of existing occupations," and "introduction of new occupations". There were no significant differences in self-rated health among the four groups, but there was a trend toward lower self-rated health when comparing "loss or decrease of existing occupations" and the other groups. The elderly tended to engage in outward-looking occupations such as creating social connections online, while the young tended to engage in inward-looking occupations such as familiar household chores and hobby. Conclusion: People had different coping behaviors that tended to vary by generation against occupational deprivation. Using online is already familiar among the elderly, and it is necessary to recognize for those potential they have and develop health promotion activities using ICT technology and other means.
実践報告
  • ~作業的視点での考察~
    甲斐 公規, 高木 雅之
    2022 年 16 巻 1 号 p. 66-73
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2023/02/01
    ジャーナル フリー
    近年,男性が積極的に育児に参加することが求められている.男性が父親になっていくプロセスは,育児という作業を通して起こるトランザクショナルな変化であり,父親になっていくプロセスを理解するに は,個人の経験を注意深く見る必要がある.よって本論では,父親であることに付随してトランザクショナルに拡大していった作業経験を振り返った.その結果,主体的な Doing によって,男性が理想的な父親や活動家としての Being に調和的に変容していったことが分かった.また,育児という作業が起点となり,育児を取り巻く状況的要素と有機的に交わって調和し,作業が発展しながら継続的にトランザクションを生じさせるプロセスが明らかとなった.さらに,一個人の父親の奮闘から始まった行動は,身近な集団レベルに波及し,集合体レベルでのより作業的に公正な社会づくりへとつながっていったと解釈できた.
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