日本農薬学会誌
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46 巻, 2 号
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報文
技術資料
  • 稲生 圭哉, 永井 孝志, 横山 淳史, 岩崎 亘典, 堀尾 剛
    2021 年 46 巻 2 号 p. 51-62
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    近年,化学合成農薬と化学肥料の双方を,慣行栽培に比べて5割以上削減した特別栽培が推進されている.また,環境省では様々な農薬の流出防止技術(農薬処理時の水管理に係る留意事項,適切な畦畔管理など)を推奨している.本研究では,慣行栽培から特別栽培への農薬使用の変更や,慣行栽培における農薬流出防止対策の導入によるリスク低減効果を相互に比較するため,水稲栽培における農薬使用に伴う水域生態リスクを定量的に評価する手法を開発した.既報のPADDY-Largeモデルを用い,茨城県桜川の支流である逆川流域において,慣行および特別栽培で使用する各農薬の河川水中予測濃度(PEC)を計算した.また,既報の累積リスク計算ツール(NIAES-CERAP)に各農薬のPECの最大値を入力し,複数農薬により影響を受ける種の割合(msPAF)を計算した.殺虫剤のmsPAFは慣行栽培(3成分使用)での16%に対し,2成分を節減した特別栽培では0.5%と小さくなった.一方,除草剤のmsPAFは慣行栽培(4成分使用)の14%に対し,特別栽培(3成分使用)では20%とリスクが高くなる結果となった.特別栽培で使用する2成分は,慣行栽培で使用しない異なる有効成分に切り替わっており,有効成分の組み合わせにより,特別栽培のリスクが高くなる場合も想定された.殺虫剤,殺菌剤,および除草剤のmsPAFの平均値であるOverall PAFは,慣行栽培の10%に対し特別栽培では7%に減少し,農薬を節減したことによる生態リスクの低減効果を定量的に示すことができた.また,慣行栽培において,水管理に係る留意事項を徹底することにより,Overall PAFは8%に,加えて畦塗りの徹底により6%となり,特別栽培と同程度まで減少した.Overall PAF値で比較すると,本研究で用いた4段階の判定基準ではすべて「リスク中」に分類された.

  • 深谷 伸夫, 山﨑 一郎
    2021 年 46 巻 2 号 p. 63-66
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    1993年に日本農薬学会誌に発表した急性毒性,眼刺激性,皮膚刺激性,皮膚感作性,復帰変異原性の試験結果に加えて安全性評価のために各種毒性試験を実施した.皮膚感作性については,非感作性物質と考えられた.コイに対する急性毒性の96時間LC50は>100 mg/L,最大無影響濃度も100 mg/Lであった.ミジンコに対する急性毒性試験の48時間EC50は33 mg/Lで,最大無影響濃度は18 mg/Lであった.藻類生長阻害試験のEbC50(72時間)は15 mg/L, ErC50(0–72時間)値は34 mg/L,最大無影響濃度は6.47 mg/Lであった.

    ワルファリンはカリウム・ナトリウム等の塩にならない限り水に溶けにくい化合物であり,その飽和濃度は17 mg/L3)とされている.今回の試験は,ワルファリンが微アルカリ性とカルシウムの存在で溶けやすくなるという知見により,53.7または100 mg/Lで溶解した試験濃度液を最高濃度として評価した.試験結果によれば,ワルファリンはコイへの影響は少ないが藻類の生長には影響がある.ミジンコには水への飽和濃度であれば影響はないが,微アルカリ性とカルシウムの存在でより多量に溶解すると影響がでる恐れがあり,環境への流出に注意する必要がある.自然環境においてワルファリンがどこまで溶解するかについては不明であるが,化合物の溶解については様々な条件を考慮する事が重要になると思われる.

  • 深谷 伸夫, 山﨑 一郎
    2021 年 46 巻 2 号 p. 67-70
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    1992年に日本農薬学会誌に発表した急性毒性,亜急性毒性,眼刺激性,皮膚刺激性,皮膚感作性,変異原性の試験結果に加えて安全性評価のために各種毒性試験を実施した.皮膚感作性については感作性物質と考えられた.コイに対する急性毒性の96時間LC50は>1.8 mg/Lで,最大無影響濃度も1.8 mg/Lであった.ミジンコに対する急性毒性のEC50は24, 48時間ともに>1.8 mg/Lであり,最大無影響濃度は1.8 mg/Lであった.藻類生長阻害試験のEbC50(72時間)は1.8 mg/L, ErC50(0–72時間)値は>1.5 mg/Lであり,最大無影響濃度は0.76 mg/Lであった.

    ニホンウズラにおける単回経口投与試験では死亡したニホンウズラは無く,LD50は>2000 mg/kg,毒性影響も一過性で軽度なものであった.

    ダイファシノンは水には非常に溶けにくく,補助溶剤を使用しての飽和濃度1.8 mg/Lが達成可能な最も高い試験濃度であった.その濃度でおこなった試験ではダイファシノンに藻類の生長を抑制する効果があることを示したが,ダイファシノンの水への溶解度は0.3 mg/kg2)であり,この濃度ではコイやミジンコ,そして藻類への影響は出ていない.ニホンウズラへの毒性も低く鳥類への影響は少ないと推測できる.以上によりダイファシノンは生態影響の少ない化合物であると考えられる.

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