心理学研究
「心理学研究」は1926年に創刊され,隔月刊行(年6冊,4,6,8,10,12,2月)1年1巻とし,総頁約600頁で,原著論文,研究資料,研究報告,展望論文,会報欄があります。
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収録数 4,857本
(更新日 2020/05/26)
Online ISSN : 1884-1082
Print ISSN : 0021-5236
ISSN-L : 0021-5236
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優秀論文賞受賞論文
89 巻 (2018) 2 号 p. 160-170
親密な関係破綻後のストーカー的行為のリスク要因に関する尺度作成とその予測力 もっと読む
編集者のコメント

2019年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文
関係破綻後のストーカー的行為生起の心理的背景について,構造方程式モデリングを用いて明らかにした論文である。研究1ではインターネット調査会社のモニターを対象にした調査が行なわれ,別れた相手との交際時の関係性,関係破綻後の思考・感情を測定する尺度が作成された。研究2では,層化2段階無作為抽出法による全国調査が実施され,パーソナリティ特性(愛着不安と自己愛傾向)が過去の交際時の関係性に影響し,それらが関係破綻後の思考や感情に対して影響を及ぼすことでストーカー的行為が増大するという仮説モデルが検証された。その結果,男女共通して愛着不安および交際時の関係性の唯一性認知が,独善的執着を高め,ストーカー的行為の増大につながることが確認された。さらに,ジェンダーによる問題行動生起のメカニズムの差も明らかとなり,考察においては,従前の恋愛研究の知見との統合および発展が試みられた。ストーカー行為生起に対する心理学的研究は我が国ではまだ十分には行われておらず,本研究はこの嚆矢として位置付けられる。審査過程では,現実の社会問題解決につながる心理学的知見が明確に提出されている点,研究2において無作為抽出法に基づく全国調査が行われておりデータの信頼性が高い点,論理構成および文章が明快で説得力がある点が評価され,優秀論文にふさわしいと判断された。

89 巻 (2018) 6 号 p. 571-579
漢字の形態情報が共感覚色の数に与える影響 もっと読む
編集者のコメント

2019年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文
本論文は,文字を見ることで色を感じる色字共感覚と呼ばれる現象について,日本語における漢字の形態的特性の影響を,特に「偏」と「旁」の構造に注目して検討したものである。これまで,アルファベットなどの文字種に対する色字共感覚の生起には文字の形態,音韻,意味などの様々な情報が関与するが,漢字やカタカナ,ひらがなについては形態の影響が少ないとされてきた。一方,英単語では,複数語の連結によって構成される単語に対して複数の共感覚色が生じることが報告されており,偏や旁のような複数の構成要素を持つ漢字においても,複数の共感覚色が励起される可能性が考えられた。こうした背景から著者らは,偏や旁に分割可能な漢字(左右分割漢字)と,偏や旁に分割不可能な漢字(左右非分割漢字)に対して生じる共感覚色の数を比較する実験を行った。共感覚色が文字やその近傍のような外界に存在するように感じる共感覚者(投射型)と,外界ではなく頭の中に色の印象が喚起される共感覚者(連想型)らに,1つの漢字について最大2つの色を回答するよう求めたところ,左右分割漢字に対する共感覚色の回答数が左右非分割漢字よりも大きくなること,また,そうした傾向は投射型の共感覚者でより強いことが示された。漢字に固有の形態的特性に注目し,色字共感覚の生起過程との関係を明らかにした点で世界的にみてもユニークな研究であり,先行研究の丁寧なレビューに裏打ちされた精緻な議論が展開されている点も高く評価できる。以上を踏まえて,本論文は優秀論文賞に相応しいと判断された。

88 巻 (2017) 5 号 p. 460-469
性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化と再犯との関連の検討 もっと読む
編集者のコメント

2018年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文

授賞理由
性犯罪者が犯行を否認したり,責任を最小化したりすることは多くの臨床家や研究者によって認識されており,性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化が将来の再犯可能性を高めると捉えられている傾向にある。しかし,性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化が将来の再犯と関連するか否かについては,実証的研究が少なく,一貫した結果が得られていない。先行研究の問題点として,サンプルサイズの小さいこと,性犯罪の種類が少ないこと,既知の再犯リスク(性犯罪の持続性,対象者との関係性)などが考慮されていないが挙げられる。これらの問題点を考慮して,本研究では,性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化と再犯との関連を検討した。有罪判決を受けた者を対象とした縦断研究が行われ,既知の再犯リスクを考慮しても,犯行の否認・責任の最小化と再犯の関連はないことが示された。考察では,論文では有意な関連性が認められなかった背景が丁寧に記載されるとともに,否認者への対処への示唆も記載されている。例えば,先行研究で明らかになっている再犯のリスク要因に対して優先的に介入しながら,機を見て否認をめぐる話題を取り上げることなどである。本論文は性犯罪者に対する心理学的介入の方向性を考える上で有益な情報を提供する貴重な論文であり,その意義が高く評価された。また,文献レビューや文章展開が分かりやすい点も評価された。以上のことから,本論文は優秀論文賞に値する論文であると判断された。

88 巻 (2017) 3 号 p. 230-240
脅威アピールでの被害の記述と受け手の脆弱性が犯罪予防行動に与える影響 もっと読む
編集者のコメント

2018年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文

授賞理由
本論文は自転車駐輪時のツーロック行動(防犯性を高めるため,カギを2つ掛けること)を題材とし,「犯罪被害の脆弱性」が異なる自転車利用者に,「脅威アピール情報の種類」と「予防行動の効果性情報」を操作した介入実験を実施することにより,それら要因が介入後のツーロック行動に与える影響を検討したものである。分析の結果,介入時に測定した行動意図(今後ツーロックをするという意図)の高低は,翌日のツーロック行動に影響するが,それ以降のツーロック行動の減衰には関係しないこと,統計情報の提示は事例情報に比べて予防行動の持続性に効果的であることなどが明らかにされた。また,操作された3要因の交互作用から,今後の防犯に向けての効果的な介入方法について,有益な結果が得られている。本研究の特筆すべき点は,フィールドにおいて実際の行動を従属変数とした実証的研究を行っていること,および28日間に及ぶ長期的な影響を検討していることである。災害や犯罪などのリスク問題に心理学からアプローチする研究では,往々にして主観的な評定のみをアウトプットとし,しかも,短期的な影響過程で議論を閉じてしまっているものが多い。それを乗り越えるには,様々なコストと工夫を要するが,本研究はそれにチェレンジしている。得られたデータは貴重であり,分析も丁寧にされている。こうした点から,本論文は優秀論文賞に値すると判断された。

88 巻 (2017) 1 号 p. 32-42
日本人の回答バイアス――レスポンス・スタイルの種別間・文化間比較―― もっと読む
編集者のコメント

2018年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文

授賞理由
リカート尺度を用いた質問では,質問の内容に関係なく,特定の選択肢を選択するレスポンス・セット(以下RS)と呼ばれるバイアスの存在が指摘されている。代表的なRSに,極端な選択肢を選ぶ極端反応傾向,中間評価を好んで選ぶ中間反応傾向,内容を十分に吟味することなく項目に同意する黙従反応傾向がある。これまでの研究から,日本人の極端な回答を避け中間的な回答を好む反応傾向が明らかにされている。一方,黙従反応傾向については,まだ研究の数が少なく,結果が定まっていなかった。本論文では,構造方程式モデリングを用いて日米韓の3国を比較・分析することによって,日本人のRSの特徴を検討することが試みられた。分析の結果,日本人の中間回答を好むRSの特徴が再確認された。黙従反応傾向は3国共に高いことも示された。これは,3種のRSの中で黙従反応傾向が最も顕著な回答バイアスであることを意味している。また,多様な文化的価値観に理解を示すバイカルチャー者は黙従反応傾向が強いことから,文化的価値の多様性が黙従反応傾向の規定因の1つであると論じられた。高度な分析手法を用い,日本人のRSの特徴を明らかにした本論文の学術的価値は高い。細部にまで言及した丁寧な考察も評価された。リカート尺度を用いた心理学的研究は極めて多い。今後,心理学研究者はRSに対する理解を深め,バイアス低減に努めることが求められるであろうし,本論文は,その手助けとなる代表的な研究の1つとなることが予想される。以上の点から,本論文は優秀論文賞に値すると判断された。

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