心理学研究
「心理学研究」は1926年に創刊され,隔月刊行(年6冊,4,6,8,10,12,2月)1年1巻とし,総頁約600頁で,原著論文,研究資料,研究報告,展望論文,会報欄があります。
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収録数 5,120本
(更新日 2023/01/29)
Online ISSN : 1884-1082
Print ISSN : 0021-5236
ISSN-L : 0021-5236
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優秀論文賞受賞論文
92 巻 (2021) 1 号 p. 12-20
態度が相反する他者への過度なバイアス認知を錯視経験が緩和する効果 もっと読む
編集者のコメント

2022年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文
近年は,SNS等を通じて,多くの他者の意見を目にすることができる。意見の異なる他者への攻撃が目に触れることもある。本論文は,自身と態度の異なる他者に対して,「バイアスがかかった見方をする人だ」と考えやすいというバイアス認知を扱っており,社会的にも広く関心を集める研究であるといえよう。このようなバイアス認知の緩和策としては,当該の現象や態度についての理解を深めるなどの方法が思い浮かぶが,著者は,錯視を見せるという独創的な方法を用いている。自分の認知が客観的事実を反映していると信じる傾向が,バイアス認知の原因の1つとされているためである。実験では,参加者が関心を持つ社会問題について,自身と同一態度あるいは相反態度の他者を想起させ,その他者についてのバイアス認知を測定した。その前に,静止画が動いて見える錯視を紙上で見せる条件,錯視をモニター上で見せる条件,錯視ではない画像を紙上で見せる統制条件を設定した。実験の結果,錯視を紙上で見せた場合にのみ,自身と態度の相反する他者についてのバイアス認知が低かった。モニター上で見せる条件ではこの効果が得られなかったことも興味深い。モニター上で画像が動いて見えても,自分の知覚が不確かであるとは感じにくいためである。これらの結果を併せると,自身の知覚の不確かさに直面する体験がバイアス認知を緩和させたと解釈できる。このように,本論文は,他者に対するバイアス認知という現象を扱いつつ,一見,それとは関連を想像しにくい錯視を緩和策として用いるというユニークな着想,そして,それを実証する精緻な実験計画が高く評価され,優秀論文賞にふさわしいと判断された。

91 巻 (2020) 1 号 p. 23-33
指先が変える単語の意味 もっと読む
編集者のコメント

2021年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文
本論文は,スマートフォンの日常的な長期使用が,フリック入力の反復を通して,文字,無意味単語,実在する有意味単語の感情価を変化させることを報告している。著者は,フリック入力における下向きと上向きの親指の動きが,それぞれ手前へと奥への運動であることに注目し,下フリックは接近,上フリックは回避の運動として捉えることができると考えた。接近運動はポジティブな感情と,回避運動はネガティブな感情と結びつくと論じた先行研究に基づき,入力時に下フリックを多く含む単語はポジティブな感情価を,上フリックを多く含む単語はネガティブな感情価を相対的に帯びることになると仮定し,このフリック効果の存在を5つの研究によって検証した。まず,フリック入力が実際に1.5cm以上の指の空間移動を伴うことを確認し(研究1),続いて,ひらがな清音46文字(研究2),782の無意味単語(研究3,研究4),978の単語(研究5)の感情価の評定を計1,500名以上の参加者に求めた。その結果,一貫して,フリック効果が確認され,また,この効果がスマートフォン未使用者には見られないことから(研究4,5),フリック入力と感情価変動の関係が強く示唆された。俄には信じ難い興味深い結果が,膨大な刺激数と十分なサンプルサイズの研究によって繰り返し再現される様は,科学的探求の醍醐味を教え,「良くも悪くも人間の心理は道具依存的でもある」という最終段落の一文を導く論考の精緻さは,爽やかな知的興奮を読後に残す。たとえ小さな影響でも,日常的に何百回と繰り返されることで蓄積され,検出可能となること,このような過程を経て,新しいテクノロジーが人間の心に影響を与え得ることを示した本論文は,新規性,独創性,研究手法の厳密さ,丁寧な考察が高く評価され,優秀論文賞にふさわしいと判断された。

90 巻 (2019) 3 号 p. 252-262
なぜ非行集団に同一化するのか もっと読む
編集者のコメント

2020年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文
少年犯罪において,非行集団への同一化は非行リスクを高める一因となる。そのため,非行集団への同一化を規定する要因を検討することは,非行の抑止にとって重要である。本論文は,非行集団への同一化を規定する要因として,非行少年の差別経験と集団境界透過性(個人が社会的カテゴリー間を移行可能であると期待する程度)に注目した。少年鑑別所に入所していた男子少年を対象とした調査が行われた。その結果,同級生,教師や警察,地域住民から差別を受けたことがあると感じている少年は,差別を受けたことがないと感じている少年よりも非行集団への認知的同一化が高くなっていた。また,教師や警察から差別を受けたことがある場合,集団境界透過性が低い(非行集団から別な集団への移行可能性がない)少年は,集団境界透過性が高い少年よりも,集団への同一化が高くなっていた。本研究の特筆すべき点として,少年鑑別所に入所していた男子少年を調査対象者としているというデータの貴重さが挙げられる。また,非行少年の属性や内的要因ではなく,差別や集団境界透過性といった非行少年を取り巻く環境に注目している点も特筆すべき点である。そのため,考察で述べられた非行への再統合的な非難の表明や少年の居場所づくりといった非行抑止の対策が説得力を持ち,大きな実践的示唆を提供するものとなっている。本論文はこれらの点が評価され,優秀論文にふさわしいと判断された。

89 巻 (2018) 2 号 p. 160-170
親密な関係破綻後のストーカー的行為のリスク要因に関する尺度作成とその予測力 もっと読む
編集者のコメント

2019年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文
関係破綻後のストーカー的行為生起の心理的背景について,構造方程式モデリングを用いて明らかにした論文である。研究1ではインターネット調査会社のモニターを対象にした調査が行なわれ,別れた相手との交際時の関係性,関係破綻後の思考・感情を測定する尺度が作成された。研究2では,層化2段階無作為抽出法による全国調査が実施され,パーソナリティ特性(愛着不安と自己愛傾向)が過去の交際時の関係性に影響し,それらが関係破綻後の思考や感情に対して影響を及ぼすことでストーカー的行為が増大するという仮説モデルが検証された。その結果,男女共通して愛着不安および交際時の関係性の唯一性認知が,独善的執着を高め,ストーカー的行為の増大につながることが確認された。さらに,ジェンダーによる問題行動生起のメカニズムの差も明らかとなり,考察においては,従前の恋愛研究の知見との統合および発展が試みられた。ストーカー行為生起に対する心理学的研究は我が国ではまだ十分には行われておらず,本研究はこの嚆矢として位置付けられる。審査過程では,現実の社会問題解決につながる心理学的知見が明確に提出されている点,研究2において無作為抽出法に基づく全国調査が行われておりデータの信頼性が高い点,論理構成および文章が明快で説得力がある点が評価され,優秀論文にふさわしいと判断された。

89 巻 (2018) 6 号 p. 571-579
漢字の形態情報が共感覚色の数に与える影響 もっと読む
編集者のコメント

2019年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文
本論文は,文字を見ることで色を感じる色字共感覚と呼ばれる現象について,日本語における漢字の形態的特性の影響を,特に「偏」と「旁」の構造に注目して検討したものである。これまで,アルファベットなどの文字種に対する色字共感覚の生起には文字の形態,音韻,意味などの様々な情報が関与するが,漢字やカタカナ,ひらがなについては形態の影響が少ないとされてきた。一方,英単語では,複数語の連結によって構成される単語に対して複数の共感覚色が生じることが報告されており,偏や旁のような複数の構成要素を持つ漢字においても,複数の共感覚色が励起される可能性が考えられた。こうした背景から著者らは,偏や旁に分割可能な漢字(左右分割漢字)と,偏や旁に分割不可能な漢字(左右非分割漢字)に対して生じる共感覚色の数を比較する実験を行った。共感覚色が文字やその近傍のような外界に存在するように感じる共感覚者(投射型)と,外界ではなく頭の中に色の印象が喚起される共感覚者(連想型)らに,1つの漢字について最大2つの色を回答するよう求めたところ,左右分割漢字に対する共感覚色の回答数が左右非分割漢字よりも大きくなること,また,そうした傾向は投射型の共感覚者でより強いことが示された。漢字に固有の形態的特性に注目し,色字共感覚の生起過程との関係を明らかにした点で世界的にみてもユニークな研究であり,先行研究の丁寧なレビューに裏打ちされた精緻な議論が展開されている点も高く評価できる。以上を踏まえて,本論文は優秀論文賞に相応しいと判断された。

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