心理学研究
「心理学研究」は1926年に創刊され,隔月刊行(年6冊,4,6,8,10,12,2月)1年1巻とし,総頁約600頁で,原著論文,研究資料,研究報告,展望論文,会報欄があります。
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収録数 4,682本
(更新日 2018/10/23)
Online ISSN : 1884-1082
Print ISSN : 0021-5236
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優秀論文賞受賞論文
88 巻 (2017) 5 号 p. 460-469
性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化と再犯との関連の検討 もっと読む
編集者のコメント

2018年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文

授賞理由
性犯罪者が犯行を否認したり,責任を最小化したりすることは多くの臨床家や研究者によって認識されており,性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化が将来の再犯可能性を高めると捉えられている傾向にある。しかし,性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化が将来の再犯と関連するか否かについては,実証的研究が少なく,一貫した結果が得られていない。先行研究の問題点として,サンプルサイズの小さいこと,性犯罪の種類が少ないこと,既知の再犯リスク(性犯罪の持続性,対象者との関係性)などが考慮されていないが挙げられる。これらの問題点を考慮して,本研究では,性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化と再犯との関連を検討した。有罪判決を受けた者を対象とした縦断研究が行われ,既知の再犯リスクを考慮しても,犯行の否認・責任の最小化と再犯の関連はないことが示された。考察では,論文では有意な関連性が認められなかった背景が丁寧に記載されるとともに,否認者への対処への示唆も記載されている。例えば,先行研究で明らかになっている再犯のリスク要因に対して優先的に介入しながら,機を見て否認をめぐる話題を取り上げることなどである。本論文は性犯罪者に対する心理学的介入の方向性を考える上で有益な情報を提供する貴重な論文であり,その意義が高く評価された。また,文献レビューや文章展開が分かりやすい点も評価された。以上のことから,本論文は優秀論文賞に値する論文であると判断された。

88 巻 (2017) 3 号 p. 230-240
脅威アピールでの被害の記述と受け手の脆弱性が犯罪予防行動に与える影響 もっと読む
編集者のコメント

2018年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文

授賞理由
本論文は自転車駐輪時のツーロック行動(防犯性を高めるため,カギを2つ掛けること)を題材とし,「犯罪被害の脆弱性」が異なる自転車利用者に,「脅威アピール情報の種類」と「予防行動の効果性情報」を操作した介入実験を実施することにより,それら要因が介入後のツーロック行動に与える影響を検討したものである。分析の結果,介入時に測定した行動意図(今後ツーロックをするという意図)の高低は,翌日のツーロック行動に影響するが,それ以降のツーロック行動の減衰には関係しないこと,統計情報の提示は事例情報に比べて予防行動の持続性に効果的であることなどが明らかにされた。また,操作された3要因の交互作用から,今後の防犯に向けての効果的な介入方法について,有益な結果が得られている。本研究の特筆すべき点は,フィールドにおいて実際の行動を従属変数とした実証的研究を行っていること,および28日間に及ぶ長期的な影響を検討していることである。災害や犯罪などのリスク問題に心理学からアプローチする研究では,往々にして主観的な評定のみをアウトプットとし,しかも,短期的な影響過程で議論を閉じてしまっているものが多い。それを乗り越えるには,様々なコストと工夫を要するが,本研究はそれにチェレンジしている。得られたデータは貴重であり,分析も丁寧にされている。こうした点から,本論文は優秀論文賞に値すると判断された。

88 巻 (2017) 1 号 p. 32-42
日本人の回答バイアス――レスポンス・スタイルの種別間・文化間比較―― もっと読む
編集者のコメント

2018年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文

授賞理由
リカート尺度を用いた質問では,質問の内容に関係なく,特定の選択肢を選択するレスポンス・セット(以下RS)と呼ばれるバイアスの存在が指摘されている。代表的なRSに,極端な選択肢を選ぶ極端反応傾向,中間評価を好んで選ぶ中間反応傾向,内容を十分に吟味することなく項目に同意する黙従反応傾向がある。これまでの研究から,日本人の極端な回答を避け中間的な回答を好む反応傾向が明らかにされている。一方,黙従反応傾向については,まだ研究の数が少なく,結果が定まっていなかった。本論文では,構造方程式モデリングを用いて日米韓の3国を比較・分析することによって,日本人のRSの特徴を検討することが試みられた。分析の結果,日本人の中間回答を好むRSの特徴が再確認された。黙従反応傾向は3国共に高いことも示された。これは,3種のRSの中で黙従反応傾向が最も顕著な回答バイアスであることを意味している。また,多様な文化的価値観に理解を示すバイカルチャー者は黙従反応傾向が強いことから,文化的価値の多様性が黙従反応傾向の規定因の1つであると論じられた。高度な分析手法を用い,日本人のRSの特徴を明らかにした本論文の学術的価値は高い。細部にまで言及した丁寧な考察も評価された。リカート尺度を用いた心理学的研究は極めて多い。今後,心理学研究者はRSに対する理解を深め,バイアス低減に努めることが求められるであろうし,本論文は,その手助けとなる代表的な研究の1つとなることが予想される。以上の点から,本論文は優秀論文賞に値すると判断された。

87 巻 (2016) 1 号 p. 79-88
日本語版DDFSおよびMWQの作成 もっと読む
編集者のコメント

2017年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文

授賞理由
マインドワンダリング(mind wandering)とは,近年注目されている心のデフォルト状態を示し,心理学研究の重要なトピックになってきている。心のデフォルト状態とは,科学研究におけるベースラインの状態を意味するが,我々人間の実生活においては,起きている時間の約半分の時間にも該当するような何気なくあることを考えたり,感じたりしている状態である。本研究は,マインドワンダリングの測定を目的とした自己記入式尺度2点の日本語版作成と,その信頼性と妥当性の検証を目的として行われた。作成された尺度の妥当性については,well-being,精神疾患関連特性とも相関関係が示されている。また,研究2として,作成された尺度と認知課題(外的注意課題)との相関を検討し,関連が認められたことによって尺度の信頼性をより高いものにしている。本尺度については,今後,神経科学分野,認知科学分野等を中心として多くの分野で活用されることが予想される。特に,心と関連する医学分野で注目されているデフォルト・モード・ネットワーク(default mode network:DMN)は,マインドワンダリングとの親和性が極めて高い。それ故,本尺度は医学分野での活用も大いに見込まれるものである。研究の計画が堅強であること,尺度の信頼性と妥当性を検証する手続きについても十分配慮 が行き届いていること,読み手にも理解しやすい論調であったこと,研究の限界点についても丁寧に言及していたこと等が評価された。以上のような理由から,本論文は優秀論文賞にふさわしいと判断された。

87 巻 (2016) 4 号 p. 364-373
表情の快・不快情報が選好判断に及ぼす影響――絶対数と割合の効果―― もっと読む
編集者のコメント

2017年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文

授賞理由
我々が特定の対象について好きか嫌いかを決める際,その選好判断には少なからず他者の判断の影響,すなわち社会的な影響がある。自分の選好判断が信頼する友人一人の判断に左右される場合もあれば,不特定多数の他者の判断に左右される場合もある。本研究では,こうした社会的場面で起こりうる現象について,認知心理学の立場から実験的に取り組んだ。著者らは,無意味図形を好意度評定の対象として使用し,喜びと嫌悪の表情写真を無意味図形の周囲に配置して他者が示す喜びや嫌悪のシグナルの絶対数と割合を制御した3つの精緻な実験から,参加者の選好判断への影響を調べた。その結果,複数の他者が存在する場面では,他者が示すシグナルの数が無意味図形の選好判断に影響することと,表情によって数の影響に違いがあることを示した。さらに,集団内における喜び表情の割合の増加は無意味図形への好意度を上昇させるのに対し,嫌悪表情がひとつでも存在すると好意度の低下をもたらすことを明らかにした。本研究は,社会的相互作用の効果について表情刺激を利用した認知心理学実験で検証したものであり,広範囲な心理学のテーマに関連している点が高く評価された。また,日常的に体験する社会的場面に正面から取り組み,複数の実験で一貫した結果を得て,読みやすい文章でまとめた点も評価された。こうした点から,本論文は優秀論文賞に値すると判断された。

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