日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会会誌
Online ISSN : 2434-1932
Print ISSN : 2188-0077
7 巻, 3 号
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原著
特集:第6回学会エアロゾルシンポジウム「有効的な吸入療法」
  • 鈴木 元彦
    2019 年 7 巻 3 号 p. 107-110
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    耳鼻咽喉科外来診療においてネブライザー療法は副鼻腔炎や喉頭炎に対する局所治療として汎用されている.近年急性副鼻腔炎に対するネブライザー療法の指針が発刊されたが,喉頭ネブライザーに対する指針は存在しない.喉頭ネブライザーの適応や治療法は確立されていないが,正しい適応と治療方法が確立される必要がある.以上を踏まえ,私たちは喉頭ネブライザー療法の実態を把握する目的でアンケート調査を施行した.愛知県17施設,岐阜県9施設よりアンケートを回収することができたが,全26施設において喉頭ネブライザーが施行されていた.また,薬液については全ての26施設においてステロイド(ベタメタゾンリン酸エステルナトリウムもしくはデキサメタゾンリン酸エステルナトリウム)が用いられていた.抗菌薬は26施設の内14施設で使用されていた.本稿では本アンケート結果を中心に喉頭ネブライザー療法について概説する.

総説
特集:第6回学会エアロゾルシンポジウム「有効的な吸入療法」
  • 中村 利美, 犀川 太
    2019 年 7 巻 3 号 p. 111-115
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    気管支喘息におけるステロイド薬の吸入療法は,直接気道に作用して気道炎症を強力に抑制するため,極めて有効な治療法である.しかし,乳幼児の吸入療法では,小児の解剖学的特徴と生理学的特徴に加えて,手技的問題(啼泣・拒否など)が吸入効率低下の大きな要因となる.吸入効率を高めるためには,年齢や吸入能力に応じて薬剤の種類と吸入デバイスを選択し,十分な吸入指導を行うことが重要である.さらに,指導にあたっては,薬剤による副作用を軽減しつつ薬剤の至適な肺内到達量を得るために,吸入薬剤の選択,吸入機器(ネブライザー,定量吸入器)と補助具(スペーサー)の組み合わせを考える必要がある.

原著
  • 田中 義人, 小林 一女, 古田 厚子
    2019 年 7 巻 3 号 p. 116-120
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    今回我々は当院における上咽頭の細菌検査の結果の推移について検討した.対象は2012年1月1日から2016年12月31日に耳鼻咽喉科,小児科を受診した15歳未満の症例から採取された上咽頭の細菌検査結果である.菌の検索はシードスワブを用いて経鼻的に上咽頭より採取し,株式会社BMLで検査を行った.薬剤耐性については希釈法を用いて評価している.検出菌の総株数は各年1270株,1672株,1991株,2245株,2316株であった.検出菌の多くは常在菌で,病原菌として年ごとにその順位の変動はあるものの概ね肺炎球菌,インフルエンザ菌,黄色ブドウ球菌,モラクセラ・カタラーリス,及び溶連菌が上位を占めていた.さらに肺炎球菌のPISP株,PRSP株の割合,インフルエンザ菌のBLNAR, BLPAR, BLPACRの割合について検討した.PRSP, PISPについては減少傾向が認められた.BLNARはそれぞれの年で増加傾向を認めた.BLPACRに関して増加傾向は認めなかった.

症例
  • 樽本 俊介, 津田 潤子, 菅原 一真, 橋本 誠, 山下 裕司
    2019 年 7 巻 3 号 p. 121-125
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    梅毒は梅毒トレポネーマによる感染症であり,口腔・咽頭の梅毒病変は特徴的な所見から診断の契機となりやすい.口腔・咽頭・皮膚所見から第2期梅毒を疑うも,前医で施行した血液検査はRapid plasma regain(RPR)のみで陰性であったため,診断に至らず当科を受診した梅毒症例について報告する.症例は63歳男性で主訴は遷延する口内炎,胸背部・手足の皮疹であった.同症状が出現し近医皮膚科や耳鼻咽喉科の受診を経て前医総合病院皮膚科を受診した.前医血液検査では梅毒トレポネーマ抗体は未検査で,RPRは陰性であり,尋常性乾癬と診断され治療を行うも治癒せず当科紹介受診した.当科初診時に梅毒に特徴的な乳白斑や丘疹が認められ,血液検査した結果,梅毒抗体反応は陽性であった.第2期梅毒と診断し,アモキシシリンの内服を施行した結果,症状・血液検査共に改善し治癒した.梅毒の診断にはRPRと梅毒トレポネーマ抗体一方のみではなく,同時に施行することが重要である.

  • ―瘻管摘出術の適応について―
    翁長 龍太郎, 島田 茉莉, 加瀬 希奈, 伊藤 真人
    2019 年 7 巻 3 号 p. 126-129
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    下咽頭梨状陥凹瘻は小児期における頸部反復感染の鑑別疾患として重要で,時に深頸部膿瘍の原因にもなる.治療は消炎期における外切開法あるいは口内法での手術が一般的である.一方で小児深頸部膿瘍は,一定の基準を満たす場合,外科的切開排膿術を必要とする.今回我々は,消炎期のみならず炎症期においても,外切開法手術により良好な経過をたどった症例を経験した.深頸部膿瘍に対する炎症期の切開排膿時に瘻管摘出が可能であれば一期的な治療完結が見込める場合もある.ただし安全な手術施行のためには,瘻管の描出方法や術式の検討が必要であり,若干の文献的考察を加え報告する.

  • 光野 瑛美, 島田 茉莉, 伊藤 真人
    2019 年 7 巻 3 号 p. 130-133
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    小児深頸部膿瘍の発生報告は稀であり,外科的切開排膿術の明確な適応基準はないのが現状である.小児の臨床像は成人例と大きく異なり,一般的にリンパ節に限局したリンパ節内膿瘍であることも多く,重篤な合併症を来す症例は少ないことが知られており,抗菌薬による保存的加療が優先されるとの報告もある.今回,我々は外科的切開排膿術を必要とした小児深頸部膿瘍の2症例を提示し,外科的治療の適応について議論を行った.膿瘍がリンパ節外に進展した場合や,気道狭窄などの合併症が認められた場合,48時間の保存的加療で改善が認められない場合などには,外科的切開排膿術を行うべきであると考えられた. 手術を必要とするハイリスク症例を区別し,適応症例を見落としたり手術のタイミングを逃したりすることを避けることが重要である.

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