森林野生動物研究会誌
Online ISSN : 2424-1393
Print ISSN : 0916-8265
41 巻
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原著論文
  • 赤羽 俊亮, 日野 貴文, 吉田 剛司
    2016 年 41 巻 p. 1-9
    発行日: 2016/03/30
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル フリー

    エゾシカが高密度に生息する洞爺湖中島と生息密度の低い洞爺湖湖畔地域で,エゾシカの高密度化がマルハナバチ類に及ぼす影響について考察するため,マルハナバチ類の個体数,種数および種構成を両地域で比較した.中島と湖畔の各3ヶ所でマルハナバチ類の捕獲および林床の開花植物の調査を実施した.中島よりも湖畔で採集個体数は有意に多かったが,種数には違いが見られなかった.nMDSを用いて群集構成を比較したところ,両調査地域間に差異があった.両地域の優占種であるエゾオオマルハナバチの個体数は中島の方が少なく,さらに他種の個体数は中島では非常に少なかった.また中島では林床植物の開花フェノロジーに中断が見られた.これらの結果から,エゾシカの高密度化がもたらす植生改変が,開花フェノロジーの断絶を介してマルハナバチの個体数を減少させ,種構成を変化させる可能性が示唆された.

  • 藤巻 裕蔵
    2016 年 41 巻 p. 11-17
    発行日: 2016/03/30
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル フリー

    1976~2015年の4月下旬~7月上旬(高標高地では~7月下旬)に北海道中部・南東部の917区画(4.5km×5km)内の調査路1,029か所でジュウイチHierococcys hyperythrusとツツドリCuculus optatusの生息状況を調べた.これらが出現した区画数と調査路数は,ジュウイチで48区画(5%),66か所(6%),ツツドリで634区画(69%),667か所(65%)であった.生息環境別のジュウイチとツツドリの出現率は,ハイマツ林で0%と18%,常緑針葉樹林で7%と80%,針広混交林で15%と70%,落葉広葉樹林で8%と89%,カラマツ人工林で0%と73%,農耕地・林で4%と70%,農耕地で0.7%と47%,住宅地で0%と10%であった.ジュウイチの標高別出現率は,200m以下で3%,201~400mで9%,401~600mで10%,601~800mで8%,801m以上で9%で,ツツドリの標高別出現率はそれぞれ61,76,70,67,49%であった.

  • 今関 真由美, 吉田 真也, 安藤 元一
    2016 年 41 巻 p. 19-26
    発行日: 2016/03/30
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル フリー

    ムササビの生息状況の指標として糞の分布と量に着目し,東京都町田市の孤立林(面積136ha)を調べた結果,新たな生息域とコアエリアが判明した.カーネル密度推定法によって,そのうちの95haが生息域(95%カーネル)に含まれ,23haがコアエリア(50%カーネル)に含まれた.コアエリアは林地中央部にあり,1調査地点で最大517粒の糞があった.これに対し辺縁域における糞粒数は0~数粒程度であった.糞調査は,目視調査に比べ効率的に低密度地域の生息域を明らかにできた.また,糞粒数は相対的な密度指標となり生息域の濃淡を表すことができるなど,その有効性が示された.この孤立林における先行研究の生息密度を用い,ここに生息するムササビ個体数は15~63頭と推定された.

  • 笠貫 ゆりあ, 鉄谷 龍之, 石井 信夫, 安藤 元一
    2016 年 41 巻 p. 27-31
    発行日: 2016/03/30
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル フリー

    特定外来生物として指定されているアムールハリネズミErinaceus amurensisの駆除対策に役立てるため,カゴワナ捕獲に適した誘引餌を飼育下実験で検討した.実験場所として4.4×2.8mの囲いを設け,その四隅に餌を入れたカゴワナを置き,6頭のハリネズミについてワナを訪れる頻度を調べた.誘引餌として動物性の6種類(犬用缶詰,鶏唐揚,生鶏肉,生アジ,ゆで卵,およびチーズ)および非動物性の5種類(ピーナッツバターを塗った食パン,ニンニク,グミ,他ハリネズミ雌の匂いをつけた脱脂綿,および同じく雄の匂いをつけた脱脂綿)を用いた.その結果,肉質系の餌にはいずれも高い誘引効果が認められた.ワナへの取り付けやすさなどの実用性も勘案すると,生鶏肉がカゴワナ捕獲における誘引物として適していた.

短報
  • 藤重 健, 石田 寛明, 安田 暁, 宮本 秋津, 横畑 泰志
    2016 年 41 巻 p. 33-38
    発行日: 2016/03/30
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル フリー

    富山県富山市有峰地区(標高約900~1100m)の山林を流れる6つの渓流において,2011年9月~11月に小魚を入れたプラスチックコンテナを用いて,カワネズミ(Chimarrogale platycephala)の生息状況を調査した.本種の生息は南部の3渓流では確認されたのに対して,北部の3渓流では確認されなかった.北部3渓流には堰堤などの人工構造物が建設され,いずれの渓流も規模が小さく,流量も安定しないと推測されるのに対して,南部の3渓流は人工構造物がほとんどなく,比較的規模が大きく流量が安定していると推測された.また,南部の3渓流では河川の脇の一時的な水溜りに魚が入り込んでいる場所が散見された.こうした環境の相違がカワネズミの生息の有無に影響を与えている可能性がある.

  • 中井 真理子, 横畑 泰志, 橋屋 誠, 相良 直彦
    2016 年 41 巻 p. 39-41
    発行日: 2016/03/30
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル フリー
  • 田島 洋輔, 斉藤 久, 野中 俊文, 柳川 久
    2016 年 41 巻 p. 43-50
    発行日: 2016/03/30
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル フリー

    北海道夕張市シューパロ湖周辺に位置する廃トンネルと現在も使用されているトンネルにおいて,2014年8月,11月,2015年2月および同年4月にトンネル内の人工ねぐらおよびパイプ孔等を対象としたコウモリ類の探索を行い,2014年8月から2015年2月まで温湿度測定を行った.その結果,廃トンネル内に設置した人工ねぐらで2015年2月にテングコウモリMurina hilgendorfi 1個体の越冬を確認した.確認時の気温は5.2°C~5.7°Cであった.これは,北海道におけるテングコウモリの初めての越冬記録の報告であろう.

  • 矢竹 一穂
    2016 年 41 巻 p. 51-58
    発行日: 2016/03/30
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル フリー

    樹上性哺乳類にとって林冠は生息環境として重要であり,この分断を防ぐためには移動路を明らかにすることが必要である.そこで,1984年2月23日に新宿御苑に試験放獣されたニホンリスSciurus lis(以下,リス)13頭(雄6・雌7頭)について,同年2月29日~1986年9月1日に直接観察を行い,その移動路を利用した樹木ごとに記録した.112の移動路で372本の樹木が利用され,このうち96本(25.8%)が2回以上利用された.移動路は採食・就塒等の利用樹木を結ぶことで形成されるものと考えられる.112の移動路のうち78で利用したリスが個体識別でき,さらに56移動路(71.8%)が同一の樹木または連続した樹木の利用を含んで固定しており,異なる複数個体(同性・異性の両方)が同じ移動路を利用していた.千葉県内3つの公園緑地における地上移動の距離は47例のうち約4割が4~10m未満,最大は30mであった.

第48回大会公開シンポジウム記録
「改正鳥獣法と野生生物保全の現場」
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