日本緬羊研究会誌
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1996 巻, 33 号
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  • 細江 実佐, 薛 暁先, 于 海泉, 労 文燕, 包 旭日干, 塩谷 康生
    1996 年 1996 巻 33 号 p. 1-5
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    羊における体外受精技術の確立のために, 食肉処理場由来の卵巣からの卵子採取法と体外受精法について検討した。18Gと22Gの注射針を用いた吸引採取法あるいはメスで卵胞を切開して小匙でかき出す卵胞切開法による卵巣1個あたりの回収卵子数は, それぞれ3.7個, 5.1個および12.3個であった。そのうち卵丘細胞層の付着状態から判断して体外受精に供することのできる良質な卵子の割合は, それぞれ67.2% (182/271), 91.7% (233/254) および91.2% (571/626) であった。羊精子の受精能獲得誘起処理にヘパリンを用いて体外受精を行った結果, 体外成熟卵子が胚盤胞に発生した。発生用培養液としてTCM199と修正SOFaaを用いたところ, 卵割率はそれぞれ76.40%, 60.4%とTCM199が優れていたが, 胚盤胞への発生率は6.6% (7/106), 17.7% (17/96), 脱出した割合は1.9%, 10.4%であり, 修正SOFaaが有意に優れていた。
  • 関根 純二郎, H.E.M. カメル, 金 海, 大浦 良三
    1996 年 1996 巻 33 号 p. 6-10
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    反芻動物の基礎水分要求量の基礎的知見を得るため, めん羊の絶食時のエネルギー代謝試験の結果を元に水分出納を検討した。去勢めん羊12頭を8日間絶食させ, 最後の3日間の水分出納の結果を解析した。絶食時熱産生量, 飲水量, 代謝水量, 尿中排泄量, 呼気中蒸散量および水分負債量の平均は, それぞれ, 226±40kJ/kg0.75, 18.5±21.5g/kg0.75, 6.1±1.2g/kg0.75, 30.4±17.2g/kg0.75, 14.1±3.3g/kg0.75および-22.9±20.0g/kg0.75であった。熱産生量は, 飲水量, 代謝水量, 呼気中蒸散量と有意な正の相関関係が認められた (P<0.01) 。飲水量は, 尿中排泄量および呼気中蒸散量と有意な正の相関関係が認められた (P<0.05) 。飲水量および代謝水量は, 熱産生.量100kJあたりそれぞれ, 25.6および2.87g/kg0.75増加し, 呼気中蒸散量は, 6.46g/kg0.75増加すると算定された。めん羊の基礎水分要求量は, 43g/kg0.75であると推測された。しかし, 飲水欲求の抑制が腸管からの水分吸収と関連するため, 飲水量が要求量を満たし得ないことが示唆された。
  • 小田切 敬子
    1996 年 1996 巻 33 号 p. 11-16
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    性周期に伴う雌ヒツジの排尿回数と, その尿に対する雄ヒツジの匂い嗅ぎ行動および乗駕行動との関係について検討した。乗駕行動が発現した初日を0日とし, -9日から5日までの雌雄の行動を全てVTRで録画し, これらについて連続記録法で解析した。その結果, 雌ヒツジの排尿は一1日から増加し, 0日に他のどの日よりも有意に多く発現した (P<0.05) 。フレーメンは排尿と同様の発現パターンを示し, 雌の尿に対して一定の割合 (37%) で発現した。一方, 鼻つけの発現回数はフレーメンおよび排尿回数と有意な正の相関 (p<0.001) を示したが, 発現のピークは-1日であった。次に, 行動観察期間中に採取された雌の尿を, 雌ヒツジから隔離された雄に人為的に噴霧した時のフレーメン反応について調べた。その結果, 発情期と非発情期の雌の尿に対する雄のフレーメンの発現割合には差は認められなかった。
    以上より, 雌ヒツジの排尿行動は性周期を把握する指標となることが示唆された。また, フレーメンは雌の尿を常に一定の割合で探査しており, 発情期と非発情期の識別は鼻つけによって行われていることが示唆された。
  • 神藤 学, 平澤 美紀, 松井 寛二
    1996 年 1996 巻 33 号 p. 17-22
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    牛や馬用に開発された携帯型顎運動記録装置のセンサー部を緬羊用に改良し, 緬羊においても食草・反芻行動の長期間の自動記録を可能にした。また, 海抜770mの放牧地における, この装置を用いた緬羊の食草・反芻行動の調査から, 以下のような食草・反芻行動の季節変化が確認された。
    1) 春は, 日中の明るい間に食草行動のほとんどが行われた。
    2) 夏は, 食草時間が春や秋に比べ大きく減少した。また, 14時頃~21時頃にかけて食草行動が集中し, それ以外の時間には持続時間の短い食草期が散発した。
    3) 秋は, 夜間の食草行動が春に比べて増加し, 夜明け前後の食草期がみられなくなった。
    4) 反芻時間は季節間にほとんど差がみられず, R/G比は春で0.87, 夏で1.52, 秋で1.05であった。
  • 出岡 謙太郎, 斉藤 利朗
    1996 年 1996 巻 33 号 p. 23-27
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    サフォーク種母子羊一組ずつを分娩柵内に収容し, 単子8頭および双子14組28頭について, 子羊の出生直後における吸乳行動を観察した。
    単子, 双子の第一子および第二子のいずれにおいても, 生後初めて起立の試み, 起立および吸乳の試みを起こした時間の中央値は, それぞれ10分, 17-18分および17-19分であった。生後初めて吸乳に成功した時間の中央値は, 単子と双子の第二子では56-60分であったが, 双子の第一子では82分であった。双子の場合, 第一子と第二子の出生間隔は, 中央値では20分であったが, 最小値1分, 最大値60分であった。出生間隔が長い場合には, 母羊が第二子を分娩するときに, 第一子の吸乳の試みが中断されるので, 第一子のほうが吸乳に成功するまでに長時間を要することが観察された。
    本結果から, 双子では, 早く出生したほうが必ずしも早く吸乳できるとは限らないことが示唆された。
  • 出岡 謙太郎, 斉藤 利朗
    1996 年 1996 巻 33 号 p. 28-34
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    双子の片方の早期離乳が子羊の増体に及ぼす影響を明らかにする目的で, 群飼で生時から120日齢時まで飼養し, 子羊の飼料摂取量と体重を測定するとともに, 単子については120日齢まで哺乳させて同様の測定を行ない, 以下の結果を得た。
    1) 双子の片方を60日齢で離乳させると, 片方の120日齢まで哺乳させた子羊に比べ, 離乳後に増体の鈍化が見られるが, 120日齢時体重は両者に差はなく, 双子の両方を120日齢まで哺乳させた子羊と比べても差はなかった。いずれの子羊もほぼ全個体が4ヵ月齢で出荷体重である43kgに到達した。
    2) 片方を離乳させた後の母羊は, 配合飼料給与量を単子授乳羊と同量に減らしたので, 61日以降も双子を授乳した母羊に比べ配合飼料の量は74%に節減された。
    3) 単子に双子と同様のクリープフィーディングを行なって120日齢まで哺乳させると, ほぼ全個体が3ヵ月齢で出荷体重に到達した。
    4) 従来, 双子は出荷体重に到達するのに生後6~8ヵ月間を要していたが, 本試験で採用した飼養法を行なうことにより4ヵ月間で出荷体重に到達するので, 単子も含めた総体のラム出荷が早期化されることが示唆された。
  • 山田 亜紀, 高橋 三穂, 山村 匡男, 福井 豊
    1996 年 1996 巻 33 号 p. 35-42
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    本研究では, 非繁殖季節において, PMSG500IUと併用したFSH 20mgを1回投与する簡易過剰排卵誘起法が排卵数に与える影響を検討した。また, 簡易過剰排卵誘起したときの内分泌学的検討を試みた。さらに, 過剰排卵誘起した雌羊に, 新鮮希釈または凍結融解精液でAIをしたときの回収卵の受精率を検討した。
    1995年春 (非繁殖季節) に, 17頭の交雑種を用いてMAPスポンジを12日間挿入した。スポンジ除去48時間前にPMSG 500 IUとFSH 20mgを1回投与し, 6頭について血中E2およびLH濃度を測定した。17頭のうち8頭に新鮮希釈精液による子宮頸管内AI, 9頭に凍結融解精液による子宮内AIを行った。排卵数は15.9±2.1と高く, 良好な結果となったが, 両AI群とも回収卵の受精率が著しく低かった (子宮頸管内AIで23.5%, 腹腔内視鏡を用いた子宮内AIで17.0%) 。内分泌変動は, 繁殖季節のFSH 1回投与群に比べて半日から1日早くE2濃度がピークに達し6頭すべてに, GnRHを投与する前に内因性LHサージが観察された。
  • 戸苅 哲郎, 西邑 隆徳, 斉藤 利朗
    1996 年 1996 巻 33 号 p. 43-50
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    ラム肉の理化学特性を明らかにする目的で, 特に肥育されていないサフォーク育成雄羊群から, 離乳時の4ヵ月齢 (24頭), 放牧中期の6ヵ月齢, 放牧終了時の8ヵ月齢, 舎飼期の12ヵ月齢 (各4頭) の計24頭を屠殺し, ラム肉を分析した。
    4~6, 6~8, 8~12ヵ月齢時の生体重増加に対する枝肉の増加率はそれぞれ15, 44, 64%で, これに伴い, 枝肉および部位別の構成重量は, 6ヵ月齢の皮下脂肪重量を除き, いずれも月齢とともに増加した。
    赤肉の理化学性状では, 一般成分の脂肪含量が12ヵ月齢で高めの傾向にあり, 肉色は月齢とともに淡紅色から暗赤色に変化していく傾向が示された。テクスチャー特性ではガム性が12ヵ月齢でやや高かった。
    赤肉中脂肪, 皮下脂肪, 腎臓周囲脂肪では, 融点, 脂肪酸組成などで月齢間に若干の違いがみられたが, それ以上に部位間の脂肪酸組成の差が大きいことも示された。
  • 押田 敏雄, 堀口 恵子
    1996 年 1996 巻 33 号 p. 51-59
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    ラム肉の嗜好性が羊の月齢 (4, 6, 8および12ヶ月齢) によって, どのように異なるのかについて, 平均年齢19.1歳の女子学生40名のパネルを用い官能検査により検討した。
    用いた肉はロースとモモで, 「しゃぶしゃぶ」に調理して, シェッフェの一対比較法により, 「色あい」, 「におい」, 「軟かさ」, 「美味」および「総合評価」の5項目について検査を行なった。
    その結果, ロースについての好ましさの程度は月齢の違いによる影響を受けなかった。しかし, モモについては「色あい」と「におい」について月齢による違いがあることが分かった。つまり, 「色あい」については4ヶ月齢のような淡い肉色を好むグループと12ヶ月齢のような濃い肉色を好むグループが存在した。「におい」については, より若齢のものが好まれる傾向にあることが示された。
  • 関根 純二郎, 森山 知江子, 泊 徹, H.E.M. カメル, 金 海, 大浦 良三
    1996 年 1996 巻 33 号 p. 60-64
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    めん羊5頭にスーダングラス (SG), バーミューダグラス (BG), チモシー (TI), ペレニァルライグラス (PR), オーツ (OA), イタリアンライグラス (IR) およびアルファルファ (AL) の7種類の乾草を自由採食させて, 給与開始1, 7および21日目に血中コルチゾール濃度を測定し, 各乾草の乾物摂取量および採食・反芻行動との関連を解析した。結果は以下の通りであった。
    1) 乾物摂取量は, ALが1.42kg/dayともっとも多く, IRが0.72kg/dayともっとも少なかった。乾物摂取量は, 乾草の粗蛋白質含量と有意な正の相関関係が認められた。
    2) 血中コルチゾール濃度は, 給与乾草による有意な違いは認められなかった。BG以外の給与乾草において, 給与開始21日目の濃度が, 1日目および7日目より低い値となった。7日目のコルチゾール濃度と乾物摂取量との間に負の相関関係が認められた。
    3) 血中コルチゾール濃度の変化から, これが飼料の嗜好性と何らかの関連があると推察された。
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