日本緬羊研究会誌
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1993 巻, 30 号
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  • 宇佐川 智也
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 1-5
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    単子および双子授乳時のサフォーク種あん羊の産乳量について検討した。併せて子牛用代用乳を用いた人工哺育についても検討した。産乳量は吸乳前後の子羊の体重差から求めた。
    子羊は代用乳を用いた人工哺育でも母乳を与えた場合と遜色なく育つことが示された。分娩後12週間の総産乳量の推定値は, 単子授乳の場合93.7~104.5kg, 双子授乳の場合146.2~147.7kgであった。クリープフィーディングを実施した場合は子羊の増体が離乳時まで鈍らなかった。サフォーク種めん羊はかなりの羊乳生産をしていることが示されたが, NRC飼養標準に従った給与では授乳中の母羊体重の減少量が大きく, 母羊体重の変化に合わせた飼料の増給と子羊へのクリープフィーディングの重要性が示された。
  • 柳沢 哲夫, 遠西 秀雄, 寺島 福秋
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 6-10
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    VFAの種類の違いによる体内への窒素蓄積効果は異なるものと考えられるが, 一致した見解は得られていない。本実験では, 主要なVFAである酢酸およびプロピオン酸の窒素蓄積効果を比較検討した。アルファルファヘイキューブを主体とした高蛋白質飼料を摂取させたサフォーク種雄成めん羊3頭を用い, 生理食塩水, 酢酸, およびプロピオン酸を静脈内に投与した。酢酸およびプロピオン酸の投与量は1日当りエネルギー換算で600kcalとなるようにした。各溶液の注入期間を7日間とし, 後半の4日間に窒素出納試験を行った。
    血漿中グルコース濃度は全ての区間でほぼ同じ値を示した。血漿中アミノ態窒素濃度は, 酢酸およびプロピオン酸の注入区において生理食塩水区よりも低い値を示し, 7日間の平均値を比較すると, 生理食塩水区と酢酸, プロピオン酸区の間に有意差 (P<0.05) が認められた。
    各々の区における消化率はほぼ一定であった。摂取量に対する尿中の窒素排泄割合は, 酢酸およびプロピオン酸区において低い値となる傾向を示し, 生理食塩水区とプロピオン酸区の間 (P<0.01) に有意差が見られた。摂取量に対する窒素蓄積割合は酢酸区およびプロピオン酸区で高くなる傾向を示し, プロピオン酸区と生理食塩水区の間で有意差 (P<0.01) が見られた。以上のことから各VFAの静脈内注入は窒素蓄積を促進させ, その効果がプロピオン酸において酢酸よりも顕著であることが明らかとなった。
  • II. 個体の行動特性および相互関係
    苗川 博史, 安部 直重
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 11-16
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    サフォーク種の成雌18頭を対象に, 入牧後の個体の行動特性と群がり前後における個体相互の関係について検討した。
    18頭の行動の統計的持続時間は4.6/5分であり, 平均的に0.92分間は前個体の動作の影響を受けていることが示唆された。
    群がり開始前後における個体相互の情報伝達の時間差は, 6組 (12頭) のクラスターが群がり行動前に最大値を示した。そのうち4組 (8頭) のクラスターの最大値が群がり行動開始30分前にみられた。7組中4組のクラスターにおいて, それぞれの移動速度との間に正の有意な相関 (P<0.05) がみられた。6組のクラスターは相互の移動動作を10~20分以内に視覚で認識しながら他のクラスターと結合し, 3~4頭のサブグループを形成していくことが示唆された。群がり時に大別された2グループのうち, 1つは集中分布する傾向を示したのに対し, もう1つは離れて分布する傾向を示した。サブグループの形成は, 各個体がもつ類似した行動の集積であることに特徴があった。
  • 関根 純二郎, ハッサム エルディン, モハメド カメル, 森田 二郎, 大浦 良三
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 17-21
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    乾草の種類がめん羊の飲水量に及ぼす影響を明らかにする目的で, 4頭のめん羊にイタリアンライグラス乾草 (IR), バーミューダグラス乾草 (BE), スーダングラス乾草 (SU) およびアルファルファ乾草 (AL) をラテン方格法により給与した。日平均飲水量は, BEおよびAL給与でIRおよびSU給与より多くなったが, 乾物摂取量あたりの飲水量は, 乾草の種類による違いはなく, 3.2~3.9g/乾物gの範囲にあった。しかし, 個体間の乾物摂取量あたりの飲水量には有意な違いが認められた。個体間の飲水量の変動の要因についての解析から環境温度以外の要因も関与していることが示唆された。
  • 森田 二郎, 大浦 良三, 関根 純二郎, ハッサム エルディン, モハメド カメル
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 22-24
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    めん羊および山羊の飲水量の違い, ならびに年間を通じての飲水の供給日量を推定する目的であん羊3頭および山羊3頭の年間を通じての飲水量の調査を行った。給与飼料の種類は異なるが, 乾物摂取量は, めん羊でほぼ700g/日程度, 山羊で, 900g/日程度であった。飲水量の平均日量はめん羊が山羊よりやや少ないが, 両種とも冬季に少なく, 夏季に多くなる変化を示し, 気温の変化のパターンと同じであった。乾物摂取量あたりの飲水量は, 両種ともほぼ同じであった。乾物摂取量あたりの飲水量の5日間の移動平均値による解析から, 日平均気温が15℃以下の時期では2.5~3.0g/乾物g, 15℃以上25℃以下の時期では4.0~6.0g/乾物g, 25℃以上の時期では7.0~8.0g/乾物g程度の飲水量が必要となると推察した。
  • 角田 健司, 高橋 徳行, 黒沢 弥悦
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 25-29
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    羊乳中のβ-Lgの遺伝的多型を検索するたあ薄層ポリアクリルアミドゲル等電点電気泳動法および免疫ブロット法を用いて乳清および脱脂乳の蛋白分析を行った。いずれの乳試料を用いても3種類の変異型 (A, AB, B) が認められ, その構成成分は抗牛β-Lg抗体による免疫ブロット法でβ-Lgであることが判明した。小岩井農場のCorriedele系集団においてβ-Lg型の表現型頻度はA型51%, AB型42%およびB型7%であり, 遺伝子頻度はβ-LgA遺伝子が0.720, そしてβ-LgB遺伝子が0.280であった。
  • 津田 恒之, 寺田 文典, 半澤 恵, 渡邉 誠喜
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 30-36
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    食道フィステルおよびルーメンフィステルを装着しためん羊を用い, 反芻時における吐き戻し食塊の性状と粒度分布を経時的に追跡した。1) めん羊3頭 (平均体重30kg) を用い, 飼料はアルファルファヘイキューブ1日1回, 2時間与えた。2) 本実験条件下での総吐き戻し量は3391g/日・頭であった。3) 1回吐き戻し量は最小5g, 最大80gの間に分布したが, 20gを吐き戻す頻度が最も高かった。平均して1g/回・kg体重を吐き戻すとみなされた。4) 吐き戻し食塊の乾物量は平均7.4%であった。採食後の時間経過に伴って, わずかに減少した。5) ナイロンバッグ法による吐き戻し食塊のルーメン内乾物消失率は50.4%であって, 経時的変化は見られなかった。6) 得られたすべての食塊の平均粒度分布は大粒子 (>1190μm) 14%, 小粒子 (1190~45μm) 42%, 可溶性区分 (<45μm) 44%となった。大粒子区分は経時的に減少したが, 他の2区分には変化は見られなかった。7) 吐き戻し食塊の平均粒子径の平均は635μmであり, 経時的変動は見られなかった。
  • 小泉 聖一, 小林 信一, 長野 實
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 37-42
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    1992年4~6月, 東京, 神奈川, 茨城の食肉小売業者31店舗を対象に, 直接面接法により羊肉に関する販売動向についてアンケート調査を実施し, 検討した。
    1) 羊肉の平均売上高は20.0±5.6万円で食肉類販売額の1.7%に過ぎなかった。食肉類の月間販売額規模別では, 比較的大量販売店である1500万円以上の層では500万円未満の層に比べて羊肉の売上高が有意に多かった。
    2) ラムの1回当たりの仕入れ量は14.5±2.8kg, 仕入れ頻度1.7±0.3回/週, 仕入れ単価は平均1250.9±138.4円/kgで, マトンの1回当たりの仕入れ量は13.5±4.6kg, 仕入れ頻度は0.8±0.1回, 仕入れ単価は928.3±297.1円であった。また, 経営形態別では法人経営が少量・多回仕入れ, 個人経営が多量・少数回仕入れで対照的であった。
    3) 最近の羊肉の売れ行きについては, 増加する16.7%, 減少する33.3%, 変わらない50.0%であった。また, 法人経営に比べ, 個人経営では今後の売れ行きに関してかなり悲観的であった。
    4) ラムの売れ行きのよい販売アイテムは, ロールが51.6%で最も多く, 次いでリブチャップ, 焼肉, 味付け, シャブシャブの順となった。販売規模別では, A.500万円未満の層でロールが大半を占めているのに対して, B.500~1499万円の層およびC.1500万円以上の層ではリブチャップが最もよく売れていた。
    5) 消費者の1回当たりの平均購入量は, ラム409.3±40.8g, マトン681.3±172.9gであった。
    6) ラムの100g当たりの平均小売販売価格は, リブチャップ273.9±10.6円, 焼肉147.3±29.2円, ロール141.0±8.7円, シャブシャブ135.6±36.3円, 味付け118.8±12.5円であった。ロールの販売価格についてこれを販売規模別にみると, C.1500万円以上の層では他の階層 (A.500万円未満の層, B.500~1499万円の層) に比べて有為に安く販売されていた。
    7) 牛肉や豚肉と比較した場合の羊肉の評価にっいては, 「健康」, 「安全性」, 「価格」でやや優れているとする評価があったが, 「脂肪」や「におい」ではやや劣るとの評価であった。
    8) 今後の羊肉需要については, 増加傾向はみられないと予想する意見が多かった。
    9) 羊肉の売上増加策としては, 「調理・料理のアドバイスをする」が最も多く, 次いで「オリジナル惣菜の製造販売」, 「品質の向上」, 「特売日を設ける」などの順であった。
  • 大内 望, 八巻 邦次, 山岸 敏宏, 鈴木 正己, 多田 正明, 紺野 朋夫
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 43-47
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    めん羊3品種を用いて, 分娩形質における品種の特性を分析した。使用したデータは, サフォーク (SF), コリデール (CO), チェビオット (CH) の1991~1993年におけるそれぞれの母羊の産子数, 子羊の生時体重, 死亡率および死亡日齢である。母羊について膣脱の有無とその影響を調査した。また, 無採血群と採血群についても前記の項目でも比較した。
    SF, COおよびCHの産子数は, 1.6頭前後で, 有意な品種間差は認められなかった。生時体重は, SF, CO, CHの順に大きく, それぞれ3.58, 3.34, 3.13kgで, SFとCO, CHの間に有意差が認あられた (P<0.05) 。性の間にも有意差が認められ, 雄が雌よりも0.26kg重かった (P<0.05) 。産子数別では一子, 二子, 三子の相互間でそれぞれ有意差が認められ, 三子がもっとも軽かった (P<0.05) 。死亡率は, 品種および性別では差がなかったが, 年次により死亡率が大きく変動し, 飼養環境の相違が死亡率に影響することが示唆された。死亡日齢は品種間および性の間で差はなかったものの, 産子数では一子と三子の間に有意差が認あられ, 二子のものは中間値を示し, 産子数の増加とともに死亡率も増加することが確認された。
    膣脱はSFのみに認められた。子羊の死亡率および死亡日齢にっいて正常母羊と膣脱母羊の間に有意差は認められなかったが, 子羊の死亡日齢は正常母羊よりも膣脱母羊が早い傾向であった。膣脱の母羊は死亡率が43%と高い値を示した。
    無採血群と採血群の間には, 生時体重, 死亡率の相違は認められなかったが, 死亡日齢で無採血群よりも採血群が早い傾向にあった。
  • I. 妊娠末期における濃厚飼料の給与量
    出岡 謙太郎, 草刈 直仁, 斉藤 利朗, 寒河江 洋一郎, 尾上 貞雄
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 48-54
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    粗飼料としてアンモニア処理稲わらを給与したときの, 妊娠末期における濃厚飼料の給与量の違いが, 母羊の摂取量, 体重変化, 血液性状および授乳双子羊の増体に及ぼす影響を検討した。
    サフォーク種の双胎妊娠羊8頭とこれらが分娩した子羊16頭を下記の2区に配し, 妊娠末期6週間, 泌乳前期8週間および泌乳後期9週間の飼養試験を行った。試験処理は, 妊娠末期における母羊の濃厚飼料を乾物で体重の0.6%および0.9%とする2処理である (0.6%区および0.9%区) 。両区とも泌乳期における母羊の濃厚飼料は前期1.4%, 後期1.1%とした。子羊に対しては, 2週齢から人工乳を, また8週齢からアンモニア処理稲わらをクリープフィーディングした。
    母羊の養分摂取量は, 妊娠末期には0.9%区が高かったが, 泌乳の前期および後期では両区に差は認められなかった。母羊のアンモニア処理稲わらの摂取量 (体重比) は, 妊娠末期が0.75~0.85%, 泌乳前期が1.10~1.29%, 泌乳後期が1.46~1.63%であり, 各期とも両区に差は認められなかった。血中の3-HB濃度は妊娠末期において上昇し, 分娩後は乳期の進行に伴って低下した。
    母羊の体重は, 0.9%区のほうが妊娠末期には増加量が大きく, 泌乳前期には減少量が大きかった。また, 子羊の生時体重は0.9%区のほうが大きかったが, 日増体量に差は認められず, 17週齢時の体重は0.6%区が40.9kg, 0.9%区が43.6kgであった。
  • 清水 俊郎, 大内 望, 八巻 邦次, 佐々木 陽, 山岸 敏宏, 山本 実紀, 本出 ますみ
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 55-60
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    国産羊毛の形質について, 部位・品種・農場の飼養環境が与える影響とその要因を検討した。供試したフリースは, 全国9農場の原毛で, サフォーク (SF) 5頭, コリデール (CO) 2頭, ポールドーセット (PO) 1頭, サウスダウン×ブールーラドーセットのF1 (SB) 1頭の全9頭のフリースを使用した。フリースは首 (neck : NE), 肩 (shoulder : SH), 背 (back : BA), わき腹 (side : SI), 腰部 (britch : BR), 尾部 (tags : TA) の6部位に分け, 繊維長・クリンプ数・繊維直径・夾雑物・付着物・歩留・圧縮弾性率・吸水率を測定した。部位別の比較では形質は首や肩など前躯から後躯へ連続的に変化していることがわかった。
    農場別でみると農場の飼養環境の影響が現れ, ほとんどの形質で差が生じた。
    形質問の相関では, 圧縮弾性率は, 繊維長, 繊維直径とは負の相関を示し, クリンプ数とは正の相関を示した。また, 歩留とも負の相関を示したので, 圧縮弾性率の高い値を持つ羊毛は歩留が悪い結果となった。
    これらの結果より, 国産羊毛については, まず歩留をよくするための飼養管理が必要であると考えられる。また, 同一品種内でも農場別の形質問の相違に有意差が認められた。このことからも飼養管理の改善が必要であると考えられた。
  • 山下 恵理子, 田中 智夫, 谷田 創, 吉本 正
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 61-68
    発行日: 1993/12/10
    公開日: 2011/04/22
    ジャーナル フリー
    本実験は, 放牧羊群におけるリーダーとなる特定の個体の存否と, それに関わる社会関係とを明らかにすることを目的とした。供試羊はサフォーク種去勢子羊18頭 (5ヵ月齢) からなる一群を用い, 日中の行動を2週間にわたり観察した。行動は, 縦1列の自発的移動時における個体の順位を連続観察で記録し, また, 食草時における縦1列の移動順位およびサブグループの構成個体について15分間隔瞬間サンプリングで記録した。さらに, 社会的順位や体重との関連性を検討するたあに飼槽争奪試験と体重測定とを行なった。
    自発的移動時および食草時に縦1列になったときのいずれにおいても特定の個体が先頭に立つ傾向は見られず, 先頭率が50%を超えた個体はいなかった。これらの先頭率と社会的順位および体重との間に有意な相関は見られず, 優位個体がリーダーになる傾向も見られなかった。なお, サブグループを構成する個体は刻々と変化し, 個体関係において特別な好みを示すことはなく, 「他個体と一緒にいること」に重きがおかれていると考えられた。
    以上から, この羊群内には特定のリーダーとみられる個体は存在せず, 放牧下における羊群の社会構造はリーダー制によるものではないことが示唆された。
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