(1) 小麦黄色モザイク病 (縞萎縮病) ヴィールスによる封入体 (X体及び結晶性封入体) の各種染色反応並に細胞化学的検索を行つた.
(2) 本X体と寄主細胞核とはTrypan blue, Erythrosin-Trypan blue, Erythrosin-Methylen blue, Pyronin-Methyl green, Giemsa各染色で明らかに染め分けられる.
(3) 塩酸・トリクロル醋酸・過塩素酸で核酸除去の操作後, Trypan blue, Giemsa, Pyronin-Methyl green各染色を行つた結果, X体はリボ核酸 (RNA) を持つことが想像された.
(4) X体は塩基性色素で甚だしいメタクロマジーを起さず, 結晶では二・三色素でメタクロマジーが見られた.
(5) X体は蛋白反応陽性, 特にTyrosine・Arginineの存在が確認されたが, Tryptophane・Indol系物質は明らかでなかつた.
(6) X体はSudan IIIで染り, リポイドを有する. Feulgen反応は陰性.
(7) 被害細胞内並にX体中の空胞内に, 蛋白反応を呈しリポイド反応陰性の, X体と同じ染色反応を示す針状結晶が認められた.
(8) 以上の事実から結晶は所謂paracrystalに属し, X体より濃度の高いヴィールス性物質と考えられる. 又X体は内部にヴイールスを有する, 寄主細胞質特にミクロゾームのヴィールス侵入に対する一種の防禦反応生成物と推定された.
終りに臨み本研究に終始御懇篤な御指導を賜つた盛岡試験地主任八柳技官に深謝する
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