新下水道ビジョン加速戦略では概ね20年で下水道事業における消費電力量の半減を目標としている。小規模処理場も下水処理場における電力量全体の18%程度を占め、省エネルギー対策が必要であるが,小規模処理場を対象とした調査研究は少ない。そこで本検討では,小規模下水処理場について,統計データの整理,試算により消費電力量原単位の特徴を整理したうえで,小規模下水処理場にてヒアリング調査を行い,消費電力量原単位が高くなる原因を推定し,省エネ推進に必要となる方策について検討した。
我が国は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言した。これを踏まえ,国土技術政策総合研究所が設置するエネルギー分科会において,温室効果ガス削減対策の効果を考慮した2050年度の温室効果ガス排出量を試算し,カーボンニュートラルの実現に資する対策内容について整理した。しかし,この試算結果が人口減少や電源構成の変化による外的要因を内包しており,下水道が取り組むべき実質的な削減量や対策分野の優先順位が不明瞭という課題を残した。そこで,外的要因の影響を分離し,下水道が実質的に削減すべき量(約312万t-CO2/年)を算出した。また,カーボンニュートラルは現行の取組の延長線上から一層の技術開発等の取組の実施によって実現されるが,その実現のための革新的技術の開発・導入を進めるべき対策分野の優先順位は,創エネ,電力,水処理(N2O),汚泥焼却(N2O),燃料,他分野貢献(コンポスト化)の順で高いこと等を示した。