中小企業が日本経済に占める割合は大きいにもかかわらず、CSR活動およびそれに伴う広報に関する研究は大企業が中心である。そのような中小企業におけるCSRコミュニケーションの研究の蓄積は浅く、先行研究も限定的である。そこで現実に起きている現象から問題の所在や課題を探り、実態を把握するための調査が必要となる。中小企業の業種や規模は多種多様であるが、多くの場合、経営資源は限られ、所有と経営が分離されていない。これらから大企業とは異なるステークホルダーとの関係性や、マンパワーやリテラシー面での課題があると考えられる。本研究ではインタビュー調査を実施し、その結果に基づき現状と課題について考察する。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、顧客起点の価値創出に向けたビジネスモデルの変革であり広報も例外ではない。広報が企業のDXを加速するためには、自社本位の情報発信から脱却し、顧客起点の価値創出に向けてステークホルダーに寄り添う価値共創型広報への変革が求められる。従業員および多様なインフルエンサーを介してステークホルダーとの関係性を強化するとともに、デジタルの利点を活かして迅速な情報発信でターゲット層へ効果的にリーチし、受け手である顧客起点のストーリーと双方向コミュニケーションで理解と共感を醸成することで、社会や顧客からの評価と信頼を高める重要な役割を果たす。そのためには、DX人材育成や組織間連携など抜本的な変革へ取り組むこと、データ活用により体験価値向上を促進すること、様々な接点のデータを連携させる仕組みとしてのデジタルプラットフォーム導入が求められる。
コロナ禍の緊急対応として職域におけるテレワークは大きく拡大したが、準備不足もあり様々な課題を残すこととなった。中でもテレワーク実践過程におけるインターナル・コミュニケーションの問題は重要である。コロナ禍後にテレワークが定着、拡大するためには、各職場においてこの問題に対する現実的な対応策を検討しておく必要がある。テレワークは労働者の福利厚生策ではなく、戦略的なマネジメントの一環として取り組まれなければならない。本稿では現在までのテレワークに関わる取り組みの状況を振り返り、成果と課題を過去の調査研究からサーベイし、コミュニケーション問題への対応について考察する。
本稿においては、現代における広報コミュニケーションの構造を、情報社会学の知見に基づいて社会システム論的な観点から検討分析した。その際、社会が学習することを措定する「社会広報学」の考え方を批判的に導入し、新たな信頼創出の可能性を探った。現代社会はSNSとAIが深く広く浸透するメディア環境の激変に加え、地球環境問題とエネルギー問題に代表されるような世代を超える社会問題に直面している。そうした状況における広報コミュニケーションは新しいステークホルダーを前に構造的に変容を迫られていること、そして広報活動による説得行為をステークホルダーが納得することは極めて難しいことが明らかになった。さらに、社会的なエートスに対して働きかけ「倫理的態度」の変容を促すような広報コミュニケーションの重要性が浮き彫りになった。
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