本研究では、内閣府大臣官房政府広報室が担当する政府広報事業のうち、国際広報事業が2010年代に拡大する過程を明らかにする。係る費用が同年代に大きく増大し活動内容や手段が多角化・多様化したことを、行政事業レビューシートの分析から示す。政府広報における国際広報事業の量的拡大と活動の質的変化を実証し、日本への理解促進を目的とした政府広報の戦略化の過程に位置付ける。本研究は、国内の政府広報研究で看過されがちな国際広報を取り上げ、日本政府による国際的な影響力強化に向けた戦略的広報の重要性を確認するものである。
行政広報は公共性などの行政部門特有の環境特性により研究蓄積が少ない。そこで他分野で蓄積された知見を活用して研究を進めることが必要であり、本稿ではマス・コミュニケーション研究で長年議論されている議題設定の概念と方法論を援用して、行政広報チャネルと市政満足度との関係について分析した。その結果、広報誌の発信内容と市政満足度には相関関係があり、最適効果スパンは6ヶ月から9ヶ月であること、メディア接触が多い年代の相関関係が強いことなどが明らかになった。これらの関係性から広報活動と広聴活動の循環的な関係が示唆され、市民の認識と行政広報の関係を表す行政広報エコシステムの概念を提案した。
企業の不祥事が発生した時、企業とジャーナリストは「守り」と「攻め」の役割として向かい合う。不祥事の際に企業が発信するメッセージについて、ジャーナリストはどう見ているのか。両者は同様の考え方に立っているのか。この疑問に答えるため、不祥事の際の謝罪スピーチ原稿を企業の広報職とジャーナリストに起草してもらい、「謝罪のストラテジー」によって分析した。その結果、広報職が謝罪表現を多く用いることによって企業自らの姿勢をより低く見せ、オーディエンスからの厳しい視線を緩和しようとする傾向がある一方、ジャーナリストは客観的事情説明や補償、製品回収など実質的・経済的な対応に言葉を費やす傾向があることがわかった。
本研究は、ウェブモニタ調査(n=1082)を用いて、中小企業も含めた国内企業のインターナル・コミュニケーションの実施状況を捉え、インターナル・コミュニケーションが従業員の行動に影響を及ぼすと言えるかどうか、統計分析によって検討するものである。勤務先のインターナル・コミュニケーションが十分行われていると回答した者は、企業規模や学歴等を加味した多変量解析でも、業務の効率改善などに取り組んでいる傾向があるという結果となった。
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