マーケティングレビュー
Online ISSN : 2435-0443
6 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
査読論文
  • ― 地域間ブランドとしての燕三条にかかるSNSデータをもとにした感情分析 ―
    長尾 雅信, 南雲 航, 八木 敏昭
    2025 年6 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    [早期公開] 公開日: 2025/01/23
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    本研究は,地域連携を活用した持続可能な社会システムの構築を目指す日本の状況に鑑み,プレイス・ブランディングの観点から「センス・オブ・プレイス(SOP)」の分析を行った。これまでSOPの解析は人為的な手法で行われる傾向にあったが,昨今はAIを活用した解析が行われつつある。そこで本研究では,地域間ブランドの代表例である燕三条地域に注目し,人々が同地について発したSNSの投稿データを収集し,そのデータを機械学習で解析し,住民や観光客が地域に対して抱く感情を評価した。感情分析には,TransformerベースのLukeモデルを用い,投稿内容から8種類の基本感情(喜び,期待,驚きなど)を特定した。結果として,燕三条というプレイスにかかる感情の変遷を把握した。また,イベントが期待や喜びと関連し,コロナ禍の影響も感情に反映されていることが解析された。本研究はSNSデータの活用によって,地域のブランド力強化やイベントの効果を計測できる手法を提案し,他地域への応用可能性も示唆している。

  • ― 相互に踏み出す資源統合アクター ―
    宮脇 靖典
    2025 年6 巻1 号 p. 9-15
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    [早期公開] 公開日: 2025/01/25
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    地域資源の有効活用をめぐる議論は,公私の論理が交錯する問題があり,到達点をなかなか見いだせない。その理由として,地域内外の多様な資源を活用する視点に加え,その主体となる地域内外の多様なステークホルダーを視野に入れた議論の余地が残されていることが挙げられる。この議論を進めるにあたって,市場で取引される資源,私的な資源および公的な資源が相互の利用可能性を高めることをめざして進行する資源統合が,有用な視点になると考えた。本研究は,地域資源の有効活用がみられるまちづくりの事例に注目し,地域内外のステークホルダーが各自の役割をどのように考え,またどのような相互作用がみられるのかについて,資源統合の視点から考察した。その結果,地域内外の資源統合アクターが,各自の役割範囲を固定的に考えないようにしていることとともに,3つの資源の利用可能性を相乗的に高めることによりまちづくりの主体になっていくことが明らかになった。

  • ― アーティストのアートマーケティングにおける基盤の考察 ―
    村上 暁子
    2025 年6 巻1 号 p. 16-23
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    [早期公開] 公開日: 2025/01/25
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    芸術を扱うアートマーケティングは,多くの場合,作品とオーディエンスの間を繋ぎ,組織的に実行され,多くの研究において,その観点から論じられてきた。しかし,アーティスト本人によるマーケティングへの具体的関与や実践については議論の焦点となってこなかった。アートマーケティングでは,アート特有の状況から顧客志向よりアーティストの表現が尊重されてきた一方,アーティスト本人はマーケティングから遠ざかってきた。近年,現代アートはビジネスシーンからも注目され,この分野のアーティストにとって新たな活躍の場が広がっている。この新たな状況は,それまで他者に委ねられていた価値形成プロセスにアーティストが能動的関与を試みるチャンスでもある。そこで本研究では,アーティストのチャレンジ的なマーケティングへの可能性を探求するため,基盤となるアーティストの価値形成への関与について考察した。アート特有の価値形成のプロセスを明らかにし,同時に経済活動に距離をとるアーティストの態度について考察したところ,アーティストがアートマーケティングを実行するための鍵はオーディエンス及びステークホルダーの存在であることが導かれた。

  • 北澤 涼平
    2025 年6 巻1 号 p. 24-30
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    [早期公開] 公開日: 2025/01/27
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    消費者は,今,ある製品を消費する際に,一時的に形のない製品にアクセスするような消費形態であるリキッド消費と,永続的に形のある製品を所有し続けるような消費形態であるソリッド消費のうちどちらを選択するか,という課題に直面している。本研究は,製品の自己関連性と自己概念明確性という2つの要因が,上述した消費者によるリキッド消費とソリッド消費の選択に及ぼす影響について検討した。実験の結果,製品の自己関連性が低い場合,自己概念明確性の高低にかかわらず,消費者はリキッド消費を選択しやすい一方,製品の自己関連性が高い場合,自己概念明確性が高い消費者はソリッド消費を選択しやすく,自己概念明確性が低い消費者はリキッド消費を選択しやすいということを見出した。以上の知見を提供することによって,本研究は,リキッド消費研究を理論的に前進させ,製品の販売形態に関する意思決定を行うマーケターに実務的な指針を提示する。

  • ― SIB効果で見る新しい顧客経験の創出 ―
    梁 庭昌, 張 婧, 増田 俊太郎
    2025 年6 巻1 号 p. 31-38
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    [早期公開] 公開日: 2025/01/27
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    クチコミを通じた顧客間の相互作用が,行為者自身にSaying-Is-Believing効果(以降,SIB効果)をもたらし,顧客経験の変容を引き起こす可能性が示唆されている。SIB効果とは,クチコミ相手の視点を取り入れるクチコミ行為が,行為者自身の商品等に対する態度や記憶の変容をもたらす効果である。本研究はSIB効果の実験パラダイムを導入し,ホテル利用体験のカスタマーレビュー投稿が投稿者自身の態度や記憶に与える影響,そしてそれによる投稿者自身の顧客経験の変容を実験的に検証した。具体的には,感情極性ラベルを付与した日本語テキストのデータセットを用いてファインチューニングしたBERTを用いて従来のSIB効果を精緻化した。また,顧客経験の多次元性を想定したうえ,SIB効果が顧客経験の特定側面の変容を促すことを検証した。これらの検証結果から,カスタマーレビュー投稿等のクチコミ行為が既に形成された顧客経験を変容させうることが示された。

  • 矢倉 和雄
    2025 年6 巻1 号 p. 39-44
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
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    本研究の目的は,日本の大企業において,データ活用で成果を生み出すにはどのような活動が必要になるか明らかにすることである。Gupta and George(2016)を代表とする大規模データ分析におけるリソース(Big Data Analytics Capabilities)に関する研究領域の中で,企業内を「データ活用組織」「経営層・企業」「事業担当」の3つの主要な組織に分類をして,それぞれの活動がデータ活用の成果にどの程度寄与するか,仮説モデルを構築して検証を行った。結果として,データ活用で成果を出すにはデータ活用組織における,データや分析システム,データ活用人材・スキルは必要であるものの,直接効果としては不十分であった。しかし,①経営層・企業によるデータ活用への意識や理解,企業変革に前向きな文化などが媒介効果として必要であり,②事業担当によるデータ活用への意識や理解,データ活用組織との連携なども媒介効果として必要であることが示された。特に,②と比べて①の重要性が高いことも示された。

  • 蛯谷 孟弘, 加藤 拓巳
    2025 年6 巻1 号 p. 45-51
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    [早期公開] 公開日: 2025/01/28
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    モデルの広告効果に関する既存研究では,外見的特徴,及び内面的特徴が商品特性と合致していることが重視されてきた。しかし,それら既存研究の対象は,著名人モデルと一般人モデルに限定されている。最近は,低コスト・低リスクの観点から,人工知能(AI)が生成したモデルの広告起用が注目されている。そこで,本研究では,「AIモデルの私生活設定と商品特性が合致すると広告の商品魅力は高まるか?」というリサーチクエスチョンを設定し,ランダム化比較試験を実施した。その結果,洗濯用洗剤広告のAIモデルを対象とした場合,独身よりも,既婚・子ありという属性設定が商品魅力を高めることが明らかになった。本研究結果は,広告の著名人・一般人モデルに関する知見が,私生活が存在しないAIモデルにも適合することを示しており,学術的知見を拡張するとともに,実務家に有益な示唆を提供した。

  • ― 従業員ブランド・エクイティを用いた実証研究 ―
    田中 友恵
    2025 年6 巻1 号 p. 52-58
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/02/28
    [早期公開] 公開日: 2025/02/07
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    本研究では,組織の内部からブランド価値の創造をもたらす視点として,ブランド価値の創造を支える従業員ベースのブランド・エクイティ・モデルの有効性を検証した。先行研究をもとに従業員ベースのブランド・エクイティを(1)インターナル・ブランドマネジメント力,(2)従業員のブランド知識による効果,(3)従業員ブランド・エクイティによる自己強化効果と規定したうえで,企業に勤める正社員300名に質問票調査を行った。自社のブランド力の評価を被説明変数とし,主成分分析により得られた「ブランド・アンバサダー」と「ブランド・セントリックな組織デザイン」の2因子を説明変数として重回帰分析を行ったところ,自社のブランド力の評価に正の影響を与えることがわかり,有効なモデルの構造を定量的に検証し,更新することができた。

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