mental activities, motor task, somatosensory stimulationなどによる脳局所の血流, 代謝の変化はPETやMEGなどではとらえることができる.しかしこれらの検査は検査時間が長く, 患者も搬送が必要である場合が多く, しかも非常に高価である.また急激で一過性の血流の変化がとらえられないことがある.一方TCDの有用性は簡便に繰り返し検査が可能であり, 急激で一過性の変化をとらえることができることであるが, 血流速度の変化がCBFの変化を反映しているかに疑問がある.今回の研究は視覚刺激を与えた時にPCA, BA, MCAの血流速度 (BFV) が変化を健常人を使い測定し, 過去に同様な刺激によるCBFの変化を検討したPET studyなどと比較してTCDの有効性を検討した.対象は男性7例女性7例で, 年齢は21-41歳であった.全例右利きであり, 現在投薬をうけておらずmental, neurological, vascular diseaseの既往はない.検査は明るさを一定にした静かな部屋を用いた.検査中は呼吸数, 脈拍, 血圧を連続的にモニターし, 検査前後のETCO2を測定した. TCD systemは二つの血管を同時に連続的に測定できるMulti-DOPX/TCD 7, Firma DWL, Electronische Systeme GmbHを使用した.刺激は1) 安静閉眼状態で10秒ごとにbeep toneのみを聞かせる.2) Room light下で, beep toneに従い開眼, 閉眼を繰り返す.開眼時の視線は前方においたwhite screenの中央に固定するように指導した.3) Room light下で開眼と閉眼を繰り返すが, 視線は部屋の中を見渡すように指導した.4) Goggleから両眼に光刺激を与える.10秒刺激, 10秒中止を14サイクル与える被検者は閉眼状態とした.5) Goggleからの光刺激で被検者は開眼状態とした.結果としては, 検査中に血圧, 脈拍などに変動は認あなかった.開眼のみ, また光刺激によりPCA, BAのBFVは著明に上昇したがMCAのBFVは変化を示さなかった.PCAとBAのBFVの変化ではPCAのほうが有為に上昇した (p<.0.0001) .両眼同時の刺激であったが, 右のPCAのBFVのほうが有為に上昇する傾向であった.これらの結果はすべて複数回検査したが再現性を認めた.著者らの考察としては, 過去にも各種刺激による特定の血管領域のBFVが上昇することは報告されている.しかしこれらの報告は反応が一定でなくvariationが多い.著者らは各種刺激による脳局所の血流代謝の変化を測定する場合にはtaskの選択が最も重要であり, これはPETの結果を参考にするのが有用であると述べている.今回の結果では右のPCAのBFVのほうが有為に上昇する傾向が認あられ, また開眼では注視時より視線を動かしている時のほうが変化が大きいとう結果であった.これは過去のPETでの報告と一致している.したがって両側PCAのBFVの連続測定は, 視覚刺激時によるPCAの血流増加を示していると結論づけている.
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