従来より, 頚動脈狭窄性病変の診断のgold standardは血管造影法であったが, 合併症を惹起する可能性のある侵襲的検査であり, 精度の高い非侵襲的評価方法の開発が望まれてきた.頚部超音波パワードプラ法 (PDI) は, 血管内腔の形態を評価する為, 近年開発された新しい超音波診断法である.パワードプラ法の実用原理の臨床応用により, 動脈血管狭窄部位の連続血流の可視化の感度は向上している.本論文では, 内頚動脈狭窄症評価における, パワードプラ法の診断上の意義と, カラードプラ法 (CDFI) 及び血管造影法との比較調査を行なった.
著者らは, 128の内頚動脈狭窄血管と12の内頚動脈閉塞性病変をパワードプラ法, カラードプラ法, 血管造影法により連続評価した (全例が50%以上狭窄) .内腔の狭窄率は, PDI法, CDFI法ともに縦断像及び横断像により, それぞれ内腔口径および面積の狭窄度をを計算することによって測定した.血管造影上の狭窄度は, 従来の報告よりNASCET, ECST, CC methodsの方式を利用し計測された.
結果として, PDI法は狭窄血管内腔を, 特に石灰化を伴うような複雑な高度狭窄病変において, CDFI法より有意に明瞭に描出した (92%vs79%, P<0.01) .直線回帰分析では, 口径狭窄率, 面積狭窄率ともにPDI法とCDFI法とで密接な相関を示した.内頚動脈狭窄度分類では, 80~90%の面積狭窄例において, 両者間で最良の一致を示した.血管造影法では, PDI法とCDFI法の両方との比較において, NASCET方式では内腔狭窄率の過少評価, ECST, CC methods方式では過大評価がみられた為, 超音波法と血管造影法との相関は中等度に留まった (p<.001) .
PDI法ではCDFI法に比較して狭窄血管内腔の可視化能力が向上し, 内頚動脈狭窄の評価を改善した.血管造影法により測定する狭窄度は, 各研究の評価方式に依存しているが, PDI法, CDFI法の両者による狭窄部プラークの超音波イメージングは局所の狭窄度の直接的評価を可能にするといえよう.
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