香川大学看護学雑誌
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22 巻, 1 号
香川大学看護学雑誌
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表紙
目次
精神科看護師が用いる統合失調症の「不穏」に関する概念検討
  • 芦沢 直之, 上野 知恵子, 渡邉 久美
    原稿種別: 一般医学・社会医学・看護学
    専門分野: 看護学
    2018 年 22 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2018/03/30
    公開日: 2020/07/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス HTML

    精神科看護の臨床において,“不穏時の頓服”や“不穏時の危険行動への介入”など,「不穏」という専門用語は高頻度に用いられている.しかし,その示す範囲は看護師により差異がみられる現状がある.本研究ではRodgers BL.の概念分析法を参考として,精神科看護師が統合失調症の不穏をどのように捉えているのかを,質的に明らかにした.

    文献は,医学中央雑誌における1987年から2016年までの看護領域の原著論文で,「不穏」と「統合失調症」のキーワードで検索して収集した.このうち,不穏について具体的な記述を読み取ることができるもの,研究筆頭者が精神科看護師である31件を分析対象とした.不穏に関する記載箇所を抽出し,時間軸に沿って比較検討しながら分析した.

    分析の結果を,「先行要件」,「属性」,「帰結」について,臨床的に用い易いものとするため,それぞれ《サイン》,《症状》,《転帰》として記述した.

    《サイン》は,【生理的欲求の未充足】,【状況への不信,不満】,【妄想に支配された訴え】,【対応力の低下】,【看護師が察知する普段との違和感】,【身体的要因の増悪】の6要素が抽出された.《症状》は,【幻覚・妄想の増悪】,【不意な行動化】,【興奮】,【自己への危害】,【他害行為】の5要素が抽出された.《転帰》は,【行動制限】,【内服薬調整】の2要素が抽出された.

    本研究における,精神科看護師が捉える統合失調症の不穏とは,生理的欲求の未充足,状況への不信や不満,妄想に支配された訴え,対応力の低下,看護師が察知する普段との違和感,身体的要因の増悪などを前兆として,幻覚・妄想の増悪,不意な行動化,興奮,自己への危害,他害行為に至り,行動制限や内服薬調整を必要とする状態と定義された.

伊吹島の出部屋で別火生活を送った女性の思い
  • 松本 千佳, 佐々木 睦子
    原稿種別: 一般医学・社会医学・看護学
    専門分野: 看護学
    2018 年 22 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 2018/03/30
    公開日: 2020/07/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス HTML

    目的

    伊吹島の女性がどのような思いを持って,出部屋で別火生活を送っていたかを明らかにすることである.

    方法

    研究デザインは半構造化面接法による質的帰納的記述研究である.観音寺市在住で,伊吹島の出部屋で過ごした女性8名を対象に,インタビューガイドに基づき半構造化面接し,データは質的帰納的に内容の分析を行った.香川大学医学部倫理委員会の承認後実施した.

    結果

    対象者8名の平均年齢は81.6歳,平均出産回数は3.5回であった.分析結果より,30サブカテゴリーから5カテゴリーが得られた.伊吹島の女性たちは,昔から重労働を強いられており,また,姑の権力が強く,結婚後は【辛抱・我慢で育てられた伊吹島の嫁】と言い聞かされていた.伊吹島では,出産時に出部屋で生活することは普通のことであり,当たり前のことであった.また,出部屋生活は【不便な生活でもみんなと一緒は気楽で楽しい】と感じる一方,【お産は命懸けなので信頼できる産婆が近くにいて安心】と感じていた.そして,出部屋生活をとおして,改めて【家族や出部屋友達に支えられた別火生活】であったと感じていた.さらに伊吹島の女性たちはこのような【島の風習を当たり前のこととして受け入れて継承する誇り】を強く感じていることが明らかになった.

    考察

    伊吹島の女性たちは,命懸けの出産をとおして,家族の大切さや出部屋友達との結びつきの重要性を改めて感じていた.そして,出部屋で生活するということを受け入れ,風習を守って継承することは,不便な伊吹島の生活の中で家業や家事,育児を担う役割を果たし,伊吹島の女性として,誇りを持って生きるために,なくてはならない時間と場所であったと考える.

    結論

    伊吹島の女性の出部屋での別火生活は,伊吹島で古くから受け継がれている風習を守り,その後も伊吹島の女性としての誇りを持って生きていくことに繋がっていた.

高齢者に対するスピリチュアルケアに関する文献検討
  • 西村 美穂, 大森 美津子, 森河 佑季
    原稿種別: 一般医学・社会医学・看護学
    専門分野: 看護学
    2018 年 22 巻 1 号 p. 23-35
    発行日: 2018/03/30
    公開日: 2020/07/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス HTML

    本研究の目的は,高齢者に対するスピリチュアルケアを文献より明らかにすることである.

    文献検索は医学中央雑誌Web版を使用した.「高齢者」,「スピリチュアルケア」をキーワードとした.加えて,老年看護,福祉領域の学会誌からも文献検索を行った.検索対象年は,1970年から2017年までとした.分析は,窪寺のスピリチュアリティの超越性と究極性の考えを参考にし,高齢者に対するスピリチュアルケアが記載されている文章を,文脈を損なわないようにそのまま抽出,要約し,コードとした.そして,コードを意味内容が同じもので類型化しサブカテゴリーにした.さらにサブカテゴリーを類型化しカテゴリーにした.

    倫理的配慮は,文献の出典を明らかにし,データは可能な限り原典より抽出した.

    対象となった文献は13件であった.そのうち9件は終末期の高齢者を対象としていた.その他は,腰痛やくも膜下出血等によりADL介助を受けている高齢者を対象とした文献が2件,配偶者と死別した高齢者を対象とした文献が1件,養護老人ホームで生活している高齢者を対象にした文献が1件であった.

    高齢者に対するスピリチュアルケアは,【超越的存在の支えを感じることができるケア】【拠りどころからの支えを感じることができるケア】【自分の人生に向かう準備を支えるケア】【死や生と向きあうことを支えるケア】【人生の整理を支えるケア】であった.

    また,スピリチュアリティが覚醒し,よりよい状態にある高齢者に対するスピリチュアルケアは,環境を調整する,傾聴する,沈黙を守る,ユーモアで笑いあうことが行われていた.

小児がんを持つ子どもの家族に対する移行支援
  • 国内における文献レビュー
    鈴木 智子, 鈴木 麻友, 谷本 公重
    原稿種別: 一般医学・社会医学・看護学
    専門分野: 看護学
    2018 年 22 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2018/03/30
    公開日: 2020/07/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス HTML

    小児がんは医療によって治癒できる病気となってきている.その一方で,厳しい治療や長期入院後の生活は小児がんの子どもにとどまらず,その家族へも影響を及ぼすとされる.そこで,今後の患児と家族支援のあり方を検討することを目的に2007年から10年間で検索を行い,小児がんを持つ子どもの家族支援に関する研究動向を概観し,原著論文による文献研究を行った.

    33件の国内における原著論文を対象に,小児がんの子どもの家族支援について内容分析の結果,【治療で生じる問題に対する家族の思い】,【終末期の家族の思いと支援】,【退院後治療に関連した生活支援と移行支援】,【医療ケアの模索】の4カテゴリーが抽出された.治療中から,多職種連携による教育支援と移行支援という二つの側面を踏まえた上での継続的な包括支援ケアシステムが必要と考えられた.

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