イオンだけから構成され、液体と結晶の中間的な状態である柔粘性イオン結晶(Ionic Plastic Crystal、 IPC)は、機能性電解質としての利用も考えられることから多くの研究がされている。物性研究のためには構造を把握することが必要であり、構造解析は重要である。今回情報量の限られているIPCの粉末結晶X線回折データを用いて構造解析方法を開発し、いくつかのIPCに適用したので紹介する。
物性に課題を有するフリー体薬物の塩化または共結晶化は有効な手段である。近年、新たな物性改善手法として塩共結晶化が注目されている。しかし、医薬品の塩共結晶に関連した報告はごく少数である。ここでは、医薬品塩と糖類の塩共結晶化による物性改善およびそのメカニズム解明の事例について紹介する。
複数の成分が不定比で混ざり合うことにより構築された多孔質フレームワークは、機能の段階的な調整、さらには機能の創発が可能であるため注目されている。しかし、設計指針の確立に必要な精密な結晶構造解析は依然として困難である。本研究では、ヘキサヒドロピレンとピレンをそれぞれ主骨格にもつ2つのテトラカルボン酸を共結晶化することにより非化学量論的組成の水素結合性フレームワークの構築を達成した。単結晶X線構造解析により単結晶中の成分比を決定したところ、任意の割合で不定比共結晶フレームワークが構築されることが示された。さらに、単結晶を用いた顕微ラマン分光により、各成分は不均一に分布していることが明らかになった。
スクアルアミドは4員環構造上に2つのカルボニル基と2つのアミノ基を持つ化合物で、これまで、触媒などの機能性分子や生理活性分子の鍵構造として用いられてきた。筆者らは、スクアルアミドが ユニークな子立体構造を有する芳香族分子構築の有用なビルディングブロックとなることを示してきた。本稿では、スクアルアミドの立体特性とその応用についての筆者らの最近の研究を紹介する。
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