本研究では, CVM (仮想評価法) およびコンジョイント分析を通して, 矢作川における流域環境整備からの経済的 便益評価を行った. 河川環境を水質, 安全性, 生態系保全, アクセス可能性の4属性に分類して各属性に対する住民の限界支払意思額 (MWTP) を推定した結果, 上流・中流・下流の各地域で各属性に付与する経済的価値の相対的なウェイトが異なることが確認された. このことから, 流域の各自治体を含んだ流域環境管理に関する合意形成には交流を通した相互理解が必要であり, 矢作川では矢作川沿岸水質保全対策協議会 (矢水協) がリーダーとして果たした役割が大きいと考えられる. また, 下流自治体によって創設された水源林保全基金については, 規模は不十分なものの受益者負担を実現する制度として注目される.
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