特發性食道擴張症とは食道内腔の汎發性擴張を來し, 然も噴門には何等器質に變化を認めざるものを言ふ.本症は1821年Puürton 氏的より剖檢例を1878年Zencker氏によりて臨牀例を發表せられ, 爾來比較的稀有の疾患とされたるも, 1898年「レ」線が其の診斷に利用せらるるに及び其の報告は相踵いで現はれるに至れり.本邦に於ても明治41年重村氏の剖檢例, 次で大正5年臨牀例の報告あり, 現今既に百餘例に達す.余等も亦其の1例に遭遇し, 種々檢索を行ひ, 且手術により噴門部に異常を認めず, 本症なることを確實にすることを得たるを以て茲に其の大要を報告せんとす.
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