教育経済学研究
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3 巻
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  • ―公立大学の取組みの実態を中心に―
    西村 政子, 猪又 由華里, 趙 彩尹
    2023 年 3 巻 p. 1-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    日本の高等教育機関では、若者に対するグローバル人材育成に向けた国際化事業に力を入れている。この取組みは、「外なる国際化:学術の習得や研究等の目的達成のために自国以外に比較的長い期間在留する、海外留学に代表される取組み」と「内なる国際化:グローバル人材に求められる能力やスキルを大学のキャンパスにおいて身に付けるための、海外留学に替わる取組み」に区分することができる(西村ら,2022)。グローバル人材育成に最も効果的な政策として留学が推進されている一方で、留学せず社会に出ていく多くの若者の国際化は、多文化共生社会を担う人材育成にとって喫緊の課題である。そのため本稿では、「内なる国際化」を留学の限界を補完しグローバル人材育成を強化する手段となるプログラムとして構築するため、必要な要素についての事前調査を行った。その結果、大学教育における内なる国際化は、学生に自己成長や行動変容を促すなどの教育的意義を持っており、大学の取組み内容においては、留学生と日本人学生との交流・協働、地域社会・産業との関わりという共通性を確認した。文部科学省が行う国際化推進事業において採択数の少ない公立大学の取組実態に焦点を当てることで、国際化の取組みを実施していない、又は実施が困難な状況にある大学においても、実現可能性が高く継続することのできる取組みの要素として、(1)キャンパス及び地域の多様性の活用、(2)チューター制度などの一定期間に渡る学生交流の活用、(3)異文化理解講座などの 1 回完結型交流の活用、の 3 つの要素が抽出された。
  • ―ホテル学校及び旅館の人材育成カリキュラムを中心に―
    和田 健資, 小原 愛子
    2023 年 3 巻 p. 14-26
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    日本における宿泊産業は、これまで観光立国の実現に向けて日本の基幹産業になるべく成長してきた。世界経済フォーラム(2022)が発表した Travel & Tourism Development Index 2021 では、旅行や観光に関する 112 項目を総合的に評価した中、対象 117 か国・地域の中で日本の旅行・観光の魅力度が 1 位となった。今後、宿泊需要や宿泊産業に対しての大きな期待と成長を鑑みるに、宿泊産業の人材育成に関してこれまで以上に必要性と取り組みを強化する必要があるだろう。しかし、「旅館」という日本独自の文化の中にある宿泊業に絞ると専門的に学ぶことができず、一方海外ではホテルに特化した教育カリキュラムが存在し人材育成を行っている。そこで、本研究では、国内外大学の宿泊業に関する教育カリキュラムについて調査し、科目や時間、単位、授業内容等を比較することで、日本の宿泊業の中でも「旅館」に関する人材育成教育カリキュラムの課題を明らかにし、人材育成教育に必要な要素を明らかにすることを目的とする。その結果、抽出された機関は 8 校で、日本が 2 校、海外が計 6 校(アメリカ 1 校・スイス 3 校・オーストラリア1 校・イギリス 1 校)となり、日本においては 2 校とも専門学校であり、教育期間は 1 年間であ った。海外においては、4 校が大学であり、各 2 校が大学附属のビジネススクールとなっており、いずれも 4 年間学ぶ課程となっていた。日本の大学では、「観光人材教育」という幅広い教育が主流で実際の観光業の現場においてのミスマッチや乖離があることや、宿泊業に特化したカリキュラムがないという課題が明らかになった。さらに日本においてインターシップの時間は少なく、ビジネス基礎の時間もない事が明らかとなり、日本でも 1 年間宿泊施設での実践的な体験と経験を持つことができるような単位が取れる仕組みを作る必要がある。未来的に宿泊産業に適応し続けることができる人材を育成するには、専門的な教育機関で学ばせることが、「宿泊産業」業界における人材不足を解消し「人材育成教育」につながるのではと考える。
  • 砂原 雅夫
    2023 年 3 巻 p. 27-40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    日本の少子高齢化が進む中で労働力の減少を補う労働生産性の向上を図り、経済成長を維持していくには人的資本の増加に結びつくと考えられるリカレント教育の強化が必要である。本研究では、高等教育に対して補完的なリカレント教育の一つである大学の履修証明プログラムの受講形態の特徴を分析し、職業を持っている社会人のニーズにあわせた受講形態を考察することを目的とした。高等教育に対して補完的な履修証明プログラムの受講形態の項目について量的変数、質的変数で分類し、各変数の間に相関係数を求めた。その結果、日本の国公私立大学における高 等教育に対して補完的リカレント教育である履修証明プログラムは受講対象者を高等教育の蓄積をもつ者へ限定していることが示された。また、大学の人材、資金、施設の独自性を発揮し、平日に開講するケースが多かったことが示された。これは、開講する側いわゆる大学側のプログラム提供体制が重視され、大学資源の活用と学外の講師人材、企業現場の協力が得やすい平日の開講が多くなっていると考えられる。今後は、補完的リカレント教育の受講の成果を客観的に測定することで補完的リカレント教育の効果を明らかにするさらなる研究が必要となる。
  • 石井 良輔, 野津 隆臣, 関口 格
    2023 年 3 巻 p. 41-51
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、望ましい学校制度のあり方に関連する経済学的問題を 2 つ取り上げ、ミクロ経済学のアプローチで考察する。1 つは、学校教育の現場で生じがちな、「皆で協力すれば望ましい結果が得られるにも拘わらず全員がサボる」ケースについての、ゲーム理論の視点からの解決策についてである。既存研究では達成されなかった協調が実現するポジティブな結果がある一方で、コミットメントを導入すると生じないはずの望ましくない結果に陥るケースもあるという、手放しで楽観するわけにはいかない結論となった。もう 1 つは、教室で教科書以外に必要となる教材の販売・購入を巡る問題で、教材を各家庭に行き渡らせたいが教材業者の利潤動機を規制できない学校の意思決定を分析する。業者の店頭販売と並行して校内販売を行うと、児童全員が教材を使える状態を実現できることが示されるが、その際に学校が仕入れた教材を誰に売るかという、割当ルールの設定が重要だとわかる。
  • ―IN-Child Record の対応分析を中心に―
    進藤 乃彩, 小原 愛子
    2023 年 3 巻 p. 52-67
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    IN-Child(Inclusive Needs Child)とは、「発達の遅れ、知的な遅れまたはそれらによらない身体面、情緒面のニーズ、家庭環境などを要因として、専門家を含めたチームによる包括的教育を必要とする子」と定義され(韓・太田・權,2016)、包括的教育を必要とする全ての子どもを指す用語である。また、IN-Child の QOL 向上の観点から支援ニーズを検討する為のツールとして、INChild Record が開発された(韓・太田・權,2016)。本研究では、IN-Child Record を用いて、論文・学会発表における指導実践を IN-Child Recordの領域と照らし合わせて分析することで、ADHD 傾向のある IN‐Child に対して教育現場で行われている指導・支援方法を整理した。また、先行研究との比較をすることで、効果的な指導法を明らかにするとともに、ADHD 傾向のニーズのある子どもに対する指導・支援方法の課題を明らかにすることを目的とした。その結果、「不注意」傾向のある子どもは机上の上を片付けることや、本人の興味・関心を活かした学習をする等の支援が実施されており、「多動性・衝動性」傾向のある子どもは暴言や暴力をふるわないことを遊びのルールとして設定することや、授業中大きな声を出さないことをルールとして設定する等、ルールを設定する支援が多く実施されていた。
  • 日下 まりあ , 小原 愛子
    2023 年 3 巻 p. 68-84
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、大学が地域貢献の役割を果たす観点から、地域・産学官と連携した教育活動を進めていくにあたり取り組まれている PBL 教育について、実践事例報告より PBL の傾向を整理し、現状と課題について明らかにすることを目的とする。結果として地域連携に取り組む PBL の教育特性には、科目の到達目標に学生の社会的資質の向上があることや、最終成果の表現形態に文系・理系学部それぞれの特徴があることが明らかとなった。しかし、目標設定において連携先の視点や地域全体を総合的に評価できる項目が不十分であることから、今後より一層、連携先と大学・学生が地域連携の意義を明確に共有すること、また、地域全体での成果評価とそのための指標の必要性が課題となっている。
  • 田中 香織, 太田 麻美子
    2023 年 3 巻 p. 85-96
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、現在の高等教育機関において、より効果的な「グローバル人材育成のためのプログラム」を開発するために大学卒業者(以降、大卒者)に求められている「グローバル人材」の定義について検討する。結果として、本研究においてグローバル人材を「国境を越えた、人やモノの移動が活発化し世界における経済的・文化的・政治的な結びつきが深まっていく社会において、多様性の効果を活用しながら、個性と専門性を発揮できる人材」と定義した。また、グローバル人材の構成要素・育成すべき能力として、従来重要視されてきた①英語に限らないボディランゲージ等を含む他者とコミュニケーション能力に加え、②自分自身を含む多様なバックグラウンドを持つ人や考え方を理解し協調できる能力及び、③自身の専門分野に対する知識・技能があげられるのではないかと考えられる。
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