水中に懸濁するコロイド状粒子を凝集させる場合、電解質を加えたり、高分子凝集剤や界面活性剤の適量を加えるなどの方法がとられる。この中で電解質添加による凝集はもっとも基本的な問題であり理論的な取扱いも進んでいる。電解質を加えると懸濁粒子が凝集するようになるのは、粒子が帯びている電荷が電解質の添加によって中和され、粒子同士の反発力が減少するという簡単な理由によるものではない。水中の粒子は通常その表面に電荷を帯びている。この表面電荷は溶液中の反対符号のイオン(対イオン)によって取囲まれ、粒子全体としては電気的中性に保たれて広るが、この場合対イオンは広がりを持って雲のような状態で粒子をとり囲んでいる。したがって粒子間の静電的相互作用は、このイオン雲の相互作用として把えられなければならない。懸濁粒子の凝集分散を、イオン雲の重なり合い(拡散二重層の相互作用)と、粒子間に作用するLondon-van der Waals力とを組み合わせて理論的に説明したのがDerjaguin-Landau-Verwey-Ove rbeek(D.L.V.O)理論と呼ばれるものである。
D.L.V.O理論は同じ種類の粒子同士の凝集分散に関するものであるが、その後この理論はDerjaguinによって異種粒子間の凝集という、より一般的な理論(ヘテロ凝集理論)へと発展させられた。こゝでは先づD.L.V.O理論とヘテロ凝集理論の概要を述べた後で、特にヘテロ凝集理論に関連する二、三の問題点をとり挙げて考察してみたいと思う。話を簡単にするために、粒子は板状であり、電解質は対称型電解質とする。
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