本稿では、持続可能な経済社会の創造に向けて、ポピュラーなスローガン「グローバルに考え、ローカルに行動する」が掲げる問題意識に加えて、「ローカルに考える」重要性を明らかにするとともに、市場経済への信奉やその対極の否定という方向性ではなく、経済活動と生活の営みを捉えるために「多様な経済」や社会連帯経済という視点の導入を提起する。
ローカルは、特殊で非-理論的で「時代遅れ」と考えられがちである。他方では、ローカル志向の高まりが注目を浴びつつあるが、それらの言説にはローカルな閉鎖性やロマン化という旧来からの問題性も想起される。
日常生活の舞台となるローカルな地理的スケールと特殊性をはらむローカリティを探究することは、経済学にとって特殊性や多様性を理解する窓口を用意することになる。本稿では、グローバルからローカルへという一方向的な思考を脱するとともに、ローカルスケールで見えてくるものを通して「経済」の捉え方と人間の営みを見直し、市場や再分配とともに社会連帯経済を含めて経済行動の多元性を認識することによって、持続可能な経済社会への展望を開く。
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