ピリブチカルブの選択作用性と脂質生合成系に及ぼす影響との関係について, ピリブチカルブ感受性植物であるトウモロコシ (
Zea mays L. cv. Honeybantam) と, 耐性植物であるダイズ (
Glycine max L. cv. Suzunarihakuchou) との比較を行いながら検討した。
ピリブチカルブが両植物の根部生育に及ぼす影響を検討するため, ピリブチカルブ根部浸漬処理下で処理20時間目の根長を測定したところ, トウモロコシの幼根はダイズの幼根よりもピリブチカルブに対して高い感受性を示した (Fig. 1)。
次にピリブチカルブ処理下でダイズ, トウモロコシの両根部に
14C-酢酸を取り込ませ, 根端部への吸収量および脂質代謝画分への取り込み量を調べたところ, 吸収量, 取り込み量ともにダイズの方が明らかに大きかった (Fig. 2)。トウモロコシよりもダイズの方が, 根部中の脂質代謝が盛んであるためと考えられた。
また, 脂質画分中の
14C-酢酸由来のス
クワレ
ン量に関する検討を行ったところ, ダイズよりもトウモロコシの方にピリブチカルブによるス
クワレ
ン蓄積が多く認められることが明らかになった (Fig. 3)。
さらに
14C-酢酸を用いない実験でも, ガスクロマトグラフィー分析によりピリブチカルブ処理したダイズおよびトウモロコシ根部中でス
クワレ
ンが蓄積することが確認された (Fig. 4)。ピリブチカルブによるス
クワレ
ンの蓄積量は, トウモロコシの方がダイズよりも多かった。
また, ダイズおよびトウモロコシ根部中の主要遊離型ステロール3種の合計含有量も, ピリブチカルブ処理により減少することが確認された (Fig. 5)。しかしながら, ダイズとトウモロコシの間でステロール量の減少程度に明確な差は認められなかった。
この様に,
14C-酢酸を用いた実験および用いない実験共に, ピリブチカルブによるス
クワレ
ンの蓄積はダイズよりもトウモロコシで多いことが確認され, ス
クワレ
ン代謝阻害は, トウモロコシの方が感受性であることが明らかになった。生育試験でダイズよりもトウモロコシの方がピリブチカルブに感受性であった結果より, ピリブチカルブの殺草効果とス
クワレ
ン蓄積量との間には関連があるものと考えられ, ピリブチカルブの作用点はス
クワレ
ンの代謝阻害である可能性が強く示唆された。前報の結果と合わせると, ピリブチカルブの作用点は, ス
クワレン代謝系の中でもスクワレンからスクワレ
ンエポキシドへの変換, すなわちス
クワレ
ンエポキシダーゼの阻害である可能性が高いものと考えられた。
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