化学肥料,液状きゅう肥,固型状きゅう肥の施用量と土壌改良資材としての熔成燐肥(以下熔燐)および過燐酸石灰(以下過石)の施用が耕地および採草地の跡地土壌の化学的性状と,大麦,トウモロコシ,オーチャードグラスの無機成分含有率におよぼす影響を4年間検討した。1)耕地跡地土壌のN肥沃度は牛糞尿施用で高まり,液状きゅう肥区に比べ固型状きゅう肥区で大きかった。しかし,土壌Nの増大効果は牛糞尿の処理形態よりも施用量の影響がより大きいとみられた。2)耕地および採草地土壌のCa,Mg含量はともに固型状きゅう肥区>液状きゅう肥区>化学肥料区の順に高く,特にMg含量は熔燐区が著しく高かった。そのため両土壌のCa/Mg比は過石区よりも熔燐区が低く,土壌診断基準値(4-8)以下であった。土壌のK含量は化学肥料区よりも牛糞尿区,とりわけ液状きゅう肥区が最も高く,過石区よりも熔燐区で高い傾向を示した。そのため,Mg/K比は液状きゅう肥区の過石区が最も低く,土壌診断基準値(2以上)以下であった。3)収穫物のN.P.K含有率は化学肥料区よりも牛糞尿区が高く,かつ多量区が高かった。また熔燐と過石の施用効果は作物により異なり,トウモロコシのN.P.K含有率は熔燐区で高かったが,大麦やオーチャードグラスでは一定の傾向は認められなかった。4)収穫物のCa,Mg含有率は化学肥料区が牛糞尿区より高い傾向を示し,その差はCaで大きく,Mgで小さかった。また熔燐区では,Mg含有率は高いがCa含有率は低く,過石区では逆の関係にあった。5)K/(Ca十Mg)比は化学肥料区より牛糞尿区で高く,かつ多量区で高かった。トウモロコシおよび大麦の牛糞尿多量区のK/(Ca+Mg)比は2.2以上で不均衡とみられた。またオーチャードグラスでは,化学肥料区,液状きゅう肥区ともに2.2以上であった。6)Ca/P比は化学肥料区に比べ牛糞尿区で低く,トウモロコシ,大麦,オーチャードグラスの牛糞尿区はともに1以下で不均衡とみられた。Ca/P比は熔燐区より過石区で高い傾向を示した。
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