【目的】フォトグラファー(以後写真家)は、長時間の撮影や写真データを整理するパソコン業務、使用機器の準備・運搬などの多岐にわたる業務に携わる。様々な症状を有する可能性があると想定されるが、写真家を対象とした疼痛や疾患に関する調査は認められない。そこで本研究は写真家の作業関連疼痛の実態について質問紙調査を行った。そして質問紙調査の回答で最も主訴として多かった頸肩部の痛
みやこ
りを有する対象に対して鍼治療を行い、その効果について検討した。
【対象及び方法】写真家として勤務する者(138名)を対象に調査を行った。調査項目は業務中に感じる症状とその業務内容など計7項目である。質問紙調査回答者の中で、頸肩部の主訴を訴え、鍼治療を希望した6名(男性1名、女性5名)に対し鍼治療を行った。治療前と治療直後に肩こりのVAS、肩頸部の圧痛および硬結スコアを測定した。
【結果】質問紙の回収率は60.1%だった。有訴率では頸肩部の主訴が86%で最も多かった。性別の解析では頸肩部の主訴は女性、腰部の主訴は男性に多かった。鍼治療の効果については 肩こりの VASは鍼治療後に低下し(p<0.05)、圧痛スコア、硬結スコアについても鍼治療後に低下した(p<0.05)。
【考察及び結語】頸肩部の痛
みやこ
りが女性に多い理由としては、女性の方が筋力が低いことが考えられる。また腰部の痛
みやこ
りが男性に多い理由としては、被写体との身長差により腰部に負荷をかけている結果不良姿勢になる機会が女性よりも多いことが考えられる。以上のような写真家の主訴として最も多い頸肩部の職業関連疼痛に対して鍼治療は有用性があるものと考えられた。
抄録全体を表示