【目的】早期消化器癌に対して、生命予後や治療後のQOL改善に寄与する点から、内視鏡的治療が行われている。しかし、直接作用型経口抗凝固薬を服用している患者では消化器内視鏡後の出血リスクを考慮する必要がある。血液凝固第Xa因子阻害薬
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キサバンの体内動態は主に薬物代謝酵素CYP3A4/5や薬物排出トランスポーターP-糖タンパク質 (ABCB1)、乳がん耐性タンパク質 (ABCG2) により規定されていると考えられる。しかし、早期消化器癌患者における
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キサバンの体内動態や薬効・有害反応の変動要因については未だ不明な点が多い。そこで本研究では、母集団薬物動態/薬力学/ゲノム薬理学的解析 (PPK/PD/PGx解析) の手法を用いて、早期消化器癌患者における
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キサバンのPK/PD特性を評価した。
【方法】東京医科大学病院消化器内科及び共同研究施設で内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) を施行された
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キサバン内服中の早期消化器癌患者のうち、文書にて同意を取得できた37名を対象とした。
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キサバンの血中濃度推移は吸収相を考慮した1-コンパートメントモデルに従うと仮定し、非線形混合効果モデル法 (NONMEM法) によりPPK/PGx解析を行った。さらに、薬物動態関連遺伝子多型や臨床検査値がPPKパラメータに及ぼす影響について検討した。次に、
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キサバンの血中濃度と第Xa因子活性の関係はE
maxモデルに従うと仮定し、NONMEM法によりPPK/PD解析を行った。
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キサバンのPDパラメータの変動要因はPPK/PGx解析と同様の方法で検討した。
【結果・考察】PPK/PGx解析の結果、
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キサバンの経口クリアランス (CL/F) はクレアチニンクリアランス (CLcr) 値に正比例すること、
ABCG2 421C/AまたはA/A遺伝子型を保有する患者では低下することが明らかとなった。さらに、PPK/PD解析の結果、
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キサバンのIC
50値は喫煙患者で1.75倍上昇し、喫煙が第Xa因子に対する
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キサバンの感受性を低くする可能性が示唆された。
【結論】早期消化器癌患者においては腎機能やABCG2の遺伝子多型が
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キサバンの体内動態の変動要因になり得ること、喫煙が
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キサバンの薬効の変動要因になり得ることが示唆された。本研究結果は早期消化器癌患者における
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キサバンの個別化抗凝固療法を実践する上で有用な情報を提供可能と考える。
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