目的
多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)患者血清から特異的に検出される自己抗体に抗Jo-1抗体が知られている.本抗体の対応抗原は細胞質に存在する
アミノアシル
tRNA
合成酵素
(ARS)のひとつであるヒスチジルtRNA合成酵素であることが明らかとなっている.近年,他のARSに対する自己抗体が多数同定されており,これらの抗体を有する症例は,臨床経過に特徴がみられることから,抗ARS抗体症候群と呼ばれている.我々は,PM/DMを始めとした様々な膠原病患者において本抗体を測定し,その臨床的有用性について検討した.
対象と方法
当院へ通院中している197例の膠原病患者を対象とした.抗ARS抗体はEUROIMMUNE社から市販されている「Myositis anti-gens Profile 3」を用いて測定した.各疾患での抗ARS抗体の陽性率,間質性肺炎(IP)の有無,投与しているステロイドや免疫抑制剤などについて検討した.
結果
抗ARS抗体はIPを合併しているPM/DM患者から有意に高率に検出された.さらに臨床的にIP合併RA患者においても陽性例が見られた.PM/DM患者では抗核抗体で細胞質に染色が認められた場合,抗Jo-1抗体が陰性であっても他の抗ARS抗体が高率に陽性であった.抗ARS抗体が検出されるIPの合併したPM/DM患者症例では,陰性群と比較してステロイドが高用量で,免疫抑制剤の投与率が高い傾向が見られた.
結語
抗ARS抗体の測定は,IPを併発した膠原病患者において臨床上,有用であることが示唆された.
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