近年,開発される新薬候補化合物の多くが難水溶性を示し,経口投与時に十分な血中薬物濃度が得られないケースがある.難水溶性薬物の溶解性改善を目的として非晶質(
アモルファス
)化が検討されているが,非晶質状態の薬物は結晶と比較して不安定であり,結晶状態へと転移してしまう.そこで,非晶質の新たな安定化手法としてコ
アモルファス
に関する報告が増加している.コ
アモルファス
とは複数の低分子化合物から成る非晶質の一形態であり,化合物間の分子間相互作用が非晶質状態の安定化に寄与していると考えられている.コ
アモルファス
を構成する成分間で共結晶が形成される場合,コ
アモルファス
の保存や水分散時に共結晶へと転移する事例が報告されている.また,コ
アモルファス
の安定化の観点から,高分子を添加しコ
アモルファス
の共結晶化を抑制した報告がある一方で,高分子の添加により共結晶を調製することに成功した例もある.このように,コ
アモルファス
の共結晶化における高分子の影響を体系的に報告した論文はほとんどないのが現状である.本稿では,固体状態におけるコ
アモルファス
から共結晶への転移過程における結晶成長速度を薬物の分子運動性の観点から評価し,高分子添加の影響について言及したLuoらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Pekar K. B. et al., Cryst. Growth Des., 21, 1297-1306(2021).
2) Luo M. et al., Mol. Pharm., 21, 3591-3602(2024).
3) Ding F. et al., J. Pharm. Sci., 112, 513-524(2023).
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