知床半島では,2001年以降断続的に
アライグマ
の侵入情報が得られている.自動撮影カメラによるモニタリングと並行して侵入情報近辺での捕獲作業も継続する中で,2011・2012年には箱ワナによる捕獲も記録されるに至っている.斜里町・羅臼町の町別にみると侵入情報は未だ断続的であり,高密度状況には至っていないことが予想されるが,初記録から 12年が経過した現在,潜伏期を終えて増加期に移行してきていることも想定される.
侵入状況のモニタリング調査は現在も継続して実施中であるが,ヒグマが高密度で生息している知床半島においては,
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の侵入情報が得られても,捕獲を実施する際に誘因餌を用いる従来の箱ワナ捕獲は,ヒグマを人里に引き寄せる可能性があるために,ヒグマが生息していないことが確実と判断される市街中心部以外では実施が困難な状況にある.
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は人里周辺を好む動物であり,幸いにして知床半島でもこれまでに
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侵入情報が得られた地域は人里近周辺ではあるものの,今後
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が拡大した際には当然ヒグマ生息地域での防除も必要となってくる.
こうした状況を鑑みると,技術的にはヒグマ生息地域でも適用可能な捕獲手法の検討が急務となっており,
アライグマの樹洞等での営巣習性を利用した誘因餌の不要な巣箱型ワナの開発とヒグマ冬眠期間におけるアライグ
マ探索犬の導入を検討している.現在の
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捕獲手法は,捕獲技術と作業コストの両面において山間地での
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捕獲には不適であり,新たな捕獲プログラムの策定が必要となっている.今後は,知床半島全域での自動撮影カメラによる侵入状況モニタリング調査をベースに,侵入情報が得られて地域では,ヒグマの生息しない市街地では箱ワナを設置,ヒグマ生息地域では巣箱型ワナを設置して,冬期間には
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探索犬による探索を実施するプログラムの導入を考えている.
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