ストレスを感じている国民の割合は男女ともにおよそ6割と依然減少の兆しをみせていない.また,およそ2割弱の国民は睡眠による休養が取れていないという現状がある.2008年には気分障害を含むうつ病は100万人を超え,1999年の2.4倍に急増している.本稿では,メンタルヘルス不調の予防について,とりわけうつ病の一次および二次予防の観点から考えるために,(1)渡邊直樹らが秋田県や青森県で実践した地域でのうつ病の一次予防の取り組み,(2)保坂隆らが提言している「こころの安全週間」について,(3)ライフイベントとうつ病発症の関係,(4)うつ病と心疾患,糖尿病,高血圧症,脳血管障害などの生活習慣病との関係,(5)うつ病と睡眠の関係,(6)黒木宣夫らの報告している過重労働と過労自殺との関係,(7)「健康日本21」におけるメンタルヘルス対策などについて手短に紹介し,メンタルヘルス不調の予防の現状,問題点,そして将来の方向性について考えたい.
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