グリニャール試薬がベンジリデンアセナフテノン類に対して,1,2-付加,1,4-付加のいずれの付加型式をとるかについて検討した。ジエチルエーテル-ベンゼン混合溶媒中,ベンジリデンアセナフテノンと数種の臭化
p-置換フェニルマグネシウムとの反応では,予期される1,4-共役付加体2-ベンゾヒドリルアセナフテン体と現在までまったく例をみないジエチルエーテルが関与した1-エトキシ-2-ベンゾヒドリルアセナフチレン類が生成するというきわめて興味ある知見を得た。また,ジイソプロピルエーテルを用いた場合にも収率は低下するが,1-イソプロポキシアセナフチレン体が生成した。しかし,
p-置換ベンジリデン体と臭化フェニルマグネシウム類との反応では,一般に1,4-共役付加体のみが得られ,
p-クロルベンジリデン体と臭化
p-アニスマグネシウムとの反応の場合にはグリニャール試薬が2分子関与した1-
p-アニス-2-ベンゾヒドリルアセナフチレン体が生成した。
一方,比較的反応性の大きい臭化ベンジルマグネシウムとの反応では1,4-付加体はまったく生成せず,1,2-付加体のカルビノール体からの脱水生成物に対応する共役オレフィン体が得られ,反応性の低い臭化シクロヘキシルマグネシウムとの反応は1,4-共役付加体のみを与えた。これら各反応の生成物の生成経路についても考察した。
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