【目的】
高齢者の心身機能やADLを維持,向上させるには,活動量を増やすことが重要といわれている.加えて,廃用症候群を予防し,健康寿命を延伸させるには積極的な運動が必要であると考える.しかし,筆者の所属する株式会社が運営するデイケア(当デイケア)では,臥位や座位で活動性の低いプログラムを提供していることが多かった.そこで,デイケア中の活動量を増加させる必要性を考慮したため,セラピスト,介護職員の役割,プログラム内容を再検討する取り組みを行った.ここでは,この取り組みを紹介し,その効果について検討した結果を報告する.
【方法】
まず,職員や利用者へのヒアリングやサービス提供の実際を確認し,現状を把握した.そこで主な問題点として,デイケア中の利用者の活動量が少ないことが考えられた.
次に,問題解決のため,利用者の活動量を増加させることに焦点を当てたサービス内容の改良に取り組んだ.
1. プログラム内容の改良
既存のプログラムに有酸素運動や筋力増強練習,ADL練習,手工芸などを追加した.各プログラムは40分の活動で構成され,利用者は1日に3種類のプログラムを実施することとし,平成29年10月より新しいプログラムを実施した.
2.各職員の役割再考
セラピストは評価,プログラム立案,リスク管理,介護職員と利用者への指導を中心に行うこととした.介護職員は介護業務に加えて,新しいプログラムを提供するようにした.
取り組みの効果検証のため,Timed up & go test(TUG)とBarthel Index(BI),改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の変化について取り組み前後の結果を比較,検討した.測定は取り組み開始時と3ヵ月後に行った.対象はデイケアの利用者59名(82.36±8.21歳,女性41名,男性18名,平均利用期間49.98±50.05ヵ月)であった.
統計学的検討として,取り組み前後の結果に対して対応のあるt検定を行った.
【結果】
TUGは取り組み後(18.56±17.72秒)が,取り組み前(20.41±16.72秒)よりも有意に短くなった(p<0.05).BIは取り組み後(82.29±19.10点)が,取り組み前(79.83±17.14点)よりも有意に高くなった(p<0.05).HDS-Rは取り組み後(24.07±5.71点)が,取り組み前(23.03±6.14点)よりも有意に高くなった(p<0.05).
【結論】
本取り組みによって,TUGとBI,HDS-Rが改善した.デイケアにおいても,活動量を増やすことは,歩行能力やADL,認知機能の改善に影響を及ぼすことが示唆された.
しかし,この結果には,セラピストによる指導と介護職員や利用者のデイケアに対する考え方の変化も影響があったと考える.したがって,今後はその他の各関連要因の影響を調査していく.
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には,得られた情報は個人を特定できない状況で集計し,集計結果は回答者個人を特定できない状況で,分析し,その後は破棄するため,第三者に漏洩することはない旨を説明した.加えて,本研究の目的を十分に説明し同意を得た.
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