酵母 (
Candida antarctica T-34株) を用いた糖脂質型バイオサーファクタント (マンノシルエリスリトールリピド, MEL) の生産において, 天然油脂以外の利用可能な基質を調べるため, 各種炭化水素類からのバイオサーファクタント生産を休止菌体条件下で検討した。
MELの生産収率は用いる基質に大きく依存していた。MELは, 1-アルケン, 2-アル
カノー
ル, 2-アルカノンから著量生産された。2-アル
カノー
ルや2-アルカノンを基質に用いた場合, 同じ炭素鎖長を持つ1-アル
カノー
ルを用いた場合よりも高いMELの収率が得られた。2-テトラデ
カノー
ルを用いた場合に最も高い収率が得られ, 30g/L以上のMELが生産された。次に, 生産されたMELの脂肪酸組成を調べたところ, 同じ炭素鎖長を持つ2-アル
カノー
ル, 2-アルカノンから得られたMELの脂肪酸組成にはほとんど差が見られなかった。これに対して, 2-アルカノンと3-アルカノンから得られたMELでは, その脂肪酸組成に大きな違いが認められた。
これらの実験結果から, 本酵母ではMELを生産するために, 2-アル
カノー
ルから脂肪酸への変換に, アルカン資化性菌ではあまり報告のない非末端酸化系 (2級アルコール脱水素酵素, Baeyer-Villiger酸素添加酵素, エステラーゼからなる反応経路を含む) が機能しているものと推定された。このようなBaeyer-Villiger型の酸化反応を含む非末端酸化系が関与するバイオサーファクタントの生成はこれまでに例がなく, 本研究により初めて確認された。
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