新注射用
カルバペネム系抗生物質
biapenem (BIPM) について外科領域における基礎的・臨床的検討を行った。
外科臨床分離株
Staphyloceccus aureus (27株), Coagulase-negative
Staphylococcus (27株),
Escherichia coli (27株),
Klebsiella pneumoniae (27株),
Enterobacter cloacae (27株),
Pseudomonas aeraginosa (27株) についてBIPMの抗菌力を日本化学療法学会標準法に従い10
6cells/ml接種で, imipenem (IPM), panipenem (PAPM), meropenem (MEPM), ceftazidime (CAZ) およびpiperacillin (PIPC) を対照薬として最小発育阻止濃度 (MIC) を測定した。
本剤の
S. aureus, E. coli, K. pneumeniae, E. cloacaeに対するMIC
90はすべて1.56μg/mlであり, IPMとほぼ同等, CAZ, PIPCと比べ優れた抗菌力を示した。CNSのMIC
90は100μg/mlであり他剤と同様抗菌力は弱かった。
P. aeruginosaでのMIC
90は25μg/mlで対象薬のうち最も優れた抗菌力を示した。
体液組織移行については, 総胆管結石術後T-tube挿入症例で同意の得られた肝機能正常な4例に本剤300mgを30分かけて点滴静注し, 経時的に血液および胆汁を採取し, 濃度測定を行った。
血漿中移行は, 点滴終了直後, 30分, 1時間, 2時間, 4時間後のそれぞれの値は33.1±22.4, 9.0±2.3, 5.8±2.3, 2.4±1.4, 0.9±0.3μg/ml (Mean±SD) であった。胆汁中移行は, 点滴終了直後, 30分.1時間, 2時間, 4時間後のそれぞれの値は4.1±4.7, 5.7±6.1, 4.5±4.4, 2.0±1A, 0.6±0.3μg/ml (Mean±SD) であった。
臨床的検討は, 本剤投与の同意の得られた外科領域感染症14例 (腹膜炎9例, 腹壁膿瘍1例, 胆管炎1例, 胆嚢炎1例, 肺炎2例) に本剤1回300mg, 1日2回投与を行った。
臨床効果は著効7例, 有効5例, やや有効1例, 判定不能1例であった。有効率は12/13 (92.3%) であった。本剤に起因すると思われる自他覚的副作用および臨床検査値異常は全例に認められなかった。以上より本剤は外科領域感染症に対する, 高い有用性が示唆された.
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