インターネット技術の発達に伴い、人々の情報接触の方法は多様化している。一方で、ネット空間で流通する政治情報に関しては、フェイクニュース、エコーチェンバーといった問題が深刻化している。こうした環境下における人々の情報接触は、世界各地で政治的分断に繋がることが危ぶまれており、日本も決して他人事ではない。本プロジェクトでは、日本における人々の政治コミュニケーションの現在位置について、政治情報接触の方法や経路を明らかにする調査を行った。調査データを分析した結果、若年層の「新聞離れ」が再確認されたほか、人々が日常生活上のルーティンとしてニュースに接触する傾向は認められるものの、それは定時や余暇にテレビをつける、ポータルサイトを見るといったレベルにとどまり、SNSを通じて能動的に情報を取得する者は、どの世代においてもかなり少ないことなどが明らかになった。情報流通の始めから終わりまでをワン・パッケージで管理することが難しくなった今、民主主義のアリーナとしてあるべき政治コミュニケーション空間のガバナンスについて、官民を超えた議論を始める必要性が高まっている。
抄録全体を表示