モン
シデムシ亜科のモンシデムシ属とコクロシデ
ムシ属はともに小型脊椎動物の死体を子供の餌として繁殖を行う甲虫である。しかし,この2属の繁殖様式は大きく異なり,モン
シデ
ムシ属は見つけた死体を土の中に埋めて,巣を作り,子供が育つまで世話をするが,コクロ
シデ
ムシ属は死体近くの土中に卵を産むだけで繁殖を行っているといわれている。これらの繁殖様式の異なる2属の時空間的分布を知るため,この2属が同所的している地域において,各属各種の季節消長と環境選好性をベイトトラップを用いて調べた。本調査地(多摩森林科学園と横浜自然観察の森)には3種類のモン
シデ
ムシ属(マエモン
シデ
ムシ,ヨツボシモン
シデ
ムシ,クロ
シデ
ムシ)と1種のコクロ
シデ
ムシ属(コクロ
シデ
ムシ)が生息していた。モン
シデ
ムシ属の3種はいずれも管理されていない森林で個体数が多かったが,季節消長のピークはそれぞれ異なっていた。コクロ
シデムシの季節消長はクロシデ
ムシと同調していたが,モン
シデ
ムシ属の生息数が少ない管理された森や林縁に多く生息していた。ヨツボシモン
シデ
ムシは野外の発生消長と室内実験で調べた繁殖活動消長に有意な同調性がみられ,マエモン
シデ
ムシにおいてもその傾向がみられた。しかし,クロ
シデムシとコクロシデ
ムシはその傾向がみられず,季節を通じて死体を与えれば繁殖活動を行った。これらの結果から,本調査地のモン
シデ
ムシ属の各種は時間的にすみわけており,繁殖季節が同調するクロ
シデ
ムシ(モン
シデ
ムシ属)とコクロ
シデ
ムシ(コクロ
シデ
ムシ属)は空間的にすみわけていると考えられた。
抄録全体を表示