フェノールアゾピラ
ゾロ
ン誘導体は溶液中と結晶状態とでは色調が異なる。今回は可視吸収スペクトルを,結晶型に変化が起きないよう種々条件を検討しながら,塩化カリウム錠剤中で測定した。この吸収スペクトルと溶液中でのスペクトルとの違いを調べるため,フェノール基の中の置換基が吸収最大位置におよぼす効果の差を,両状態聞で比較検討してみた。そして,差の原因を赤外吸収スペクトルによって得られる官能基の挙動と結びつけることにより広い意味での構造と色調との関係を明らかにすることができた。フェノール核中のOH基がヒドラゾン基と強い水素結合をしている化合物類では最大吸収位置λ
maxは,フェノール核中の置換基のHammettのσ定数が増大するにつれて短波長から430mμに収敷する。OH基がヒドラゾン基と水素結合をしていない化合物類では,λ
maxはσが増加するにつれて,短波長側に移動しOH基をもたないベンゼンアゾピラ
ゾロ
ン誘導体の場合と同じであった。λ
maxとOH伸縮振動数λ
maxとC=O伸縮振動数,との関係においても,上記二つのものを区別して考えることができた。したがって,OH基がヒドラゾン基と水素結合するか,否かによって,フェノール核中の置換基が色調におよ曝す影響は異なっているといえる。
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