ダイヤモンド
は、窒素を多く含むI型と窒素を殆ど含まない_II_型に大別される。グレーディングに供される無色~ほぼ無色の宝石質天然
ダイヤモンド
は、ほとんど(99%以上)が_I_型である。_II_型に属する
ダイヤモンド
には、一部の天然
ダイヤモンド
の他、HPHT処理により褐色から無色(ごく一部のピンク及びブルー)化されたものや、高温高圧法およびCVD法による多くの合成
ダイヤモンド
が含まれている。このため、鑑別ラボでは、ルーティン・ワークにおいて、
ダイヤモンド
・シュア(DiamondSure®)、ケープ・ディテクター(CapeDetector)等の専用機器やFTIRなどの分析において、グレーディングに供されるすべての
ダイヤモンド
のタイプ分別を行っている。このタイプの粗選別において、_II_型と判断された
ダイヤモンド
は、さらにラマン分光分析装置を用いたフォト・ルミネッセンス分析や
ダイヤモンド
・ビューによる観察等、より高度な分析を必要とする。しかしながら、ラマン分光装置はコスト面や操作性において難点があり、国内においては一部の鑑別ラボにしか導入されていない。
今回紹介するDTC「DiamondPlusTM」は、このフォト・ルミネッセンス分析を行う前の予備的な検査を簡易的に行うために、DTCにより開発された_II_型
ダイヤモンド
の専用分析機器である。装置の外形は、新型の
ダイヤモンド
・シュアとほぼ同形でコンパクトに設計されている。測定は、装置内のプールに液体窒素を満たして、サンプルをセットし、測定ボタンを押すだけのきわめてシンプルなもので、数秒で分析結果が表示される。「PASS(天然
ダイヤモンド
である)」と表示されたものは、天然
ダイヤモンド
の確証が得られたもので、さらなる検査を必要としない。「REFER(フォトルミネッセンス分析が必要である)」と表示されたものは、この分析においては天然の確証が得られなかったもので、フォト・ルミネッセンス分析を必要とする。さらに、合成
ダイヤモンド
の確証が得られた場合には、「SYNTHETIC(合成
ダイヤモンド
である)」もしくは「SYNTHETIC-CVD(CVD合成
ダイヤモンド
である)」の表示がなされる。
本研究では、中央宝石研究所のルーティンに入ってきた
ダイヤモンド
や、中央宝石研究所、全国宝石学協会が所有するHPHT処理された
ダイヤモンド
、合成
ダイヤモンド
等、さまざまなサンプルを用いて、このDiamondPlusTMの有効性について検討した。
結果、このDiamondPlusTMではHPHT処理を施した
ダイヤモンドや高温高圧法で合成されたダイヤモンド
にはすべて「REFER(フォトルミネッセンス分析が必要である)」の結果を得ることができ、CVD法で合成された
ダイヤモンド
についても「SYNTHETIC-CVD(CVD合成
ダイヤモンド
である)」の結果を得ることができた。天然
ダイヤモンド
についてはカラーグレードの低いものについては「REFER」という結果が出るものも多く存在するが、予備検査として用いるには十分な性能を備えていることがわかった。
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