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クエリ検索: "トウヒ"
3,263件中 1-20の結果を表示しています
  • 斎藤 雄一, 玉利 長三郎, 佐々木 清二, 平野 武彦, 谷口 三佐男
    日本林學會北海道支部講演集
    1962年 11 巻 1-7
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル フリー
    さきに,モミ属および五葉松類の植栽試験について報告したのであるが,ひきつづいてオウシュウ
    トウヒ
    の植栽成績をとりまとめた。
    トウヒ
    類の導入試験はストローブマツなどとおなじように1908年来試験地が設定され,オウシュウ
    トウヒ
    (Picea Abies KARST.)のほかに小面積試験地としてカナダ
    トウヒ
    (P.canadensis B.S.P.),エンゲルマン
    トウヒ
    (P. Engelmanii ENGELM.),朝鮮ハリモミ(P. koraiensis NAKAI)プンゲンス
    トウヒ
    (P. pungens ENGELM.),シトカ
    トウヒ
    (P. sitchensis CARR.)の植栽記録があり,とくにオウシュウ
    トウヒ
    は郷土樹種であるエゾマツ(P. jezoensis CARR.),アカエゾマツ(P. Glehnii MAST.)よりはるかに多く200ha以上に植栽された。オウシュウ
    トウヒをのぞく他のトウヒ
    類は生育が悪く,カナダ
    トウヒ
    がわずかに残在するだけで,すべて枯損消滅している。オウシュウ
    トウヒ
    は1940年ぐらいまでの植栽記録があり,なかでも,もつとも多く植栽されたのは大体1930年ぐらいまでで,この頃からトドマツ(Abies sachalinensis MAST.)エゾマツ植栽が多くなつている。この事情については,種子が南方系だつたとか,手当り次第にどこでも植えたために成績が悪かつたということがいわれているが,このオウシュウ
    トウヒ
    を植えていない時期が第2次大戦中で,この時期の植栽面積もそれほど多くないこともあつて,現在では,不成績の原因をただす資料はない。そのご1954年に発生した15号台風や1956〜57年にかけての寒害では樹高10^mにも達するものまで,場所によつては全林被害をうけ,これらの被害木には2次的な虫害なども発生したので,残存するものも大半が伐採または伐採予定となつている。調査にあたり,御援助をいただいた演習林長宮脇恒教授,測定を手伝つていただいた現地派出所職員の方々にあつく感謝の意を表します。
  • 逢沢 峰昭, 勝木 俊雄, 梶 幹男
    分類
    2002年 2 巻 2 号 77-78
    発行日: 2002/08/31
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー
  • 門田裕一
    植物研究雑誌
    2007年 82 巻 5 号 259-265
    発行日: 2007/10/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    広島県庄原市東城町の帝釈台 (石灰岩地)から1新種タイシャク

    トウヒ
    レン Saussurea kubotae Kadotaを記載した.タイシャク
    トウヒ
    レンは茎に翼(ヒレ)があり (Figs. 1-2),総苞片が圧着する(Fig. 3)点でセイタカ
    トウヒ
    レンに似ているが,総苞片が13列と多く,頭花の柄がより長くやや開出気味に伸びるので総状花序が疎らに見え(Fig. 2),一見して異なることが分かる.その他にタイシャク
    トウヒレンはセイタカトウヒ
    レンと次のような特徴で区別される:(1)総苞は倒卵形で長さ約2cm,(2)下部の茎葉が矛形になること, (3)頭花の柄には小型の苞葉が多数着き,(4)葯は長さ6.5-7mm,(5)痩果は長さ6-7mmである.タイシャク
    トウヒ
    レンでは茎の翼がさらに著しく,茎の下部では幅5mmに達するほか,総梗にも翼が発達する.また,茎葉の鋸歯もより低平である.

     広島県帝釈台ではタイシャク

    トウヒレンとセイタカトウヒ
    レンの2種が同所的に生育することが明らかになった.この2種は花期がずれており(タイシャク
    トウヒ
    レンの方が早い),両種の中間型が見いだされなかったので種間の交雑は起こっていないらしい.岡山県真庭市の蒜山南麓にもセイタカ
    トウヒ
    レンが知られているが,ここにはセイタカ
    トウヒ
    レンのみが見いだされた.

  • 門田 裕一
    植物研究雑誌
    2023年 98 巻 1 号 1-12
    発行日: 2023/02/20
    公開日: 2023/02/20
    ジャーナル 認証あり

    キク科

    トウヒ
    レン属において,北海道からツルイトウ ヒレンSaussurea yachiyotakashimana Kadota,本州から
    オヌカトウヒレン
    S. ochiaiana Kadotaと
    トヨグチトウヒレン
    S. toyoguchiensis Kadota の3 新種を記載した. ツルイ
    トウヒ
    レン(基準産地:北海道阿寒郡鶴居村)は頂生の花序が複散房状となり,筒形の総苞をもつ頭花を多数つけ,茎や葉の下面に腺点があって粘る点でコンセ
    ントウヒレン
    S. hamanakaensis Kadota とススヤアザミS. duiensis F.Schmidt に似る.ツルイ
    トウヒ
    レンは①枝は広角度に伸長して先端が下垂し,②茎葉が長さ15–30 cm とより長く,③総苞中片と外片に紫色の縁取りを欠く点でこれらの2 種と異なる.ツルイ
    トウヒ
    レンは林下 の湿地に生える植物である. オヌカ
    トウヒ
    レン(基準産地:広島県庄原市東城町多飯が辻山)は狭筒形の総苞をもつ小型の頭花を散房状 につけることで,
    キリガミネトウヒレン
    S. kirigaminensis Kitam.とネコヤマヒゴタイS. modesta Kitam.に似るが, ①横走する長さ10 cm にもなる太い地下茎をつけ,②経 年個体では複数の花茎をこの地下茎から立ち上げ,花茎の枝は広角的に長く伸長し,③葉がやや肉質で鈍い光沢がある点で異なる.さらに,オヌカ
    トウヒレンはキリガミネトウヒ
    レンからは④総苞外片が狭卵形で先端は短く伸び,⑤茎葉の鋸歯は低平である点で異なり,ネコヤマヒゴタイからは⑥頭花が無柄で,⑦湿地に生える点で異なる.オヌカ
    トウヒ
    レンは蛇紋岩植物であり,また同時に湿地の植物でもある. トヨグチ
    トウヒ
    レン(基準産地:長野県下伊那郡大鹿村豊口山)は小型の多年草で,花期に根出葉が生存し,頭花 が普通単生することなどで,シラネヒゴタイS. kaialpina Nakai に近い.しかし,トヨグチ
    トウヒ
    レンは,①総苞は筒形で緑色,長さ10–12 mm,直径5–6 mm となり, ②総苞片はやや革質,外片は紫色の縁取りを欠き,③根出葉と下部の茎葉の葉身は粗い鋸歯縁となり,④痩果がより長い点でシラネヒゴタイと異なる.トヨグチ
    トウヒ
    レンは石灰岩植物である.

  • —ケヤキ林縁からの距離と幼樹密度との対応関係—
    國崎 貴嗣, 小川 瑞樹
    東北森林科学会誌
    2009年 14 巻 2 号 43-49
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    ケヤキ幼樹が高密度で生立している,オウシュウ
    トウヒ
    (以下,
    トウヒ
    )強度間伐人工林1林分(1.1ha)を対象に,ケヤキ林縁からの距離が
    トウヒ
    人工林内の局所的なケヤキ幼樹密度に及ぼす影響を調査した。間伐された
    トウヒ
    人工林と無間伐の広葉樹天然生林(1.2ha)は,ケヤキ林冠木にほぼ同様に隣接しているにも関わらず,
    トウヒ
    人工林内のケヤキ幼樹密度が有意に高かった。これは,間伐・集材作業による林床撹乱と林内光量の増加が主な要因と考えられる。
    トウヒ
    人工林内のケヤキ幼樹密度は,ケヤキ林縁から離れるほど,低かった。ただし,ケヤキ林縁から近い範囲でも,ケヤキ幼樹密度は2,220〜16,250本/haと,局所的に大きく異なると推定される。
  • *田村 明, 生方 正俊, 渡邉 敬治, 山田 浩雄, 福田 陽子, 矢野 慶介, 織田 春紀
    日本森林学会大会発表データベース
    2014年 125 巻 E04
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    アカエゾマツを雌親、ヨーロッパ
    トウヒを雄親としたハイブリッドトウヒ
    は初期成長が優れ、下刈りコスト低減に貢献できる樹種として期待されている。しかし、ハイブリット
    トウヒ
    を介在し、自生種のアカエゾマツの遺伝構成が変化する恐れがある。本研究では移入交雑の各プロセスを検証し、そのリスクを評価した。ハイブリッド
    トウヒ
    は開花能力が十分あり、開花時期は両親種と同調した。またアカエゾマツを雌親、ハイブリッド
    トウヒ
    を雄親とした人工交配で得た苗木は成長量および生存率も高く、北海道の環境に適応できる可能性が示唆された。さらに父性遺伝する葉緑体のハプロタイプからアカエゾマツとハイブリッド
    トウヒ
    との間に自然交雑が起きていることが明らかにされた。以上の結果から、将来ハイブリッド
    トウヒ
    を造林・普及することによって自生種のアカエゾマツにヨーロッパ
    トウヒ
    の遺伝子が移入し、アカエゾマツの遺伝構成が変化する可能性があり、その影響について検討する必要があると考えられた。
  • 清水 満子
    植物分類,地理
    1977年 28 巻 1-3 号 35-44
    発行日: 1977/04/30
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    トウヒレン属トウヒ
    レン節の8種2亜種について核型分析を行った.(1) 染色体数はすべて 2n=23 であった.しかし,シラネアザミ (白根山産 2 株,美ヶ原産 1 株) およびセンダイ
    トウヒ
    レン (不忘山 1 株) に B 染色体が観察された.B 染色体は個体および核板によってその数が異なり,2〜12本観察された.(2) 核型分析の結果,染色体の大きさは最大が約 5μ,最小が約 2μであった.大型の 2 対 (第 1〜2 染色体) と小型の 2〜3対 (第11〜13染色体) は区別し得たが,残りの中位の染色体は連続的で識別がやや困難であった.(3) 第 1 染色体が median 型であり,第 2 染色体が submedian 型であること,および第13染色体が terminal 型であることは今回分析したどの種の核型にも共通している.(4) しかし,第 3〜12染色体については median 型,submedian 型,subterminal 型,terminal 型の10対における構成比が種によって異なっている.median 型を 4 対もつものはコウシュウヒゴタイで,submedian 型を 3 対もつものはキクアザミとホクチアザミ,subterminal 型を 5 対もつのはヤハズヒゴタイで,tereminal 型を 6 対もつのはセンダイ
    トウヒ
    レンである.またsatellite chromosomes はオオダイ
    トウヒ
    レン,センダイ
    トウヒ
    レン,アサマヒゴタイ,セイタカ
    トウヒ
    レンに 1 対ずつ,キクアザミ,コウシュウヒゴタイに 2 対観察された.(5) (3) と (4) から判断すると,ホクチアザミとキクアザミの核型,およびタカオヒゴタイとアサマヒゴタイの核型がよく似ており,オオダイ
    トウヒレンとセンダイトウヒ
    レンの核型や,オオダイ
    トウヒ
    レンとアサマヒゴタイの核型はむしろやや異なっていると言える.(6) コウシュウヒゴタイは median 型染色体が多く,外部形態と同様,核型の点でも多種と可成り異なっている.またセイタカ
    トウヒ
    レンは外部形態に特殊性があるが,核型は第 2 染色体が suberminal に近いことを除いて著しい特性は認められない.
  • *小岩 俊行, 蓬田 英俊, 高橋 健太郎, 阿部 豊
    日本林学会大会発表データベース
    2004年 115 巻 P4008
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    1999年10月,岩手県江刺市にあるドイツ
    トウヒ
    (Picea abies Karst.)列状植栽林の枯死木にマツノマダラカミキリの寄生が確認された。その後,材片調査を行ったところ,複数の枯死木からマツノザイセンチュウが確認された。マツ材線虫病によるドイツ
    トウヒ
    の被害はこれまで,によって単木的な枯死事例が報告されているが,林分での発生は報告がみられない(海老根ら,1981)。また,ドイツ
    トウヒ
    がアカマツ,クロマツの被害拡大に関与する可能性も考えられた。そこで,ドイツ
    トウヒ
    林で発生した被害の実態を調査した。調査したドイツ
    トウヒ
    林では,発生した枯死木約150本のうち,42%にマツノマダラカミキリが,20.5%にマツノザイセンチュウが寄生していた。寄生が確認されたドイツ
    トウヒ
    枯死木は,健全木に比べ,サイズが小さかった。しかし,この林分は防風林で列状に植栽されているため,被圧のみによって枯死した可能性は極めて低い。また,マツノザイセンチュウおよびマツノマダラカミキリが確認された個体の一部は明らかに大きく,被圧は受けていないと考えられる。したがって,ドイツ
    トウヒ
    林に発生した枯死木の発生原因は,マツ材線虫病によるものと判断された。これまで,マツノザイセンチュウを接種したドイツ
    トウヒ
    は枝枯れ症状のみで枯死木が発生しなかった(小倉ら,1983)。今回,苗木で低率ながら枯死木の発生が確認された。また,加温乾燥条件により枯死木が発生した。これらのことから,ドイツ
    トウヒ
    は加温,乾燥など何らかのストレス下で枯死に至る可能性が高くなるのではないかと考えられた。マツ材線虫病によって枯死したと考えられるドイツ
    トウヒ
    から羽化脱出したマツノマダラカミキリは,体内に少数ではあるがマツノザイセンチュウを保持していることが確認された。また,放虫試験によりマツノマダラカミキリは,ドイツ
    トウヒ
    を比較的好んで後食することも確認された。今後,ドイツ
    トウヒ
    とマツノザイセンチュウ,マツノマダラカミキリの関係,マツ類被害拡大に及ぼすドイツ
    トウヒ
    の影響など確認する必要があるのではないかと思われる。
  • *野堀 嘉裕, 瀧 誠志郎, ロペス ラリー, 武田 一夫, 石田 祐宣
    日本森林学会大会発表データベース
    2014年 125 巻 P2-111
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    モンゴル北部フブスグル地方の森林には主要樹種としてカラマツと
    トウヒ
    が生育している。この地域では自然発火の山火事が頻繁に発生することが知られている。山火事跡地では天然更新により長い時間をかけて森林が再生していくが、個々の樹木の成長速度はほとんど知られていない。本研究では、山火事跡地の森林の再生を予測するために、樹幹解析と軟X線デンシトメトリーを組み合わせたシステムを利用して肥大成長、樹高成長、材積成長および重量成長経過を調査した。その結果、肥大成長と樹高については当初カラマツの成長が
    トウヒ
    を上回っているが、約100年を経過した時点で
    トウヒ
    がカラマツを追い越し、以後この傾向が200年生時点に至るまで変わらないことがわかった。材積成長と重量成長については200年生時点に至るまでカラマツの成長が
    トウヒ
    を上回っているが、次第にカラマツと
    トウヒ
    の差が小さくなることがわかった。これらの結果から、山火事後にカラマツと
    トウヒ
    が同時に天然更新をスタートしたとすれば、当初はカラマツが上層林冠を占め優先種となるが、約100年でカラマツと
    トウヒ
    の混交林となることが予測された。
  • 門田裕一
    植物研究雑誌
    2009年 84 巻 3 号 177-183
    発行日: 2009/06/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    トウヒ
    レン属(キク科)の1新種,
    フボウトウヒレン
    Saussurea fuboensis Kadotaを記載した.フボウ
    トウヒ
    レンはシラネアザミS. nikoensis Franch. & Sav.に近縁であるが,以下のような特徴で区別される.①頭花はより小さく,筒状で,複散房花序につき,②小花の広筒部は長さ約1 mm,③茎には翼があるが,幅狭く目立たず,④茎葉の葉身は広卵形,⑤総苞片は斜上し,⑥総苞外片は狭卵形で基部で幅2 mmとなる.

     フボウ

    トウヒ
    レンは奥羽山脈南部(船形山系,蔵王山系,吾妻連峰,磐梯山)に分布し,高山帯の草原やハイマツやミヤマハンノキを主体とする灌木林の林縁に生える.奥羽山脈南部では低所に
    センダイトウヒレン
    S. sendaica Franch. (= S. nipponica Miq. subsp. sendaica (Franch.) Kitam.)が生育し,両種は垂直的に棲み分けている.

     フボウ

    トウヒ
    レンの存在自体は以前から知られており,イワテヒゴタイS. brachycephala Franch.(Kitamura 1935, 1937, 山形縣植物誌 1934,山形県の植物誌 1972,新版山形県の植物誌 1992, 宮城県植物目録 1935, 白石市植物誌 1983, 宮城県植物目録2000 2001など)やミヤマキタアザミS. franchetii Koidz.(Kitamura 1935, 1937, 山形縣植物誌 1934,山形県の植物誌 1972,新版山形県の植物誌 1992, 宮城県植物目録 1935, 白石市植物誌 1983, 宮城県植物目録2000 2001など),あるいは
    クロトウヒレン
    S. sessiliflora (Koidz.) Kadota, stat. nov. [ = S. nikoensis var. sessiliflora (Koidz.) Kitam.](福島県植物誌 1987,馬場ら 1988)などと混同されてきた.しかしながら,フボウ
    トウヒ
    レンはこれらの3種とは次のように異なる.イワテヒゴタイは,総苞は筒形,総苞外片は狭長卵形,内片より長く,圧着し,茎葉は長卵形で葉柄に明瞭な翼がある点でフボウ
    トウヒ
    レンと異なる.イワテヒゴタイは岩手県岩手山と早池峰山の固有植物である.ミヤマキタアザミでは総苞は鐘形でクモ毛が多く,総苞外片は長卵形で基部は幅広く,内片と等長あるいは長く,斜上し,頭花の柄が短いため頭花が密集する傾向がある.ミヤマキタアザミは東北地方日本海側の山地(秋田駒ケ岳,焼石岳,月山,朝日連峰)に分布する.イワテヒゴタイとミヤマキタアザミは共に総苞片は5列で,頭花の基部に長い苞葉がある点でもフボウ
    トウヒ
    レンと異なっている.

     一方,クロ

    トウヒレンは総苞片はフボウトウヒ
    レンと同じく6列であるが,総苞は球状鐘形で,総苞外片はさらに幅広く(基部で幅3-4 mm),頭花の柄が短く頭花が密集することでフボウ
    トウヒ
    レンと区別される.クロ
    トウヒ
    レンは中部地方北部にかけての日本海側山地(頸城山地,飛騨山脈,白山)に分布する.

     上野雄規氏(白石市),高橋和吉氏(大崎市),葛西英明氏(仙台市),杉山多喜子氏(名取市),加藤信英氏(鶴岡市),高橋信弥氏(東根市),土門尚三氏(遊佐町),蓮沼憲二氏(会津若松市)の方々には現地調査の案内をしていただくとともに,国立科学博物館維管束植物標本庫 (TNS) に標本並びに生態写真をご寄贈いただきました.ここに記して感謝の意を表します.

  • 勝木 俊雄, 長池 卓男, 西川 浩己, 田中 智, 岩本 宏二郎
    森林総合研究所研究報告
    2019年 18 巻 1 号 101-109
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    八ヶ岳連峰東斜面の山梨県北杜市の県有林において、絶滅危惧種ヤツガタケ
    トウヒ
    の保全のため、1ha の試験地を設置し、2005年と2017年に調査をおこなった。この期間中、生存幹本数が2,755本から 1,248本に減少、胸高断面積合計(BA) が 30.0m2 から 31.4m2 に微増、出現樹種の分類群が37から29に減少した。ニホンジカの被害によって、幹本数と出現樹種数が減少したと考えられた。ヤツガタケ
    トウヒ
    は、2005年に樹皮ガードを取り付けたことで、母樹サイズの胸高直径20cm 以上は42本から36本の減少にとどまった。しかし、若木サイズの胸高直径20cm 未満が8本から2本に低下し、後継樹が見られないことから、自生地保全のために苗木の増殖が必要と考えられた。
  • 佐藤 清左衛門, 坂本 武
    日本林学会誌
    1976年 58 巻 1 号 6-10
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2008/12/18
    ジャーナル フリー
    前報 (1) に引き続き観測を行なった結果,閉鎖直前,閉鎖開始という微妙な閉鎖進行過程でも明らかにその違いを認めうる気象因子のあることがわかった。それは地表面の温度と風速であった。
  • 門田裕一
    植物研究雑誌
    2008年 83 巻 5 号 284-294
    発行日: 2008/10/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    青森県六ケ所村からムツ

    トウヒ
    レン Saussurea hosoiana Kadota を記載した. ムツ
    トウヒ
    レンは花期にも根生葉が生存することが最も著しい特徴で, しかも海岸に生えるために葉が革質で光沢があることも他の種から区別する良い特徴である. ムツ
    トウヒ
    レンの硬い葉質は北海道・夕張岳と日高山脈北部のチロロ岳高山帯の蛇紋岩地に生育するユキバヒゴタイ S. chionophylla Takeda を思わせる. 根生葉が花期に生存し, 花床に剛毛を有することなどの特徴からムツ
    トウヒ
    レンはモリヒゴタイ節 Sect. Rosulascentes (Kitam.) Lipsch.に所属することになる. この節は朝鮮北部に分布するが, その中では咸鏡北道と平安北道に分布するモリヒゴタイ S. diamantiaca Nakai がムツ
    トウヒ
    レンに最も近い. ムツ
    トウヒ
    レンはモリヒゴタイから次のような形質で区別される. (1)茎にははっきりした茎葉があり (花茎状 scapose とはならない), 翼がある. (2)茎はよく分枝して側生の花序を多数つける. (3)葉は革質で, 厚く, 光沢があり, 広卵形, 背軸面にクモ毛がない. モリヒゴタイを始めとしてオクヤマヒゴタイ, ウラジロヒゴタイなどモリヒゴタイ節の種は朝鮮北部に分布し, いずれもはっきりと花茎状になる. このため, ムツ
    トウヒ
    レンをこの節に入れることには疑問が残るが, 現段階ではこのような処置としておきたい. ムツ
    トウヒ
    レンの属内での位置の確定は今後の課題である.

     ムツ

    トウヒ
    レンは六ケ所村物見崎の, 太平洋に面したクロマツ疎林内に生育する. このクロマツ林は高さ 5 m ほどで低木層を欠いていた. このため, 海からの強風の影響をまともに受け, 風衝地の環境に相当するものと思われる. 本植物の頑丈な体のつくり, とくに植物体の割に太い茎や革質の根生葉の葉身はこの生育環境に適応したものとみなすことができる. なお, 大陸のモリヒゴタイ節の種は山地の植物で, 葉質は日本産のトガヒゴタイやナンブ
    トウヒ
    レンのような洋紙質で, 標高1000 m 以上の夏緑林内に生育する.

     八戸市からはハチノヘ

    トウヒ
    レン S. neichiana Kadota を記載した. ハチノヘ
    トウヒレンはナンブトウヒ
    レン S. sugimurae Honda から次のような特徴で区別される. (1)総苞片は 8 列で, 鋭角的に斜上するかあるいは圧着する. (2)総苞外片は長卵形で, 先端は鋭形となり, 尾状に長く伸長しない. (3)茎にはよく発達した翼があり, 鋸歯縁となることがあり, (4)葉が革質となる. この他に, 頭花の柄は短くかつ鋭角的に伸長する傾向がある. また, 葉身は長卵形となるが, 青森県産のナンブ
    トウヒ
    レンもそのような形になるので, この点では区別できない.

     ハチノヘ

    トウヒ
    レンは八戸市の太平洋に面した海岸沿いの風衝草原に生育し, 革質の葉もこのような環境への適応形態と考えられる.

     なお, ナンブ

    トウヒ
    レンはこれまで総苞片が 8列と記載されてきた (例えば Kitamura 1937, 北村1981). しかし, タイプ標本を再検討した結果,  6列であることを確認している. また, トガヒゴタイとナンブ
    トウヒ
    レンはこれまで混同されてきたり, あるいは同一視されることが普通であった. しかし, トガヒゴタイはクモ毛の多い総苞, 開出する総苞片, 卵形の茎葉をもつことで特徴付けられ, 総苞にクモ毛が少なく, 総苞片が斜上し, 茎葉がやや矛形になるナンブ
    トウヒ
    レンと異なる. また両者は分布域にも違いがある. すなわち, トガヒゴタイは山形, 秋田, 青森 (津軽地方, 下北半島北部) の各県に分布し, 日本海側に偏った分布を示す. これに対して, ナンブ
    トウヒ
    レンは青森 (三八地方) と岩手県に分布し, 分布域は太平洋側に偏る.

     東京大学大学院理学系研究科附属植物園教授 邑田 仁氏にはナンブ

    トウヒ
    レンのタイプ標本画像を送付していただきました. また, 細井幸兵衛氏 (青森市), 根市益三氏 (八戸市), 嶋 祐三氏 (つがる市), 工藤安昭氏 (深浦町), 佐藤石夫氏 (深浦町), 神 真波氏 (青森県立郷土館) には現地調査の案内をしていただくとともに, 国立科学博物館維管束植物標本庫 (TNS) に標本並びに生態写真をご寄贈いただきました. ここに記して感謝の意を表します.

  • 勝木 俊雄, 明石 浩司, 田中 智, 岩本 宏二郎, 田中 信行
    森林立地
    2008年 50 巻 1 号 25-34
    発行日: 2008/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    マツ科
    トウヒ
    属の樹木であるヤツガタケ
    トウヒ
    とヒメバラモミは本州中部にのみ分布し,個体数が少ないことから絶滅危惧植物としてリストされている。保全対策をおこなうためには,現在の詳細な分布状況を把握するとともに,分布適地を判定することが重要である。現地踏査によって2種の分布域を3次メッシュセル単位(緯度30"×経度45")で特定したところ,ヤツガタケ
    トウヒ
    52セル,ヒメバラモミ74セルに出現が確認された。2種の出現セルの中部地域における気候特性を分析した結果,年平均気温が低く(ヤツガタケ
    トウヒ
    出現セルの平均値5.8℃;ヒメバラモミ出現セルの平均値5.9℃以下同様),年降水量が少なく(ヤツガタケ
    トウヒ
    1,635mm;ヒメバラモミ1,676mm),最深積雪が少なかった(ヤツガタケ
    トウヒ
    33cm;ヒメバラモミ33cm)。各月の平均気温と降水量・最深積雪の上限値と下限値を用い,全国の3次メッシュセルに対し適合性を判別した結果,ヤツガタケ
    トウヒ
    で376セル,ヒメバラモミで351セルが気候適合セルとして抽出された。表層地質と2種の出現率の関係について分析した結果,最も高く出現した区分は石灰岩であり,ヤツガタケ
    トウヒ
    の出現率は47%,ヒメバラモミは80%であり,強い関係があることが示された。これらの結果から,南アルプス北西部の石灰岩地(ヤツガタケ
    トウヒ
    で33セル,ヒメバラモミで34セル)において,今後も2種の存続する可能性がもっとも高いと考えられた。
  • *木佐貫 博光, 脇野 雅子, 武田 明正
    日本林学会大会発表データベース
    2004年 115 巻 P5040
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     大台ケ原では,1959年の伊勢湾台風を契機に林床のミヤコザサが増加し,ニホンジカの増加を引き起こした。ニホンジカによる採食は
    トウヒ
    の稚樹や成木を枯死させており,
    トウヒ
    の更新が阻害されている。このため,シカによる採食を除去することを目的として,環境省による防鹿柵の設置が行われてきた。また,
    トウヒ
    の稚樹が生育する林床微地形は,主に倒木や根株などであることが知られる。今回,衰退した
    トウヒ林に設置された防鹿柵がトウヒ
    の更新にもたらす効果と,林床微地形が稚樹の定着および成長に与える影響について解明することを目的に,防鹿柵の内外において
    トウヒ
    稚樹を林床微地形別に調査した。 調査地は,奈良県上北山村大台ケ原の正木峠である。正木峠周辺では,以前は林床をコケが覆う
    トウヒ
    林が広がっていたが,現在では
    トウヒ
    の枯死に伴ってミヤコザサのササ原と化している。鉄製の防鹿柵の内側と外側にそれぞれ2本ずつ設置してあるベルト調査区(10m×100m)に出現する全ての
    トウヒ
    稚樹を対象とし,2002年8月,樹高,樹高伸長率,生育する林床微地形を調べた。林床微地形は,腐朽木(倒木および原形が残っていない樹皮や枝を含む),根株,根張,地面,岩礫,ピット,マウンドの7種類に区分した。
    トウヒ
    稚樹の出現本数,樹高,樹高伸長率について,防鹿柵の内外と各微地形間で比較した。 調査区に出現した
    トウヒ
    稚樹の本数は,柵内に300本,柵外には38本だった。稚樹の出現本数を微地形別にみると,腐朽木に68本,根株に32本,根張に64本,地面に88本,岩礫に64本,ピットに32本,マウンドに4本であった。稚樹の樹高を柵の内外で比較すると,柵内の稚樹高が柵外のものよりも大きかった(P<0.01)。微地形ごとに樹高を比較した結果,柵内では,根張での稚樹高の方が地面,岩礫,ピットのいずれにおける稚樹高よりも低く,ピットでの稚樹高は腐朽木,根株のものよりも高かった(P<0.01)。一方,柵外では,稚樹高に微地形間の有意な差は認められなかった。樹高伸長率については,柵の内外で有意差は認められなかった。微地形間で樹高伸長率を比較した結果,柵内では,根張よりも腐朽木およびピットでの稚樹の樹高伸長率が大きかった(P<0.05)。柵外では,樹高伸長率に微地形間の有意差は認められなかった。 防鹿柵外のベルトに生育する複数の
    トウヒ
    稚樹において採食跡がみられた。採食跡は,地上高約20cmのササの桿高よりも高い部分に数多く見られた。また,柵外の
    トウヒ
    稚樹は,柵内の稚樹よりも出現本数が少なく樹高が低かった。これらのことは,柵外においてシカの採食による
    トウヒ
    の更新への影響が大きいことを示唆する。したがって,防鹿柵の設置は,既に定着している
    トウヒ
    稚樹の成長を促進するものと考えられる。
    トウヒ
    稚樹が生育する微地形についてみると,地面において最も本数が多かったが,それらの稚樹のほとんどは倒木や根株など別の微地形の近くに位置していた。微地形によって作られる起伏面の付近ではササや草本類の被度が比較的少なかったため,これらによる被圧の影響が少ないものと考えられる。また,柵外では微地形による起伏面が存在することで,稚樹がシカに発見されにくい,あるいはシカが稚樹を物理的に採食しにくくなる可能性がある。したがって,稚樹の定着に微地形が与える影響は小さくないものと考えられる。
    トウヒ
    稚樹の樹高成長は,根株や根張に生育する稚樹よりも,ピットに生育する稚樹の方が大きかった。これは,ピットでは土壌が膨軟で養分が比較的多く含まれるからだと推測される。一方,根株や根張は,安定した森林内環境においては更新に有効な微地形であるが,直射日光が照射されるササ原においては,養分が少ないうえに乾燥ストレスを受けやすいために樹高成長が劣った可能性がある。柵外において稚樹の樹高成長に微地形間の有意な差が認められなかった要因は,ササ桿高を超えると採食の影響を受けることが考えられる。このように,林床に形成されたさまざまな微地形は,
    トウヒ
    の更新にとって重要な役割をもつものと推察される。
  • *木佐貫 博光, 田中 孝美, 中井(小山) 亜理沙
    日本森林学会大会発表データベース
    2013年 124 巻 P2-115
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    奈良県大台ケ原で林冠木が大面積に枯死してできたササ原では,防鹿柵による生残樹木の保護対策が施されたが,柵内ではミヤコザサが著しく繁茂したことに伴い天然生稚樹による森林再生に悪影響が懸念される.このため,
    トウヒ
    稚樹周囲を対象にしたササ刈りを2007年以降の3年間に計3回行った.一方,
    トウヒ
    稚樹の梢端に小ガ類の穿孔が確認され,稚樹の樹形の悪化や成長の停滞が危惧される.今回,小ガ類の寄主選好性とこれに対するササ刈りの影響を明らかにするために,ササ刈区(0.6ha)と無処理区(0.2ha)において,
    トウヒ
    稚樹の樹高,年間伸長量,穿孔性ガ類による被害の有無,周囲のササ稈高を測定した.その結果,小ガ類は,梢端部が明るい,大きな
    トウヒ
    稚樹を選択して産卵する傾向が認められた.一方,
    トウヒ
    稚樹の主軸における内部組織の被食の有無は,翌年の伸長成長に影響していなかった.これらのことから,稚樹周囲のササ刈りは小ガ類の寄主選好性に影響せず,下層植生の除去は直接的には
    トウヒ
    稚樹の成長を阻害しないものと推察される.
  • 佐藤 清左衛門
    日本林学会誌
    1973年 55 巻 9 号 270-276
    発行日: 1973/09/25
    公開日: 2008/12/18
    ジャーナル フリー
    ヨーロッパ
    トウヒ
    植栽本数試験地内(図-1, 2) で1971年行った環境因子の観測結果は下記の通りである。
    1) 地上20cmの気温
    1971年は1967, 1968年1, 2)に比べて林外と林内との温度差および密度間の温度差が少なかった(図-3)。 この原因として,前2年に比べて金般的に低温であったことと観測位置の違ったこと(前2年は地上10cm) が主に前者に影響し, 3,000本区の閉鎖の進行が後者に影響したと思われる。同時に行った自記温湿度計による記録は最高温度が低く,最低温度が高かった(図-4)。 これは観測機械の設置方法の違いによるものと思われるが,敏感に反応する様にセットできる地中温度計受感部の記録の方が実際の温度変化に近いものと推察される。
    2) 地上1.5mの気湿
    前報1, 2)と同様密度間の差および林外と林内の差もわずかであった(図-5)。
    3)地上3mの気温(樹冠層内の気温)
    6,000本区の渥度が常に高く, 3,000本区と林外とでは差が少なかった(図-6)。 そしてその差は5月中旬から8月下旬まで著しかった。
    20cmの気温と比べて林外では低く,林内ではかなり高かった。結局林内では地褒面近くよりは樹冠層付近が暖かく,その程度は密度や気温の高低によって違っていた。
    4) 地上20cm, 1.5mの空中湿度
    地上20cmの空中湿度(図-7) は林外と林内で著しく違いがあり,林外は一般に低く,一日中の変化も激しかった。密度間では比較的差が少なく, 6,000本区が3,000本区よりやや低い傾向があった。地上1.5mの空中湿度(図-8) は20cmの場合よりも林外での変化が少なくなり,林内での変化が少し大きかった。
    5) 3,000本区内の垂直的風速
    樹高付近の風速に比べて樹冠層内では著しく風が弱められ,樹高の約2/3の位置では約1/4に減少し,樹高の約1/2の位置ではほとんど無風状態であった(図-9)。
    6)地上1.5mの日射量
    閉鎖初期の3,000本区の林分でも日射量の記録されたのは5月中旬と6月までで,その量もわずかであった (0.2cal/cm2/min.;林外と比べて約1/7)。7月以降はほとんどゼロに等しかった(図-10)。
  • *森 章
    日本生態学会大会講演要旨集
    2005年 ESJ52 巻 P2-048
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    オオシラビソ,シラビソ(以上モミ属;Abies),および
    トウヒ
    トウヒ
    属;Picea)が優占する中部山岳地帯御岳山の亜高山帯林において,3種の更新および共存機構を研究した。これまで本州中部の亜高山帯林におけるAbies-Piceaの共存は,Abiesは高い林内移入率を持つ代わりに短い寿命しか持たず,逆にPiceaは長い寿命が低い林内移入率を補うという,生活史特性における違いにより共存が維持されるという仮説(Different life-history strategy hypothesis)が強く支持されてきた。しかし,他のAbies-Picea林における2つの仮説(更新ニッチの違いによる共存の成立;Niche partitioning hypothesis, 大規模撹乱が
    トウヒ
    の競争排除を防ぐことによる共存;Non-equilibrium coexistence hypothesis)については考慮されてこなかった。本研究では,これら3つの仮説に基づき3種の共存機構を検証したところ,林内で強い耐陰性を示すモミ属2種は主にニッチの違いにより個体群の存続および共存が成り立っていること,
    トウヒ
    の存続には大規模撹乱が必要であり,撹乱なしに生活史特性の違いだけでは共存できないことが示唆された。さらに,大規模撹乱は
    トウヒ
    にとって成長・更新に有利な環境を創出するので,この点において
    トウヒ
    にとっての更新ニッチを生み出しているとも言える。したがって,3つの仮説は相互に排他的なものではなく,本研究の亜高山帯林における3種の共存はニッチの違い,生活史特性の違い,そして大規模撹乱による個体群の維持のすべてが重要であると考えられた。
  • *吉田 沙織, 大江 未奈美, 前田 亜樹, 中井 亜理沙, 津田 吉晃, 石田 清, 木佐貫 博光
    日本森林学会大会発表データベース
    2014年 125 巻 P2-096
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    花粉飛散による遺伝子流動は,植物集団の遺伝構造に大きく影響する.また,風媒性樹木では,立木密度が受粉効率に影響を及ぼす.奈良県大台ケ原では,かつて東部の高標高域を広く覆っていた
    トウヒ
    林において立木密度が顕著に低下し,森林の衰退が深刻である.本研究では,大台ケ原で立木密度が異なる2つの
    トウヒ
    林分において,
    トウヒ成木の遺伝構造ならびに局所的立木密度がトウヒ
    の自殖率などに及ぼす影響を調査した.各林分の
    トウヒ
    成木について7遺伝子座でマイクロサテライト解析を行い,遺伝構造を調べた.また,23個体の母樹について,
    トウヒ
    成木だけの局所的な立木密度と,林冠層に到達している全樹木の局所的な立木密度を測定した.さらに,各母樹30個の種子について,自殖率,2親性近親交配率を算出し,種子の父親推定によって花粉飛散距離を算出した.いずれの林分においても立木密度と自殖率との間には相関がみられず,2親性近親交配も確認できなかった.一方,花粉飛散距離は疎な林分の方が密な林分よりも長かった.立木密度は花粉飛散に影響を及ぼすものの,繁殖成功のパラメーターには顕著な影響は認められなかった.
  • *野口 享太郎, 松浦 陽次郎, スパロウ スティーブン, ヒンズマン ラリー
    日本森林学会大会発表データベース
    2013年 124 巻 H26
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    アラスカ内陸部の北向き斜面や水はけの悪い低地には永久凍土が分布しており、その上にはクロ
    トウヒ
    (Picea mariana)林が成立している。他の森林と同様に、クロ
    トウヒ
    林においても細根は炭素・養分動態の重要な要素と考えられているが、永久凍土環境の変化 が細根に与える影響については不明な点が多い。そこで本研究では、永久凍土面の深さの違いが細根現存量に与える影響について明らかにすることを目的とした。調査地は、斜面位置の異なるクロ
    トウヒ
    林2林分とした。斜面上部プロットでは、永久凍土面の深さ(113 cm)が斜面下部プロット(67 cm)よりも深く、地上部現存量(5.6 kg m-2)が斜面下部(1.9 kg m-2)よりも大きかった。斜面上部では、クロ
    トウヒ
    の細根現存量(1.10 kg m-2)は斜面下部(0.71 kg m-2)よりも大きかったが、細根/地上部現存量比(0.20)は斜面下部(0.37)よりも小さかった。これらの結果は、養分条件等の変化をともなう永久凍土条件の変化に対応して、クロ
    トウヒ
    が細根系へのバイオマス分配を変化させていることを示唆している。
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