栃木県における
ハク
セキレイの繁殖記録の収集と繁殖環境についての調査を行った.前者は,筆者らのもっている資料に,文献調査および聞きこみ調査の結果を加えて行った.後者は,異なる環境4か所でのセンサス結果などに基づいて調査した.得られた主な結果は,以下のとおりである.
(1) 栃木県における
ハク
セキレイの繁殖記録は,鹿沼市の1965年の1例を除けば,すべて1976年以降に得られている.宇都宮市では,1979年以降繁殖の観察記録がふえている.
(2)
ハク
セキレイの繁殖環境は,砂礫地のない河川,水路のある工業団地,市街地などであった.これらの環境には,近縁のセグロセキレイは低密度でしか生息していなかった.
(3) セグロセキレイの多い砂礫地の発達した河川には,
ハク
セキレイは繁殖していなかった.この環境には,秋冬期には2種とも生息しているので,繁殖期には
ハク
セキレイは,そこでセグロセキレイによる干渉をより強く受けていることが予想される.
(4)
ハク
セキレイの繁殖時期は,セグロセキレイのそれより1-2か月も遅かった.この繁殖時期の遅れは,
ハク
セキレイがセグロセキレイのいる地域に入りこんで繁殖するのに,役立っていると思われる.
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