近年,経静脈性高カロリー輸液(IVH)の発展に伴ない,その適応は拡大され術後早期から積極的に用いられる気運になってきたが, Surgical Diabetes期を十分に考慮し,各種代謝性合併症の発生を避けなくてはならない.そこで,著者は術後早期における適切なIVH導入法の確立を目的として,術前経静脈性ブドウ糖負荷試験(IVGTT)による耐糖能(K値)から各種病態を把握し,これをもとに各種IVH導入法を設定し,血糖,血清インスリン濃度(IRI),血漿グルカゴン濃度(IRG)の面から検討を加えた.
耐糖能正常群(K≧2.5)では,比較的若年者や良性疾患例が多く,糖負荷に対するIRI, IRGの変動からみた反応も良好であり, surgical diabetes期も術後24時間と短かく, IVH導入においても急速導入によく耐容した.
耐糖能境界域群(2.5>K≧2.0)では,悪性腫瘍が多く,年齢もやや高齢で,糖負荷に対するIRGの抑制反応は正常群と同様であったが, IRIの変動は初期分泌能が悪く, surgical diabetes期も術後1~2日とやや延長しており, IVH導入としては中間導入が適していると思われた.
耐糖能低下群(K<2.0)では,膵疾患,門脈圧亢進症およびその他の疾患より成っていた.糖負荷に対して,膵疾患ではIRIの著しい低反応とIRGの抑制の低下があり,門亢症では負荷前より高グルカゴン血症が持続した.その他の疾患では糖負荷に対するIRIの上昇反応とIRGの抑制反応が共に弱かった.これらの群では, surgical diabetes期は術後3日前後と延長しており, IVH導入にあたっては,十分馴化をおく緩徐導入が望まれ,インスリン併用の必要性が示された.
抄録全体を表示