1-ブロモ-1-フルオロ-2-フェニルシクロプロパンの立体異性体,〔1a〕および〔1b〕の接触水素化分解を,PdO触媒,メタノール溶媒を用い,常温常圧下で検討した。〔1a〕および〔1b〕は同じ生成物を与えた。水素化の初期段階で,プロピルベンゼン〔2〕,2-フルオロ-3-
フェニルプロペン
〔3〕,2-フルオロ-1-フェニルプロパン〔4〕および(Z)-2-フルオロ-1-
フェニルプロペン
〔5〕を生成した。〔2〕および〔4〕は水素化の進行とともに増加したが,〔3〕および〔5〕は徐々に減少し,消滅した。〔3〕は一部分〔5〕への異性化をともなって〔2〕および〔4〕に水素化され,〔5〕は〔2〕および〔4〕に水素化された。〔3〕,〔4〕および〔5〕におけるフッ素の置換位置から,シクロプロパン環の水素化開裂がC
2-C
3結合で起こっていることは明らかであるが,〔1a〕および〔1b〕の水素化分解では2-ブロモ-2-フルオロ-1-フェニルプロパン〔6〕は検出されなかった。これらの結果から,〔3〕が〔2〕,〔4〕および〔5〕の主たる前駆体であって,〔3〕は吸着種〔C〕において,C
3炭素-金属結合からの電子移動により臭素が臭化物イオンまたは臭素原子としてβ-トランス脱離することにより生成すると推察した。
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