ニワトリ♂×ウズラ♀の交雑実験を, (1)ウズラ♀に対する人工授精の間隔, (2)ニワトリ雄の品種, を違えて行ない, 受精率•孵化率を検討した。さらに得られた交雑種についてその羽色•羽性および成長を調査した。
実験(1)において白色レグホン精液を用いて各区10羽のウズラ雌に0.02m
lずつ人工授精を行なったところ, 週1回の人工授精で13.9%, 週2回の人工授精で47.9%の平均受精率を得た。
実験(2)において4品種の雄ニワトリ (比内鶏, ロードアイランドレッド, 横斑プリ
マスロック
, 白色レグホン) の精液を各区10羽のウズラ雌に週2回人工授精したところ, 比内鶏区で23.2%, ロードアイランドレッド区で22.6%, 横斑プリ
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区で23.1%, および白色レグホン区で25.2%の受精率が得られた。なお, 受精卵に対する孵化率は, 平均6.4%となり合計36羽の交雑ヒナが得られた。孵卵初期段階で発育中止となる受精卵が全体の約2/3存在し, またウズラ雌個体別の受精率間には大きな差が認められた。孵卵19日目に虚弱のため自力では孵化できない交雑ヒナには卵殼を注意深く取り除くことにより孵化率を向上させることができた。
交雑個体の孵化時体重は, ウズラヒナと差がなく平均7.1gであった。雑種の成長は, 約10週齢まで急速に増加し120~150日齢でほぼ成体重に達した。最大時体重は, 横斑プリ
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とのF
1が480gともっとも重く, 次にロードアイランドレッドとのF
1 420g, 比内鶏とのF
1 405g, そして白色レグホンのF
1 350gの順となり, ニワトリ雄品種の体重の大小によりF
1の成長に差が認められた。
比内鶏×ウズラ, ロードアイランドレッド×ウズラで得られた雑種の初生羽は, ニワトリ品種のE座位の遺伝子が異なると考えられるのに, ともに黄色に黒い縦縞をもち, また羽装は, 濃淡に差があったがともに褐色羽と白色羽の混在であった。横斑プリ
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×ウズラで得られた雑種の初生羽は, 黒色で頭部に黄斑が認められ, また遅羽性であり, 成体の羽装はニワトリと同じ独特の横斑パターンを示した。このことにより, 横斑プリ
マスロック
の伴性横斑B遺伝子と遅羽性K遺伝子がF
1において優性に出現することが明らかとなった。白色レグホン×ウズラで得られた雑種の初生羽は, ニワトリヒナと同じ黄色で成体の羽装は白色となり, 白色レグホンの優性白色I遺伝子がF
1においても優性に出現することが認められた。以上の雑種における羽色•羽性の遺伝様式により, 羽色•羽性に関連するいくつかの遺伝子座はニワトリ•ウズラの対応する染色体上に相同の状態で存在することが推測された。
雑種の核型を分析するため, 白血球培養を行なった。その際通常ホ乳類で行なわれている白血球培養温度37°Cを39~40°Cに変えることによって多数の鮮明な体細胞分裂像を見い出すことができた。この事実は白血球培養の成否に生体温度が関連していることを示している。孵化した交雑種15個体の白血球培養の結果, 核型はすべて雄であることが判明した。
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