ca.24.5ka以降に,南九州都城盆地の成層シラス台地上に発達した累積性黒ボク土断面の連続試料について,炭素・窒素安定同位体自然存在比(δ
13C値,δ
15N値)を測定し,その時系列変化を既報の植物珪酸体分析の結果などをもとに考察した.その結果,土壌のδ
13C値から算出したC
3およびC
4植物起源炭素の比率と,植物珪酸体分析の結果から算出したC
3およびC
4植物の比率は,一部の試料を除いてC
3植物>C
4植物の傾向を示し,おおむね類似した.C
3植物起源炭素の比率が優勢なアカホヤ(ca.6.5ka)上位のクロニガ(埋没腐植層:4A)および御池テフラ(ca.4.2ka)上位のクロニガ(埋没腐植層:2A)を含む第5~4層および第3~2層は,それぞれ
メダケ
属(
メダケ
節・ネザサ節)と相関が高い(R
2=0.917,0.806).そして,クロニガ(埋没腐植層)における土壌有機物の給源植物種は,C
3植物の
メダケ
属が主体であると推定された.δ
15N値は,一部を除いて既往研究により,乾燥した環境と推定される層準で高く(最高値10.0‰),湿潤な環境で低く(最低値2.9‰)なる傾向を示した.それは,激しい気候の変動(乾湿変動)や土壌条件によって変化する可能性を示唆する.
抄録全体を表示