本稿で, 私は
レディメイド
という衣服のあり方と身体の関係を切り口に, 近代の身体観の変容について論じる.具体的な分析対象としては, 雑誌『アンアン』の記事を用いる.
オーダーメイドと
レディメイド
の大きな違いは, 衣服を着る側から関わることのできない「サイズ規格」に基づいた生産システムにある.このシステムの変化は, 生産の効率化や生産アイテムの多様性を実現した.一方, 体型に関しては, 個別の体型を包摂するとされる「サイズ規格」により作られるがゆえに, 実際の身体と衣服とが適合しない可能性を持つことになってしまった.
ここにおいて,
レディメイド
は, 個別具体的な身体から切り離された「もう1つの身体」を体現するものとなる.この「もう1つの身体」は, 個別具体的な身体を, 1つのラインに順序立て秩序づけるような, メタ次元に存在する「身体」であるといえる.
これにより, 人々は, 常にこの「もう1つの身体」に基づいて, 自分の身体を意識せざるをえない.オーダーメイドにおいて, 個別的な対象であった身体は,
レディメイド
において, 1つのラインに順序立てられ, 秩序づけられていく.自らの身体のみならず, あらゆる身体を包摂すると考えられるメタ次元の「もう1つの身体」の成立.これこそが,
レディメイド
によってもたらされた身体認識の変化であった.
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