心臓リハビリテーション (CR) は, 身体の安全と日常生活への復帰を目標としたPhase I (急性期), 社会復帰を目標としたPhase II (回復期), 社会復帰以後生涯を通じて行われるPhase III (維持期) に分けられる. 最近のPhase II CRでは, 医学的な評価や適切な運動処方と運動療法・薬物療法・食事療法・患者教育・カウンセリングなどをセットにした包括的なプログラムに基づいて行われている. このような取り組みは〈包括的CR〉と呼ばれる. 冠動脈再灌流療法の進歩や急性冠症候群の管理の進歩により, Phase I CRの入院期間が短縮し, 包括的ケアを行うPhase II CRの必要性がますます高まっている. 多要素プログラムを擁する包括的Phase II CRにより, 運動耐容能の増加, 冠動脈硬化・冠循環の改善, 冠危険因子の是正, 生命予後の改善, QOLの改善などめざましい効果が示されている. CRの有効性が認められている循環器疾患には, 心筋梗塞の他にも, 狭心症・冠動脈バイパス術後・心臓弁膜症術後・大動脈瘤手術後, などがある. また, かつてCRの対象外とされてきた高齢者, 心不全, 心臓移植後などに対しても, CRの有効性が明らになっている. 一方Phase III CRの運動療法は, 保健適応外のためもっぱら医療機関以外で行われる. 昨年ジャパンハートクラブが発足し, 心臓リハビリ指導士によるPhase III CRの運動指導が身近なところで気軽に行われるようにする試みも始まった. 医師・患者へのCRの重要性のさらなる啓蒙, CRの専門施設やスタッフの充実, 時間・経済的・内容的に個々の患者に魅力的かつ適切なプログラムの作成など解決すべき課題も多いが, CRは今後ますます重要な分野となると考えられる.
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