【目的】からだの中でもっとも大きな器官は、 脳や肝臓ではなく、 皮膚である。 ヒトの表皮は水を通さず、 物理的・化学的刺激に対する重要な防御器官として作用し、 種々の抗原の体内侵入をも防いでいる。 真皮は密生結合組織からなり、 循環系に加えて、 感覚性の神経終末が存在する。 皮膚の微細構造は部位により多少異なり、 部位別に解説する。
【材料と方法】ヒト皮膚を種々の形態学的技法を使って、 光学顕微鏡、 走査電子顕微鏡、 透過電子顕微鏡で観察し、 皮膚特に表皮と真皮の
不思議な世界
を探索した。
【結果と考察】表皮:角質層は、 物理的刺激をうける手掌や足底ではかなり厚いが、 他の部位では薄い。 胚芽層は加齢とともに薄くなる。 超旋刺は、 胚芽層に分布する抗原提示細胞 (ランゲルハンス細胞) を刺激し、 免疫力を高めているかもしれない。 触覚・圧覚にあずかるメルケル細胞が、 指腹、 足底、 体肢の毛盤の表皮最下層に分布する。 真皮:組織学的に疎性結合組織からなる乳頭層と交織密結合組織からなる網状層に分かれる。 乳頭層の最表層は、 径 40 nm のコラゲン細線維 (Ⅲ型コラゲン) が密な網目をなしている。 網状層では、 径 120 nm のコラゲン細線維 (Ⅰ型コラゲン) 束が交織配列している。 乳頭層に線維細胞にくわえて、 抗原刺激にあうとヒスタミンを分泌する肥満細胞があり、 血管の透過性を亢進させている。 鍼灸とヒスタミン分泌との関連が注目される。 乳頭層の表層に指状の突起、 真皮乳頭は、 指腹、 足底、 褥瘡好発部位(仙骨)で顕著である。 乳頭内にループ状の毛細血管やマイスネル触覚小体がある。 表皮が薄い部位 (手掌や足底を除く)では、 真皮乳頭はなく、 毛細血管が点在している。 乳頭層に毛細リンパ管があり、 間質液の吸収や細菌等の取り込みに関与している。 痛覚・温覚に携わる自由神経終末は、 網状をなして乳頭層の最表層に分布し、 顔面、 手背、 前腕、 下腿、 仙骨部に密であり、 手掌、 足底、 殿部では疎である。 ファーター・パチニの層板小体は、 真皮深層から皮下組織にかけて分布し、 圧覚や振動覚の受容器である。 それは指腹と足底に多い。 針を刺すときの痛みは、 自由神経終末の密度と関連がある。 今後、 鍼灸とランゲルハンス細胞、 メルケル細胞、 線維細胞、 肥満細胞および種々の神経終末との関連が注目される。
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