群集のもつ複雑な情報を要約できる環境類型区分や生物指標は生態系管理において重要なツールとなる。河川環境の目標設定などにも有用なツールであるが、先行研究の多くで、環境類型区分の適正評価、生物指標の選択基準が客観的かつ定量的でないため、研究事例の比較検証ができず、我が国では実務に応用するに至っていない。モデルに基づくクラスター分析(Model-Based Clustering)と指標指数(IndVal)を組み合わせることで、複数の区分方法からクラスターと生物分布の一致率(=指標性)を基準に環境類型区分の適正を評価でき、閾値を設定することで客観的に生物指標(本研究では指標群落)を選定できる。本研究では、この手法を用いて流域単位で植生の環境類型区分をつくる場合に、どの様なデータ取得方法が適しているか、また、生物データだけでつくる方法、環境要因データだけでつくる方法、生物データと環境要因データでつくる方法のどのタイプが適しているかを比較検証した。兵庫県の市川水系において、調査範囲と調査区の設定方法の異なる3つのデータセットを準備し、それぞれについて3タイプの環境類型区分をつくり、指標性の高さと選定された指標群落の種類で適正を評価した。その結果、流域単位で指標性の高い環境類型区分を得るためには、3タイプ別では安定して高い指標性を示す生物データと環境要因データでつくる方法が、3つのデータセット別では流域全体に配分した調査地点の一定区間で植生図を作成する方法が適していることが示唆された。また、選定された指標群落は各クラスターの状況をよく反映していた。本研究の結果から、指標性の高い環境類型区分を得るためには、下流域で連続して作成されることが多い植生図の作成労力で流域全体に配分した調査点で植生図をつくり、セグメントを用いた環境類型区分を生物データと環境要因データでつくる方法に代えたほうが良いことが示唆された。
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