森林立地区ごとの土壌の特徴を調べるために,スギ林66点の理化学性の分析データに主成分分析法を適用し,統計学的手法によって整理してみた。
主成分分析法は,多数の特性値(分析された理化学的諸性質)を,座標軸の変換によって少数の総合特性値(主成分)に要約し,さらに各個体(立地区土壌)な,次式による主成分の値によっていくつかのタイプに分類するものである。
Zk=
lk1x1+
lk2x2+……+
lknxn+……+
lkpxp ただし
Zk:第
K主成分
lkn:
n 番目の固有ベクトル
xn:
n番目の特性値(ただし基準化した値)
主成分分析の結果はつぎのようである。
(1) 理学的性質については,分析された16項目の特性値を,全情報の77.9%を説明する3つの主成分に,また化学的性質については,10項目の特性値を,全清報の77.5%を説明する3つの主成分に要約することができた。
(2) 要約された主成分によって土壌の理化学性のパターンを求めた結果,そのパターンと森林立地区との間に関連性が認められ,筆者らの行なった森林立地区分法が,土壌学的にも根拠のある方法であったことが確かめられた。
(3) 主成分分析によって要約された各立地区土壌の理化学性の特徴はつぎのようである。
八溝立地区(古生層)
理学的には一般に粗孔隙量,最小容気量が大きく,透水性の良い土壌であるが,化学的にはつぎの3つのタイプに分類される。タイプ1は,有機物には富むが,置換性塩基や有効態Pに乏しい強酸性の土壌(細孔隙に富む),タイプ2はやはりCa飽和度の低い酸性土壌ではあるが,タイプ1にくらべて有機物含有量のやや少ない土壌,タイプ3は置換性Caに富み,酸度弱く,有効態Pにも恵まれている型の土壌である。
里川立地区(花崗岩,変成岩類)
里川立地区の士壌も3大別される。それぞれのタイプは八溝立地区のそれと対応するが,八溝立地区にくらべて容積重,細孔隙量が大きく,また,置換性K, Mg含有量が多い傾向を示す。
珂北立地区(第3紀層)
理学的には一般に埴質で,容積重,細孔隙量が大きく,保水力に富んでいる。化学的には置換性塩基に富み, Ca飽和度高く酸度は低いが,有機物に乏しく,有効態Pにも欠乏した土壌となっている。
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