一般の魚類よりも高濃度の水銀が含まれているマグロは同時にセレンをも含有し, このセレソの存在が水銀毒性を減じているといわれている.そこで今回MMCを添加したマグロ飼料でラットを飼育し水銀毒性に対する効果を検討した.体重の減少とともに発症がみられた群はMMC20群, MMC30群とマグロ+MMC30群の3群であり, 平均発症日数はそれぞれ104.4日, 66.1日と165.0日でマグロ飼料群のほうが長く, マグロ添加により明らかに発症率の低下が示された.しかし, 今回のマグロ飼料は総水銀濃度1.94PPm, セレソ濃度は0.72PPmで, そのモル比は1 : 0.94で, MMCを添加した群 (10, 20, 30PPm) の水銀とセレンのモル比はそれぞれ1 : 0.16, 1 : 0.09および1 : 0.06となり, 発症例をみるとMMCの毒性を抑制する効果はたんにセレソの対水銀のモル比だけでは説明できないと考えられる.しかも, 死亡率ではマグロ群40%, マグロ+MMC10群60%, マグロ十MMC20群30%, vグロ十MMC30群50%, とMMCのみの投与群 (10, 20, 30%) よりマグロ添加群のほうが高いという結果が得られた.臓器内蓄積は, MMCのみの投与群のほうがマグロ添加群に比し総水銀, メチル水銀とも高値を示した.また, 主要臓器中の総水銀の平均蓄積量は, すべてのマグロ添加群またはMMC群において対照群より多く, doseresponseがみられた
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